「人生100年時代と健康寿命のギャップについて思うこと」

「人生100年時代」という言葉は、2017年、厚生労働省の「人生100年時代構想会議中間報告」で検討された内容を踏まえたコンセプトのようです。

 

「人生100年」を健康のまま、寿命を全うできれば幸せですが、「健康寿命」(WHOが提唱したようですね)という概念もあります。「心身ともに自立し、健康的に生活できる期間」とのことです。(公益財団法人 生命保険文化センターより)要は、実質的に自立的な行動が可能な年齢を意味すると私は、理解しています。

 

2016年の男性の平均寿命が80.98歳に対して健康寿命は72.14歳(ギャップが8.84年),女性の平均寿命が87.14歳に対して健康寿命が74.79歳(ギャップが12.35年)というデータが存在します。言い換えれば、現時点で人生後半約10年は、介護等が必要になるケースが多いのが現実です。寿命が100歳まで延びても、健康寿命が変わらなければ、うれしく感じませんね。あくまでも、健康寿命を延ばしたいところです。誰もが、健康が大事で、私も健康に対するコスト(時間、費用等)も重視したいと、ようやく自覚しだしました。

また、65歳以上の高齢者の方の15%が認知症であると言われています。年齢とともに比率は上昇してゆきます。

段々、暗くなってきますね。

これらの事実を踏まえると、資産運用や相続・贈与の対策、要介護になった際の対応等に関して、ご家族との健康な状況でのコミュニケーションを重ねる重要性が浮き彫りになりますね。後見制度等を活用する場合でも、様々な制約が発生します。遅くとも、ご自身の年齢が50代から検討を行い、60代前半には目途をつけておきたいところです。また、ご両親が60代に入った皆さんも、逆の立場でご両親とコミュニケーションを取ることをお勧めします。

順不同で考えられる課題をピックアップしてみます。

これらで十分とは思いませんが、簡単なチェックリストとしてご覧ください。

総合的な判断は、各ご家族や皆さんの価値観に基づいて模索していかざるを得ないものであると思います。

 

【チェックリスト】

・要介護になった際、誰が介護するのか?

・要介護になった際、在宅、施設、また、どのようなサービスを希望するのか?

・要介護になった際の費用をどう確保するのか?(どのレベルの費用負担が可能か?)

・介護施設に入居することになった場合、自宅の管理をどうするのか?

・子供達と離れて住んでいる場合(地方と首都圏等)、介護の方針は?

・自宅がある場合、将来的な相続をどうするのか?

・要介護になる前に遺言の作成の必要性は?

・法定相続人同士の関係は良好か?(相続に関連して)

・法定相続人の意向の確認と事前のコミュニケーションが取れているか

・後見制度活用の検討をしているか(特に独り身の方)

・銀行借入が残っている場合の対応は決まっているか?

・亡くなった際に、遺産が相続税の課税対象になるかどうか?

・暦年贈与による資産継承の検討をしているか?

・推定相続税額と流動性資産(特に現預金)のバランスの確認

・要介護になった際の金融機関との取引

・取引先金融機関の概要の把握

・二世帯住宅の検討はできないのか?

・加入している保険が適切かどうか?(特に独り身の方)

・認知症や要介護になる前の不動産や有価証券の現金化を検討しているか?

・年金で介護費用を賄えるか?

 

益々、暗くなってきますね。

これらの課題に、当方、一応、回答を持ち合わせておりますが、個別事情が強いため、一般化してお伝えすることが難しいのが正直なところです。最後の「年金で介護費用を賄えるか?」という項目の場合、年金額がおのおの、異なりますし、どのレベルの介護を求めるかで選択肢は変わってきます。やや矛盾する設問がある中で、どちらを優先するか、といった判断を伴うケースも多く、紙面での回答はご容赦ください。個別のご相談は承ります。

 

要介護や認知症になると、不動産取引や株式等の有価証券取引が困難になります。現金化したくとも、できないケースも想定されます。そのため、一定年齢になったら、現金の資産比率を高めておく必要があると思います。私見ではありますが、資産運用でもキャピタルゲイン追求(値上がり益追求)とインカムゲイン追求(利子配当追求)の資産配分比率の変更も適切に検討したいところです。50代半ば程度までは、キャピタルゲイン追求の比率が高くても良いと思いますが、予想以上のクラッシュが起き、大きな値下がりが発生する可能性が常に排除できない以上、インカムゲイン追求の比率、現金の比率を徐々に上げていくのが妥当に感じます。投資ダメージを小さくするという視点での投資判断です。個々の皆さんのリスク許容度にもよりますが、個人的にも還暦の頃には、キャピタルゲイン追求の比率は少なくとも5割を超えないようにしたいかな?と思います。また、別の機会にお伝えしますが、不動産賃貸収入等の定期的なインカム収入がある方は、無理に分配型投信や高配当株式等の比率を上げる必要性は乏しく思います。金融資産だけでなく、全ての資産を考慮し必要なインカム収入のバランスを検討して頂きたいと思います。

 

また、相続が発生した際に、自宅の評価が思ったよりも高く、相続税の課税対象になってしまうケースや不動産オーナーや企業オーナーの場合、総資産に対する現預金の比率が低い場合、納税する現金の確保が困難になるケースもあるようです。相続人が複数いる場合、不動産や自社株のように分割が難しい資産が多いと、「争族」と言われるような分割協議でもめる結果につながりかねません。元気なうちにコミュニケーションを取り、それに基づいて遺言書を作成する等の対応が必要になるかもしれません。各種の資料やデータを見ると、資産が多い方よりも、むしろ、総資産が5,000万円以下のゾーンの方の分割協議が不調になる場合が多いようです。自宅の資産比率が高く、金融資産をあまり、お持ちでないケース等が該当するのかもしれません。

 

ビジネスや資産運用を通じて、資産を保全し、増やすことは、とても大事なことですが、積み上げた資産の使い方、取り崩し方、相続、贈与、寄付を含めた残し方等も、高齢化社会を迎えている現在、真剣に考える必要があるように思います。無論、健康への投資も忘れてはいけませんね。ご両親、及びご自身が、60代、70代、80代と節目の年代になった際、事前に相談しておいた方が望ましいことをお伝えしたいと思います。

 

次回は、資産運用に戻り「短期投資と中長期投資のアプローチについて思うこと」のコメントをしたいと思います。

 

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