今回は、金融商品と税金のお話をしたいと思います。
金融商品の投資の方が税務上、所得税よりも有利に働くケースがあります。また、ひと頃の仮想通貨への課税のように莫大な税金がかかるケースもあります。整理をしながら、進めていきたいと思います。今回は、非課税のNISA等に関しては、触れません。
以前のブログでご紹介したとおり、所得税は、累進課税のため、課税所得が増えると税額だけでなく、税率も上昇します。それに対して、多くの有価証券は基本的に分離課税のため、所得税と別に源泉徴収で納税は完結します。
例えば、不動産を多く保有している方が更に不動産投資を行うことで、追加の賃料を得ることができます。但し、賃料増加による不動産所得が大きくなり、所得税の課税所得も増大します。それに対し、仮に不動産投資信託(REIT)に投資した場合、配当は20.315%の源泉徴収率で申告不要も選択でき、株式の譲渡所得も源泉徴収ありの特定口座であれば、20.315%の税率となります。また、確定申告をすることで、株式の損益通算が可能となり、損失の繰り延べも翌年以降3年間にわたり、繰越控除が可能となります。期待リターンの水準は異なりますが、負担する税率の相違、税引き後のリターンから、一考の余地がありそうです。補足ですが、実物不動産に関しても、一定の条件下で譲渡所得内での損益通算が可能となり、譲渡所得でも損失が繰越できます。
【 20.315%をボーダーとした所得税の速算表が以下の通りです 】
課税される所得金額
(千円未満は切り捨て) |
税率 | 控除額 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
課税所得が900万円を超える方は、収入を増やすことも大事ですが、同時に税務上の収入の多様化を図ることで、納税額を抑えることができるかもしれませんね。
仮想通貨の納税が話題になったのは、雑所得の対象として総合課税になることにより、大きな利益を確定した方、大きな含み益を持った方が売却する際の税金の負担が大変になったからです。当時、仮想通貨が大きく上昇し、それに対応する税務方針が注目されましたが、結果として、雑所得の扱いとなりました。
具体的には、高騰した仮想通貨を売却することで大きな利益(所得)が発生し、高い税率が確定した後、別の仮想通貨に乗り換えたものの、その通貨が暴落し、現金化しても納税額の確保が難しくなったというお話です。逆に申せば、売却した際に、納税資金を確保しておけば、悲劇を避けることができたとも言えます。仮に1億円の利益が出た場合、500万円程度の控除はありますが、税率は45%(住民税は別)となり、4,000万円以上の納税が必要となります。尚、同じ年であれば、雑所得同士の損益通算は可能となります。
海外でも仮想通貨のETF(有価証券)が話題になったりしていますが、同じ投資対象でも有価証券になると税制は異なり、先程の20.315%の分離課税が適用になります。雑所得のケースで紹介した4,000万円以上の課税も、証券税制だと1億円の利益の約20%の税率ですから、半分程度で収まることになります。不動産も仮想通貨も金等のコモディティも同様ですが、実物資産で、売却益を得た際には、不動産所得や雑所得、一時所得等となり、総合課税になってしまいます。総所得が大きい方の場合、通常の所得に上乗せされ、より高い税率が適用になる場合も考えられます。投資信託やETF、REIT、会社型投信等の金融商品で、有価証券の形になると税金は、20.315%の分離課税が可能となります。だいぶ、違いますよね。
現物の不動産投資の魅力も尊重した上で、有価証券に投資した場合(REIT等)のメリットとして、流動性リスク(売りたい時に現金化できるか)や税制の違い、管理の手間、直接的な固定資産税等の負担等から解放される点が挙げられると思います。
本題から脱線しますが、世の中には、良くわからない商品が沢山、出回っていますが、税務上の取り扱い、手数料(見えない部分も含めて)の情報等の確認が欠かせないと思います。そもそも、世の中に「おいしい話」は、ありません。世界中のプロと呼ばれる機関投資家の皆さんが、目を皿のようにして、色々な投資機会を探しています。私のような一介の個人投資家に特別なお話などあるはずもないと思っています。
個人的に、若い人口の増えている国の不動産には、興味がありますが、2021年現在、国際税務、国際法務、現地での物件管理、現地金融機関との折衝等の面から、ハードルが高いと感じています。やや、コストは高いですが、投資信託にも海外のREITに投資するファンドが数多くあり、こちらの方が大分、敷居が低いと思います。税制も通常の投資信託と同様なので、海外ものといっても、国際税務や国際法務に煩わされることはありません。(その分、信託報酬やマネジメントフィー等のやや高めのコストに反映されていると思われますが)ちなみに、海外株式へ投資信託経由で投資した場合も国内の投信と同様の税制となります。但し、米国株の配当等は、現地で源泉された後、国内でも20.315%の源泉が行われます。
FXの場合は、「先物取引に関わる雑所得」として、申告分離課税(20.315%)となり、確定申告が必要なケースがあります。
このように、同じような資産に投資する場合でも、投資する手法が異なると税金が変わってきます。特に一定水準以上の所得のある方は、納税額が異なってくると思います。
結論としては、「総合課税」と「分離課税」の二つがあり、所得の多い方は、基本的には「分離課税」の方が有利、また、確定申告が「必要」、「不要」のケースがあり、確定申告をした方が繰越等でメリットがある場合もあることをご紹介させていただきます。
次回は、「リスク/リターン、コスト/リターンの考え方」についてコメントしたいと思います。
当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。
いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。
また、個別具体的な税務関連に関しましては、税理士の方にご相談ください。
内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。