「年末にかけて、考えておきたいこと(有価証券)」

段々、秋めいてきました。

皆さん、如何、お過ごしですか? 

来週半ば以降、また、強力な台風が襲来する予想があるようですね。お気を付けください。

 

今回は、「年末にむけて、有価証券関係で考えておきたいこと」がテーマです。

端的に申し上げれば、「NISA枠」、「積立NISA枠」の残りを有効活用しましょうということですが、それ以上に、年間の有価証券の譲渡損益、配当収入と来年に向けたポジション調整について考えてみたいと思います。

 

株式や投資信託の課税は、やや複雑で、一般的な特定口座の源泉徴収あり、配当の比例配分方式、確定申告の有無など、様々なパターンがあります。年間の損益は、1月から12月で通算され、利益が出ていれば課税され、損失が出ていれば課税されません。

 

ここで、考えておきたいのは、①9月の時点で年間の損益がプラスの方、②同じ時点で年間の損益がマイナスの方、③同じ時点で年間損益が微妙な方への対処方法です。

 

 様々な考え方や投資手法があり、どれがベストと言える訳ではありませんが、得てして、投資家心理ではプラスのものを確定し、損失は先送りするというケースがあります。先送りしているうちに、マイナスの評価損が大幅に拡大し、その銘柄に関しては再起不能になってしまった事例は少なくありません。上記の①のケース、年間損益がプラスの方の場合は、マイナスの銘柄を保有されている場合、売却することで、損益を小さくする(納税額を圧縮できる)、乃至はマイナスにする(納税せず、来年以降に損失を繰り延べできる)ことも選択肢として検討できます。その上で、該当銘柄に思い入れがある場合や魅力がある場合は、再度、購入することも検討の余地があります。委託手数料を負担してまで、再購入することに抵抗を感じるかもしれませんが、ネット証券等を利用されている場合は、税金の負担よりも軽微なことも少なくありません。

 

【事例】 ※有価証券の源泉徴収の税率は正確には、20.315%ですが、簡略化のため、約20%としています。

・9月時点で100万円の実現益がある

・10万円の含み損の銘柄がある

・100万円の実現益がある場合、約20万円の源泉徴収がされます。

・10万円の含み損の銘柄を売却した場合、年間実現益は、90万円(100万円-10万円)となり、税金は約18万円となります。このケースでは、2万円程度の税負担軽減になります。それと株式委託手数料を考慮した場合、実現損を出した方が、トータルでメリットがあると考えることができますね。銘柄によっては、再度、購入することで取得価格を下げることも検討の余地があります。

 

 

次に9月の時点で含み損がある場合ですが、含み益の銘柄が別にあった場合でも、無理をして売却益を出さなくても良いと思います。勿論、株式市場が不安定になって、利益確定をするべきという判断であれば、優先すべきと思いますが、確定申告をすることで、3年間の繰越も可能となります。

年間損益が微妙な方は、自然体で良いと思います。最終的に(年末時点で)、年間損益がとんとんで、含み益が大きく、含み損が無い状態がベストと個人的には思います。

 

理想を言えば、年末までに損失を確定し、年初には含み益の銘柄だけでスタートするという状態がベストです。仮に年初に新たな損失を計上することになっても、含み益があれば、相殺も可能ですし、余裕を持って対処できます。

 

 

 私自身の投資経験や様々な投資家の皆さんの手法を拝見してきた経験で申し上げれば、株式や投資信託への有価証券投資は、基本的には、勝率ではなく、勝ち方や負け方の優劣で、トータルの成果が決まってくると確信しています。投資案件、全てがうまくいくということは、決してなく、期待通りにならなかったものを、どのように処理してゆくかということが大事です。テンバガーではありませんが、順調に株価や基準価額が上昇し、仮に2倍以上になったとします。経済動向や業績、ライバル企業の出現などに変化がなければ、基本的には保有を継続したいところです。複数単元を保有している場合(100株単位であれば、200株以上)、一部、売却するということも検討できます。時価が2倍になれば、半分売却することで、投資元本を回収できる訳ですから、残りに関しては、余裕をもって保有できますね。利益をもたらしてくれる銘柄で長期的にも成長力や競争力が期待できるものは、値上がりしても我慢して保有を継続し、大きな利益につなげたいところです。逆に、思惑と異なり、業績やマクロ経済のシナリオが狂った場合は、早めに損失を確定させたいと思います。

「売却しなければ、損失は確定しない」という声や「長期投資だから含み損は気にしない」というお声もあります。一面では正しいように感じますが、機会損失(上昇する銘柄に投資できない等)は発生しますし、下落トレンドの銘柄を長期投資する場合、更なる下落につながる可能性もあります。可能であれば、損失確定は早めに決断して、利益のある銘柄はできるだけ、長期保有したいところです。もちろん、損失確定した銘柄がその後、大きく上昇することは普通にあります。残念ではありますが、リスク管理上、やむを得ないコストと私は考えています。

 

時間分散、長期投資の事例として、従業員持株会が挙げられます。所属企業が破綻して、持株会による自社株の価値がゼロになったという話は事実、少なからずあります。しかし、上場企業の従業員持ち株会で非常に大きな含み益を確保されているケースの方が圧倒的に多いように感じます。業績拡大や企業の成長力が大前提ですが、定期的に買付を行い、長期保有することで大きな資産を築くことができたケースだと思います。結果的に、就職の際の運不運も多分に影響すると思いますが、従業員持ち株会も検討したいところです。雇用関係にある企業に投資することで、雇用リスクと株価下落リスクを取るという視点もありますが、自社の業績や競争環境、リーダーシップの存在等、外部からは把握しにくい定性的なことも社内にいることで認識可能だと思います。

仮に逆の場合(業績悪化、株価低迷、将来的な見通しが暗くなった)、私ならば、途中で持株会を退会し、可能であれば、保有株を含み損でも売却すると思います。

 

今回の結論は、利益は大きく、損失は小さく、含み益は大きく、含み損はできるだけ早めに対処

あわせて、税制にも配慮して、年間の累積の損益の最小化を考えたいところです。

 

 

次回は、趣が少し、異なりますが「“仕事の話”  収入、やりがい、愛着、どれを捨てられますか?」をお伝えしたいと思います。

 

尚、個別具体的な税務に関しましては、税理士の方にご相談ください。

当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。

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