「REIT(不動産投資信託)について考えてみる」

  REITが国内で登場したのは、2001年です。「日本ビルファンド投資法人」、「ジャパンリアルエステイト投資法人」の2法人が上場を果たし、現在では、60を超える投資法人が上場しています。投資家から集めた資金を不動産に投資し、その収益を投資家に分配する上場投資信託です。国内REITの特徴は、一般的には以下の通りです。

 

・配当利回りが株式よりも相対的に高いこと(一定の条件下で法人税が免除)

・オフィスビルや住居だけでなく、商業施設、物流、ホテル等、多様な投資先があること

・株式よりも価格変動がマイルドなこと

・証券取引所で売買ができること(流動性が実物不動産よりも高い)

・情報開示がされている

・分散投資によるリスクの低減(ひとつのREITが多くの物件に投資しています)

・インフレリスクに強い(と一般的には言われていますが、金利上昇には強くありません)

・他の金融資産との相関が高くないこと(通常は、です。暴落時には連動します)

・為替リスクがないこと

決算月が多様であり、分散することで配当を複数の月で受け取ることができる

証券税制であること(総合課税ではなく、取得税や登録免許税も直接的には不要)

・機関投資家の保有比率が高いため、決算対策で価格が変動することがある

・地震、洪水等の天災の影響を受けるケースがある

・オフィスビルの空室状況等の情報が存在し、トレンドを把握することができる

増資による需給悪化にご注意

・グローバル不動産の視点で見ると、日本のREIT市場は?

 

 

 配当利回りに関してですが、2021年10月現在で2%から5%程度のものが多いです。ホテル系のREITは、コロナの影響で利回りが低下し、現在は2%を下回るものもあります。また、配当可能利益の90%超を分配することにより法人税が免除されます。そのため、法人税や内部留保等を差し引いてから配当を実施する株式に対して、相対的に高い利回りが期待できます。株式と同様、各決算期末に保有することで、配当の権利を確保できます。

 

JAPAN-REIT.COM – 全ての投資家のための不動産投信情報ポータル REIT一覧(リートデータ)

 

 REITにより様々な投資先があります。コロナ禍で大きなダメージを受けたのが、ホテル系REITや商業系REITでした。一方、ネット通販拡大により、物流系REITが好調となりました。オフィス需要や個人の賃貸需要だけでなく、多様な視点から投資対象として分析することができると思います。また、ひとつのREITが多くの物件に投資しているため、空室リスクや災害リスク等に関して、一定のリスクの分散が図れます。

 

 REITは、証券取引所に上場しているため、売買が比較的容易で、一定の流動性が確保されています。実物不動産売買の場合は、流動性に制約があるため、売買に時間がかかるケースも少なくありませんが、REITの場合は、売買、現金化が容易と言って良いと思います。(多額の売買は除く)また、株式と比較すると価格変動はややマイルドとなります。通常、株式と相関も高くないため、分散効果が望めます。リーマン・ショックのような大きな金融不安が生じた際には、連動してしまいますが、下落のタイミングは少し遅れた印象があります。また、上場しているため、十分な情報開示もされています。物件の内容や借入先、株主構成、P/LやB/Sの推移、配当金の推移等が確認でき、投資に必要な情報は網羅されています。基本的には、国内不動産を投資対象としているため、為替リスクはありません。

 

国内REITの決算期は、様々で、1月決算から12月決算まであります。ポートフォリオを上手に組めば、6本保有することで、毎月、配当を確保することもできます。流動性にやや難があるものもありますが、国内REITに投資する上場ETFもあり、こちらは、毎月決算や四半期決算のタイプが見られます。

 

証券税制の対象であることも大きな特徴です。以前のブログでもご紹介しましたが、不動産に投資をすると「不動産所得」となり、累進課税である総合課税の対象となります。一方、REITの場合は、「特定口座の源泉徴収あり」であれば、「20.315%」の源泉徴収のみで、税率を低く抑えることも可能です。実物不動産とREITの期待リターンが異なる点や損金の対象範囲等の確認も必要ですが、投資対象として検討の余地はあると思います。不動産取得税や登録免許税等は、実物不動産購入の際には課税されますが、REITの場合は直接的には負担がありません。(運営コストとして間接的に負担している訳ですが)

 

リスクは、一般不動産と共通のものとREIT固有のものに分かれます。共通のものとしては、地震等の天災の影響を受けること、不動産市況が低迷すると価格低迷につながること、空室率が高くなると配当に影響が考えられること等です。特有のリスクとしては、運営者であるスポンサー・リスクがあること、機関投資家の保有比率が高いため、投資動向による価格変動が起こりうること、金融マーケットが大混乱になると株式等との相関が効かなくなること等が考えられます。また、外部成長戦略である増資にも留意が必要です。REITの成長のために欠かせない増資ですが、需給が悪化するケースがあり、一時的とはいえ、売り圧力が高まります。

 

REITに類似する投資商品として、上場インフラファンドがあります。太陽光エネルギー施設等に投資する点が異なります。こちらは、景気変動の影響を受けにくい、新規投資に関して売電価格変動の影響がある、天候や火山の噴火等の影響を受けやすい等の特徴があり、REITの特徴とやや異なります。配当利回りは、REITよりもやや高くなっています。

 

 不動産に投資するファンドとしては、今回、ご紹介した上場REITの他、上場REITに投資する投資信託や私募不動産ファンド、出資組合等があります。ご自身での投資判断が可能であれば、上場REITに投資するのがコスト的に優れていると思います。次点として上場REITに投資する投資信託でしょうか?私募不動産ファンドや出資組合等に関しては、情報開示やスポンサー企業等の分析が、より重要になってくるので、一般の方にはお勧めしにくい商品だと思います。

 

国内REITは、配当収入の面で、投資対象として欠かせない存在です。その上で、セクターごとの特徴やリスクを十分、把握されることをお勧めします。決算前に価格が上昇傾向となり、決算後に配当落ち以上に下落するケースがあること、値動きに一定のパターンがあること、国内REIT市況は永続的に上昇が続く性質のものではなく、一定のボックス圏での推移となる可能性が高いこと等を踏まえて、投資を検討したいところです。個人的には、あくまでも、インカムとキャピタルのトータル・リターンで評価したいアセット・クラスだと考えています。しかし、根本的には、日本の人口は減少のトレンドにあることは、常に念頭に置く必要があると思います。

 

また、グローバル不動産の視点で俯瞰すると、ニューヨークやロンドン等の不動産市況を見ると東京は、割安感があると言われています。背景として、円の購買力弱体化や物価推移、人口動態等の理由が存在するからだと推測しますが、相対的に低い評価というのは事実であると思います。米ドルと円の為替のヘッジコストが1%程度の時(米国投資家からはヘッジ・プレミアム)、日本のREITの利回り(約3%)+ヘッジプレミアム(約1%)ということで、外国人投資家の資金も入ってきていたようです。今後、市場が整備されることで、より魅力が高まることを期待したいと思います。

 

次回は、「リスク管理(金融資産)について考えてみる」を取り上げたいと思います。

 

当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。

いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。

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