前回は、「プロが考える?パッシブファンド」についてお伝えしました。今回は、アクティブファンドについて概要をコメントします。
アクティブファンドは、パッシブファンドと比べて、信託報酬等のコストが高い一方、ベンチマーク等の指数を上回る運用を目指すという特徴があります。長期で見るとコストの低いパッシブファンドや指数にパフォーマンスで勝てるファンドが少ないと指摘されることも多いのですが、高い評価を受けるアクティブファンドがあるのも事実です。
金融実務の世界では、様々な情報が飛び交い、苛烈な競争が繰り広げられます。私自身、第一線から少し、距離を置いてからわかったことは、「一般の投資家の皆さんの立場からは、アクティブファンドの優劣の判断が難しい」ということです。目論見書や最近ではwebでのセミナー等の開催もありますが、運用会社の立場では、コンプライアンス上、断定的なコメントや表現は難しく、どうしても、抽象的なコメントや表記になりがちです。実際のところ、優れたファンドマネジャー(以下FM)は、投資スタンスが明確で強い信念を持っていますが、それを目論見書等だけで投資家が判断するのは困難だと感じるようになりました。かといって、証券会社や銀行等、販売会社の営業担当者の方が、ファンドやFMに関する理解が十分か、というと必ずしも、そのように言えないように思います。昨今、投信を含む投資情報に関して、ブログ等を含めて情報量だけは多いですが、本質的な判断材料は乏しいように感じます。
【アクティブファンドの個人的な分類】
アクティブファンドを私なりに強引に分類すると、①比較的オーソドックスなタイプ(小型株ファンドや地域特化等も含む)、②テーマ型、③システム運用(クオンツ運用)の3つに大別されると思います。①の場合は、運用機関の過去の実績、客観的な評価がポイントになります。②の場合は、運用会社の評価はもちろんのこと、テーマ自体が長期的に有効なものなのかを検討しなければなりません。いかに優れた運用会社でも、トレンドからはずれたテーマに沿って、高いパフォーマンスを達成するのは困難です。③の場合は、常にうまく行くと考えずに、どんな局面が強くて、どんな局面が苦手なのかを把握する必要があると思います。調子の良い話を鵜呑みにしてはいけませんね。どの局面でもうまく行く運用手法は存在しません。また、モデルを使うことが多いため、モデルが有効に機能しなくなると良いパフォーマンスを出すのが難しくなります。過去には幾多の事例があります。
【運用会社の特徴】
一般的には、あまり、認識されていないように感じますが、運用会社、運用機関ごとに、得意不得意の分野があります。日本の小型株なら○○アセットマネジメントとか、グローバルの債券ならば、○○インベストメント等という具合です。これらは、年金基金等からの評価等も参考になります。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)等が開示している運用受託機関をチェックすることで、一定の評価を推測することもできると思います。年金基金は、運用コンサルタントに助言を受けている場合も多く、ポートフォリオ等に関しても参考になるポイントが少なくありません。私も運用会社の評価に関して個人的な物差しは持っていますが、この場で具体的にお伝えすることは差し控えさせて頂きます。
2020年度の運用状況|年金積立金管理運用独立行政法人 (gpif.go.jp)
また、ファンドによっては、委託先が日本の運用会社であっても、実際の運用は海外の運用会社であることが結構あります。特に海外資産に関しては、リサーチや分析等に関して、外資の運用会社のネットワークに頼らざるを得ない実態があるのです。こちらは、目論見書等をチェックすることで、実際の運用機関がどこであるのかを把握することができます。それらの運用機関の評価情報を得るために、GPIF等、年金基金の開示情報をチェックすることは有用だと思います。(客観的に良い運用実績があるから年金に採用されているという意味合いです)
【ファンドのパフォーマンスの捉え方】
実際に、多くのファンドのパフォーマンスを検証した経験からの印象ですが、上昇局面には強いが下落局面には、より弱いファンド、上昇局面はほどほどだが下落局面で粘り強いファンド、上昇局面がいまひとつで下落局面も弱いファンド等の特徴が見受けられます。もちろん、上昇局面はベンチマークを上回り、下落局面でもベンチマークよりも下がらないものがベストなのですが、安定してそれを達成できるファンドは多くありません。それらを具体的に判別する指標(最大ドローダウン等の指標があるのですが、一般的ではありません)はありませんが、シャープレシオによって大枠を捉えることができると思っています。シャープレシオとは、リターンから無リスク金利を減じ、それを標準偏差で除したものです。
(リターン-無リスク金利※)/標準偏差
※無リスク金利は一般的に国債の利回りを使うことが多いですが、ゼロ金利の現状は無視しても体勢に影響はないと思います。
マーケットの上昇局面では、標準偏差が小さくなる傾向があり、下落局面で標準偏差が大きくなる特徴を踏まえれば、シャープレシオが優れているファンドは総じて運用効率が良いだけではなく、ダウンサイドリスクも相対的に小さいと推測できると感じています。一般的に、シャープレシオが1を安定的に超えていれば「良いファンド」とされますが、野球に例えれば、2割8分の打者のイメージでしょうか。3割バッターで例えれば、シャープレシオが1.2程度以上の数値のイメージのような気がしています。
モーニングスター [ ファンドランキング‐シャープレシオ‐] ‐投資信託ランキング『投資信託評価のグローバルスタンダード』 (morningstar.co.jp)
また、マーケットの上昇局面よりも下落局面で強みがある(下がりにくい)ファンドの方がトータルリターンは高い印象があります。個別株でも同様ですが、一度、大きなダメージを受けると回復するのに時間がかかります。その一方、ダメージが微少で済めば、回復するのにそれ程、時間がかかりません。また、アクティブファンドのFMへの評価は、ベンチマークをアウトパフォームできたかどうかという点になります。従って、マイナスのパフォーマンスであっても、ベンチマークを上回れば、評価されることになります。以前、投資家向けのセミナーにて運用会社の講師として運用報告を行った際、出席された方から「プロなのだから、指数が下がっていてもなんとかしろ!!」というご指摘を受けたことがありますが、ベンチマーク自体が大幅下落している場合は、多少、ファンドがベンチマークをアウトパフォームしても、投資家の立場としては、やられ方が小さいというだけで、満足できるパフォーマンスにはなりません。
やみくもに個別のファンドに投資するというよりは、投資対象のセクターやテーマに含まれている株式等の上昇が期待できるファンドから選択したいものですね。
テーマ型投信の場合、事前に運用方針が決定しているため、そのテーマが時代遅れになって、パフォーマンスが優れない状況になっても、投資ユニバース(投資対象)を変更することは基本的にありません。従って、どのテーマ型投信を選択するかが重要になります。場合によっては、状況次第(テーマがマーケットのトレンドから完全に外れた場合など)で売却した方が良いケースも考えられます。
また、各ファンドの過去のパフォーマンスを全体的にチェックすることも有用です。私は、直近3ヶ月、半年、1年、3年、5年の投信のパフォーマンスランキングを定期的にチェックしています。対象期間によって、パフォーマンス上位の顔ぶれは大きく異なりますが、長期投資を前提とすれば、3年や5年のパフォーマンスが継続して優れているものの方が好ましいと思います。(この期間の顔ぶれは安定していますね)中長期の期間であれば、良い投資環境も悪い環境もあり、適切な運用ができたかどうかがパフォーマンスに反映されると考えます。また、3ヶ月や半年の期間では、短期的に値動きが良かったものや好調だったセクター、カテゴリーがチェックできます。それが持続するかどうかは、別問題ですけどね。
以下の手順でランキングを把握することができます。
モーニングスターのHPから、投資信託-詳細条件でファンドを検索-検索する-左上のスナップショットをリターン(長期)、(短期)に変更する
投資信託のモーニングスター|ファンド詳細検索結果 [スナップショット] (morningstar.co.jp)
【コアファンドとサテライトのファンド】
コアとサテライトのファンドという位置づけは、初心者の方には有用だと思います。金融マーケットは、良いときも悪いときもあり、時に激しく動きます。実際に投資し、マーケットの変動が基準価額にどのように影響を及ぼすのかをご自身で感じるのとニュースで指数の値動きを聞くのでは大きな違いがあります。まずは、コアファンドでポートフォリオの軸を固めてから、プラスアルファのリターンを目指してサテライトのアクティブファンドやアクティブインデックス等を検討するアプローチが好ましく思います。コアファンドとしては、「全世界株式インデックスファンド」や「米国S&P500インデックス」がベターであると個人的には感じています。基本的に指数に連動しますので、指数と異なった値動きをするアクティブファンドよりも、値動きの背景が理解しやすいと思いますし、コストも基本的にリーズナブルです。経済動向や市場見通し等に慣れて、ご自身の相場観が育まれた段階で、サテライトのアクティブファンドを検討する手順が順当だと思います。
また、コアファンドにバランス型等を位置づけるケースもありますが、私は、株式のインデックスだけでも良いと考えます。特に債券部分に関しては、期待インフレ率が高くなる局面では、大きなリターンが望めません。その部分は、無理に株式インデックスに投資をせずに、現預金で保有し、必要のあった場合に追加投資すれば十分という認識です。
ここまでで、結構な紙面を使ってしまいました。
以下に思いつくまま、アクティブファンドのチェックポイントを挙げてみますが、こちらは、次回以降、お伝えしたいと思います。
・パフォーマンス
・運用コンセプト
・コスト
・純資産額
・運用会社
・開示資料
・分配方針(あれば)
・組み入れ銘柄
・販売会社
来週は、
「プロが考える?投資信託を購入する際のチェックポイント《アクティブファンド編》②」の予定です。
当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。
いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。
内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。