前回は、「プロが考える?アクティブファンド編①」についてお伝えしました。今回と次回に分けて、具体的なチェックポイントについてコメントしたいと思います。
《今回》
・パフォーマンス
・運用コンセプト
・コスト
《次回》
・純資産額
・運用会社
・開示資料
・分配方針(あれば)
・組み入れ銘柄
・販売会社
【パフォーマンス】
過去のパフォーマンスは、将来を約束するものではないと良く言われています。
これは、半分は的を射ていて、半分は正しくない印象です。私はファンド選択に際して、過去の実績は大事な判断材料のひとつだと考えています。
アクティブファンドは、類似ファンドでもコンセプトや運用手法等で大きくパフォーマンスが異なります。一方、インデックスファンドに関しては、同じインデックスを参照する場合、パフォーマンスが大きく異なること商品設計上は、ないはずです。
ファンドの長期パフォーマンスの優劣は、それなりの理由があると思います。実際に長期にわたり、ベンチマークに対して安定した超過リターンを確保しているものも存在します。一方、時々は超過収益を上げるものの、安定したパフォーマンスを維持できないファンドも多くありますし、テーマ型株式ファンド等では、トレンドの変化によって、リターンが大きく変動してきます。
オーソドックスなアクティブ運用であれば、最初に長期のリターンの推移で投資候補を絞り込むアプローチが有効だと考えます。その上で、後述の運用コンセプトに共感できるかどうかが、次の選別の基準になると思っています。新規設定のファンドに関しては、トラックレコードがないため、パフォーマンスの検証ができません。
中々、切ないのは、トラックレコードの長さに関わらず、運用コンセプトが良いからと言って、パフォーマンスが良いと限らないケースがあることです。長期の運用パフォーマンスの良いものの中から、パフォーマンスの再現性(良いパフォーマンスが継続するか)があるかどうかを判断する手順を踏む(運用コンセプトや運用プロセスのチェック)ことにより、好ましいファンドに投資できる確率が上がるように思います。前述の通り、運用コンセプや運世プロセスを重視したいところです。アクティブファンドの良い点は、機動的に銘柄を入れ替えることができることで、インデックスには無いメリットです。指数に組み入れられている企業でも、ダメになったと判断すれば、売却することができます。
良いコンセプトに基づいた運用がパフォーマンスに反映されていると判断できるものであれば、安心して長期保有できると思います。但し、ファンドマネジャー(以下、FM)が交代や、運用体制が変更になるリスクはあり、その際は、パフォーマンスの再現性に疑問が生じるケースも考えられます。また、マーケットの動きとファンドのコンセプトがマッチせず、良いパフォーマンスが出ないケースもあります。その場合、投資哲学や投資信念に基づいて方針を堅持するスタンスのFMとマーケットの変化に応じて、運用方針を調整して行くFMがいますが、私は前者の方が好ましく思います。投資方針をチェックすることで継続保有するか、解約するか、投資家自身で判断することができるからです。
以上のコメントをまとめてみると、
- 中長期のパフォーマンスの良いものをチェックしてみる
- 絞り込みをしたファンドの運用コンセプト、運用プロセスをチェックしてみる
- 組み入れ銘柄をチェックしてみる
運用実績から、騰落率をソートしてみてください。
【運用コンセプト】
目論見書やマンスリーレポートの記載からある程度、ファンドの属性や特徴を把握することができます。しかし、以前、ご紹介したとおり、具体的な運用コンセプトをそれらの書面だけで一般の投資家の方が把握できるかと言えば、運用会社のコンプライアンス上の表現に制約のため難しい面があります。かつて、ある運用会社の方から「このファンドは、グローバル株式を投資対象にするもので、FMが5年間で株価が5倍になると判断できる成長銘柄に厳選して投資するコンセプトです」というファンド提案を受けたことがあります。実際、過去の実績は高く、組み入れ銘柄を見ても納得できるものでしたが、そのような表現は各種資料に記載されていませんでした。
おおよその運用コンセプトが把握できたら、組み入れ銘柄をチェックすることも有効です。全てではないにしても、コンセプトと銘柄がマッチしているかどうかをチェックするためです。
また、別の運用会社の方から受けた商品提案の際、テーマ型ファンドの組み入れ銘柄を拝見したところ、上位にコングロマリット企業(複合企業)の名前がありました。「そのテーマでは、外せない銘柄であることはわかるけれど、コングロマリット企業なので、全社に対する売上比率や利益貢献度を考慮したら、組み入れ上位なのはどうなのか?その分野限定で50%利益成長したとしても、企業全体の利益に対する貢献度を考えた場合、株価に対する影響度が低く、投資すべき銘柄なのか?」という議論をしたことがあります。この件に関して、結論は出ませんでしたが、このような視点もあります。
結論としては、表現に関する限界はあるものの、運用コンセプトに関して、目論見書でシッカリ確認したいこところです。
【コスト】
コストには、信託報酬、販売手数料、信託財産留保額、その他費用があります。
投資信託は、保険商品や仕組み系商品など他の金融商品と比較すると、具体的なコストの開示は進んでいると思います。
コストはもちろん、低い方が好ましいのですが、アクティブファンドは、必ずしも、信託報酬が低いからパフォーマンスが良いとも限らないのが難しいところです。とは言っても、ボッタクリのような信託報酬のファンドを見たこともあります。期待リターンとコストのバランスが明らかにとれていないファンドも散見します。必ずしも、該当する訳ではありませんが、2%程度の期待リターンの債券ファンドで信託報酬が1.5%を超えているものなどは、個人的には、コストと期待リターンのバランスが悪いようにも感じています
また、外資の運用機関に外部委託しているファンドは、日本の運用会社と外資の運用機関の両方に運用報酬がかかるため、実質的な負担が高くなる傾向があるように思います。
アクティブファンドのボトムアップアプローチでは、企業業績のリサーチやマクロ経済の分析等で一定のコストがかかります。債券でもマクロ経済や金融政策に関する分析は欠かせません。従って、信託報酬が低ければそれで良いとも言えない面があります。私の感覚的な印象では、株式では1.5%以下、債券で1.0%以下の水準が目処ですね。もちろん、それ以上の水準の信託報酬でも、高パフォーマンスのファンドはありますけれど。
また、基準価額ベースの騰落率(リターン)は、信託報酬を控除した後の数値なので、仮に信託報酬が高くとも、良いパフォーマンスが出ているケースでは、運用対価として妥当という判断もできます。
販売手数料は、販売会社が受け取る手数料で、各社、各ファンドによって異なります。現状、ネット金融機関では、無手数料のケースがほとんどだと思います。
信託財産留保額は、解約の際、発生するコストです。これのコストは運用会社や販売会社の手数料となるものでは無く、ファンドに残していく性質のものです。かつて、解約が殺到したファンドで信託財産留保額の影響だけで基準価額が上昇したケースもありました。投資家としては、保有している間は、他の投資家の解約が基準価額の上昇要因となりますので、実質的に全てコストを負担するという訳ではありませんが、無ければ無い方が好ましいと思います。
その他費用は、ファンドの監査費用や売買執行費用など、定額(ファンドのサイズに関わらずかかる費用)のケースが多いため、ファンドの純資産額が小さいと影響が出てきます。一定サイズ以上であれば、それ程、気にしなくても良いコストです。
最後に、投資信託のコストは、一般的に低い方が良いというのは事実ですが、インデックスファンドのように明らかに低コストがパフォーマンスに直結するケースとアクティブファンドのようにコストの高低とパフォーマンスが必ずしも連動しないケースもあることをお伝えしたいと思います。
当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。
来週は、年内最終として「プロが考える?投資信託のチェックポイント《アクティブファンド編》③」の予定です。
いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。
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