国内外で沢山の経済統計データが発表されていますが、経済環境によって、あまり気にしなくても良い統計もありますし、より重要性が高くなっている統計もあります。
2022年は、グローバル金融マーケットにとって、最大の懸念として米国のインフレと利上げが挙げられます。それらの影響度合いが特に大きいと考えられる経済統計3つをピックアップしてみます。
端的にまとめると以下の関係があります。
原油価格など資源価格上昇→インフレ率上昇→金利上昇→株価に影響(特に成長株)
また、企業が高い賃金を提示しないとスタッフの確保が難しくなってきている面も憂慮されます。(人件費上昇によるコスト増)
まず、初めに
中央銀行の金融政策の役割ですが、物価の安定と雇用の安定になります。
その目的を達成するために政策金利を上下することで、金融緩和や金融引き締めを行います。現状、米国では、コロナの影響による供給不足を中心としたインフレが生じており、FRB(連邦準備理事会)は、金融引き締めによってインフレを抑える方向に舵を切っています。金融引き締めは、グロース株と呼ばれる成長株にとって向かい風になるケースが多く、今回もその影響が注目されています。予想されているよりも、利上げ回数や利上げ幅が小さければ、株式市場にプラスに働くことが考えられますが、大きければマイナスに作用することも懸念されています。
2022年1月中旬現在、当初の年内3回の利上げ、3月に0.25%の利上げというメインシナリオから、年内4回の利上げ、3月に0.5%の利上げという見方に変化しつつあるようです。このことがNASDAQ市場などのグロース株に向かい風になってきている背景だと思われます。
■米国雇用統計
米国の雇用統計は、毎月第一金曜日に発表になります。政府から発表される前月の指標で経済統計としては最新のものとなります。この統計を基に金融政策が実施されるという位置づけで、金融マーケットからの注目度が特に高い経済統計です。
失業率、非農業部門雇用者数が最大のポイントです。
FEDウオッチャーというFRBの対応を分析するストラテジストも多数いて、その予想値と実際の数値の乖離によって、為替、金利、株価が大きく動くことがあります。夏時間で日本時間の21:30、冬時間で22:30の発表となりますが、米国株式市場のスタート前のタイミングとなります。
失業率が低下し、非農業部門雇用者数が増大すると景気が良くなると判断され、債券が売られ、金利が上昇する傾向が高くなりますが、株式市場、為替市場は、それをプラスに受け取るケースとマイナスに受け取るケースの両方があります。
いずれにしても、雇用統計の発表後、マーケットの流れが変化することが少なくありません。
2022年初頭においては、雇用統計の数値がやや振るわない方が、金利低下により株式市場にはプラスになる傾向が強いように感じています。
但し、状況により、債券、為替、株式市場の反応が異なってくることは言うまでもありません。
■米国消費者物価指数(CPI)
米国国内の物価の上昇、下落の変動を表す経済指標です。労働省が毎月中旬に発表しています。インフレ率を分析するための最重要指標として位置づけられています。この数値が前月や前年と比べ、高くなってくると、より金利引き上げの可能性が高くなると判断されます。
生産者物価指数や卸売物価指数などもありますが、本年はCPIに特に注目です。
因みに、1/12に米国消費者物価指数が発表になり、前年同月比+7.0%と39年ぶりの水準となりました。今回に関しては、予想値と大きな相違がなかったため、株式、債券が買われ、為替が米ドル安(円高)になりました。ネガティブサプライズがなかったため、金融マーケットが好感したようです。次回以降も予想値と実際の数値の乖離が注目されると思います。
■米国PMI
「Purchasing Manager’s Index」の略で「購買担当者景気指数」のことです。
各企業の購買担当者にアンケートを行い、指数化したもので、50が分岐点で50を上回れば景況感が良く、下回れば景況感が悪いと判断されます。購買担当者は、先々の景気を踏まえ、仕入れを行うことから、景気の先行指標として位置づけられています。日本の日銀短観に類似します。PMIの数値が50を超え、前月よりも数値が良ければ、景気が良くなって行くと判断されます。
2022年は、特に米国の経済統計が注目されていますが、もう一つの大国、中国のPMIもチェックしておきたいところです。月初めに発表されます。
GDPは、一国の経済の付加価値という位置づけですが、経済活動であるPMIの積み上げの一面もあり、一定期間のPMIの数値と同期間のGDPの規模や成長率には密接な関係があると思います。
★FOMC(連邦公開市場委員会)
経済統計ではありませんが、米国金融政策の重要性が、2022年はより高まっています。
「Federal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)」の略で、米国の金融政策を決定する会合です。約6週間ごと、年に8回行われ、最終日に声明文が公表されます。
2022年1月現在、2022年の利上げ見通しは、3回から4回という予想がされており、利上げ回数、利上げ幅によっては、金融マーケットに対する影響が大きくなることが予想されています。利上げ幅に関しては、通常は、0.25%が中心になると思います。
直近では、1/25~1/26が予定されており、その次は3/15~3/16の予定です。
日本の経済統計やイベントとして、「日銀短観」、「景気ウオッチャー調査」、「決定会合」などがありますが、残念ながら、国内市場はともかく、グローバルな金融マーケットでは、現状、あまり、注目を集めなくなってしまいました。
また、特定国の為替や債券、株式に投資している場合は、その国の金融政策決定会合、インフレ率(多くの場合は消費者物価指数)、PMI、GDP成長率などの経済統計をチェックしてください。個人的には、これらの項目で80%程度以上は、当該国の金融マーケットの動きが把握できるように思います。短期の動きとトレンドの変化に注目したいところです。
次回は、「トータルリターンの考え方」を取り上げたいと思います。
当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。
いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。
内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。