ETF(上場投資信託)投資の留意点

ウクライナ問題が金融マーケットに大きな影響を及ぼしています。

原油価格や金価格が高止まりし、グローバルでのインフレ懸念も更に高まっています。

改めて、リスク管理が重要になってきています。

 

運用コストが低いことや種類が増加したこと(上記の原油関係やゴールド関係のプロダクトも多数、あります)で、ETFがより注目されるようになりました。投資信託であるインデックスファンドとの比較もされています。私見ながら、メリットとデメリット、及び留意点を改めて、ご紹介したいと思います。

 

ETFは、上場投資信託とされ「Exchange Traded Funds」の略です。投資信託と株式の両方の性質を有しています。投資信託は、毎営業日一回、市場の終値で基準価額が算出されるのに対し、ETFは、株式と同様、株式市場で時価が刻々と変動します。

 

とにかく、重視したいのが、「流動性」です。

どんなに魅力的であっても、流動性がないETFは、私はパスします。

私の持論ですが、不動産でも有価証券でも同様ですが、「流動性」の重要性は強調してもし過ぎることは無いと思っています。

 

 

《一般に言われているETFのメリット》

 

・上場しており、マーケットが開いている際、価格変動があり、リアルタイムで売買可能です。特にタイミングが重要な局面で有効活用できます。

 →投資信託は、終値で基準価格を算出するため、一日に価額は一つで、国内金融機関の営業日のみ受付可能ですが、ETFは株式と同様の値動きをし、変動する価格を見て売買することが可能です。(株式と同様 

       ということは、始値、終値、高値、安値があり、寄り付き(始値)で買い付けを行ったとしても、終値では、含み損益が生じていることを意味します。)

 

 特にマーケットの変動が大きい時は、リスク管理上も有効だと思います。国内上場のETFは、時差が無くリアルタイムで取引ができるという大きなメリットがあります。マーケットが先々、上昇、下落することが、見込まれる際、寄り付きの価格やその後の価格で売買できるのは、ありがたいことです。この点、投資信託に無いメリットです。

 

・分散投資ができます。

→ETFは、各指数に連動するため、複数の株式や債券などに投資する効果があります。

 

・値動きがわかりやすいです。

→各指数に連動するように運用がなされています。後述しますが、乖離の問題があるケースがあります。

 

・コストが低い(保有コスト)です。

 →保有コストが低いのは事実ですが、売買の際の株式委託手数料が必要になるケースが少なくありません。(各社、委託手数料無料のETFもありますが)一方、インデックスファンドは販売手数料が無料になっているケースが多く、一定の保有コストはかかりますが、売買コストがかかりません。トータルコストという点では、多くのインデックスファンドの方に優位性があるように感じています。(売買手数料無料のETF除く)また、積立に関しては、インデックスファンドが1万円程度(場合によっては数100円)から購入できるのに対して、ETFは、最小投資口数が定められており、少なくとも数万円が最低投資金額になるケースが多く、インデックスファンドの方が積立には向いていると感じています。

 

・種類が多いです

 →米国市場に上場しているETFは、非常に種類が多く、様々な局面で投資の選択肢となります。株式、債券だけでなく、コモディティやデリバティブ系のプロダクト等も上場しているだけで無く、配当も毎月配当するタイプもあります。リスク前提ですが、配当利回りが10%程度のプロダクトもあり、多種多様なニーズに対応できます。

 

 

 

《あまり言われていないETFのデメリット》

 

・流動性が低く、売買の板(売り買いのスプレッド)が開いているケースが少なくありません。

 →一日の売買代金が少なく、買いたい時、売りたい時に十分な板が無く、無理に売買すると価格が動いてしまう銘柄も少なくありません。投資信託の場合は、基本的に売買とも金額制限はありませんが、ETFの 

売買に関しては要注意です。

 

買いたいときに時価よりもかなり高い値段にしか売り物が無いケースや買いたい金額に満たない売り物しかないということがあります。売りたい局面も同様です。100万円程度の注文でも自分の注文で価格が大きく動いてしまうケースも見られます。1,000円の値がついているETFを買いにいくと1,030円まで買わないと希望の金額に満たないケースもあります。売りの場合も同様のイメージです。流動性の高い大型株と時価総額の小さい小型株との流動性と同じですね。これは、間接的に、取引コストが大きくなることを意味します。成り行きでの注文は特に要注意です。手間がかかっても、指し値にすべきだと思います。

 

実際、魅力的なコンセプトの国内上場ETFを見つけることはあっても、諸条件をチェックしたところ、流動性が低いため、投資を諦めたことが何回かあります。

 

 

・参照指数との乖離が生じるケースがあります。

 →特に海外資産やコモディティに連動するETFの場合、時価と本来価値であるNAV(Net Asset Value/純資産価値)と乖離があるケースがあります。流動性の高いETFは、参照指数にほぼ連動しますが、流動性が低いものは時価の方が高かったり、安かったりすることがあります。本来あるべき価格と時価の乖離は、流動性が十分ではないことに起因すると私は思っています。

 

 

一般的に米国市場に上場しているETFの多くは、流動性が高く、売買のスプレッドも気になることはありません。内外問わず、ETFに投資する前に流動性(売買代金)や売買のスプレッド(板)の特徴を把握しておくことが特に重要だと思います。マーケットメイクという役割で証券会社が流動性を供給する仕組みはあるのですが、銘柄によっては十分とは思えません。少なくとも、3,000万円程度の売買(自分自身の取引という意味では無く)で価格が大きく動いてしまう銘柄は避けるべきだと思っています。一日の売買代金で言えば、少なくとも、500億円は欲しいところです。

 

結論としては、

国内ETFでは、流動性の観点から見ると投資対象になり得るETFは実は少ないこと、国内上場ETFの海外株式やコモディティ関連銘柄は、特に流動性とNAVとの乖離の状態に注意したいところです。

 

流動性が乏しいETFに限って言えば、投資信託(類似のコンセプトの商品があればですが)の方が利便性が高いように思います。ETF特有のメリットもあるのですが、流動性の重要性は無視できません。

 

但し、ETFはリアルタイムでの取引が可能であり、投資信託は発注後の約定になること(発注時点では、約定価額が不明)と終値ベースの一日一回の値付けのみという点が大きく異なります。また、ETFの場合、分配金の再投資が自動的にできない点も投資信託と異なるところです。

 

 

視野を海外に広げると海外ETFの商品の多様性は素晴らしいです。ネット証券経由で様々な資産(株式以外にも債券やコモディティ)や業種、さらには、それらのブルベアなどに投資ができます。また、二重課税の対象とはなりますが、毎月配当が出るETFも探せば、見つかりますし、高配当のETFも少なくありません。米国株も同様ですが、配当金は米ドル建てで、証券口座への入金となります。円で引き出す場合には、円転するためのコストがかかりますし、円高局面で円転すると為替の損失が生じますので、ご注意ください。米ドル建ての配当を貯めておいて、まとめて、円安の時に円転すれば、為替益も期待できますね。

 

やや脱線しますが、SNSなどで魅力的なETFとして話題になっている「カバードコール型ETF」は、高配当のものが多いのですが、商品性に関して十分な理解が必要だと思います。

 

コールオプションのプレミアムを原資に高配当を確保する仕組みですが、一定水準以下に原資産が下落すると獲得するプレミアム以上の価格下落が考えられる点、オプションの期限後のロールオーバーのコストなどの把握が難しい点などから十分な理解と情報収集が必要だと思います。個人的には、期待されるインカムの水準と最大損失のバランスを考えると、あまりお勧めできる商品性とは思えません。

 

SNSで話題になっているレバレッジ型投信の積立やカバードコール型商品をご検討される際には、十分な理解と配慮をして頂きたいと感じています。

 

次回は、“今更ですが、「PERの捉え方」”の予定です。

 

当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。

いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。

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