健康寿命と介護の関係

 我が国では、高齢化の進展によって、介護の問題が静かに深刻化しています。私が承知している範囲でも、介護退職を余儀なくされている方が多くいらっしゃいます。

憂鬱なテーマですが、今回は、介護についてコメントします。

 

以前のブログでご紹介しましたが、2016年の男性の平均寿命が80.98歳に対して健康寿命は72.14歳(ギャップが8.84年)、女性の平均寿命が87.14歳に対して健康寿命が74.79歳(ギャップが12.35年)というデータがあります。

 

 残酷な現実として、健康寿命である男性の約72歳、女性の75歳を過ぎると、介護が必要になる可能性が高まります。寿命とのギャップの年数、男性が約9年、女性は約12年に近い年数が被介護期間に近似していると想定されます。これは、我々自身の年齢ももちろんですが、ご両親や曾祖父母の方々の年齢を考えると他人ごとではありませんね。また、不謹慎ですが、個別のゴール(介護終了の時期)が見えないのも、介護をする人にとっての負担になります。具体的には、精神的な負担、経済的な負担、物理的な負担などが考えられます。

 

 冒頭でも触れましたが、デリケートな話なので、個別具体的な背景までは、承知していませんが、私の知る限りでも、40代後半から50代でご両親の介護のため、退職をされるケースも少なくありません。私は、この分野の専門家ではありませんが、介護関連のお仕事をされている方のお話だと、「在宅介護は、介護される人も介護する人も負担が大きく、共倒れになるケースが多い」とのことです。実際に肉親の場合は、身内への甘えや感情の高ぶりなどから、双方がぶつかる場面も多いのでしょうね。しかし、現在の日本の制度は、在宅介護を前提にしているような印象を私は持っています。(認識不足、認識相違であれば、すみません)具体的には、車椅子の補助金や自宅のバリアフリー化など様々な補助制度はあるのですが、介護施設よりも在宅介護の方が手厚い印象です。核家族化の進行が始まって、長らく時間が経ちますが、相変わらず、三世代同居を前提とした制度設計になっているように感じています。また、現在でも地方都市では、在宅介護を主流とする考え方の方が多いようです。

 

一方、介護施設に関しては、箱(施設)は、十分あるものの、スタッフの確保が難しく、基本的に、入居希望者に対してのキャパシティが不足しているようです。報道でも介護スタッフの待遇に関する課題が報じられていますね。また、高齢化が進む中、ある報道では、計画的に自宅を売却し、健康な段階から専用施設で暮らす高齢者の方のケースを取り上げていました。また、静岡県の熱海市などでは、高齢者向けマンションが多く、そのためか、市全体で高齢者向け医療が不足気味という話も耳にしたことがあります。介護に関しては、様々な課題がある一方、高齢者の方の過ごし方などはまだら模様のような感じですね。

 

 介護関連施設の善し悪しに関しては、口コミなどの情報が限定されるため、外部の評価がわかりにくいという特徴もあります。介護を経験している知人や医療関係者などの体験談や情報が貴重になると思います。ある程度、介護の状況が切迫する前に、ザックリとした介護に関するスタンスを介護される側、する側で相談の上、絞り込みたいものです。

また、生々しい話ですが、介護施設でのコストも十分、考えておく必要がありますね。民間の施設だと、入居一時金が必要になるケース、月額のランニングコストも相対的に高くなるケースがあります。年金受給額では不足する可能性があり、その場合の資金繰りも考慮しなくてはなりません。保有している不動産などを事前に売却することなどの準備が考えられます。介護施設にお世話になる期間も事前にはわかりません。余裕のある計画が欠かせないように思います。

 

 諸先輩方のお話や色々なケースを踏まえると、一定の年齢になったら「終活」と申しますか、「生前整理」の必要性を感じています。身の回りのものの整理は、もちろんのこと、クレジットカードの選別や決済系のアプリ、取引金融機関などをある程度、絞り込むなどによって、将来的に色々な面(相続や口座管理の手間、介護施設費用引き落としなど)で負担が減じることになります。ネット金融機関の場合は、通帳や残高通知などが、現物でないため、当事者が認知症になった場合やコミュニケーションが取れなくなった際には、家族を含めた外部の人には存在が分かりにくいという課題もあります。また、取引する金融機関を絞り込むことで、介護費用や高齢者向け住宅費用の引き落とし口座として一定の残高維持することや将来的な相続の負担軽減(取引先が多いと手続きが煩雑になります)にもつながります。少なくとも、50代では、優先順位を意識し、60代に入ったら、定期的に必要な項目をチェックできる位のスタンスが周囲にとっても好ましいのでしょうね。

あくまでも、個人的な見解ですが、銀行口座は3つ、証券口座は2つ、クレジットカードは2つ位に絞り込みするのが、妥当なように思います。

 

レアケースと思いますが、海外金融機関の口座などは、相続時の事務手続きに相当な負担があるようですね。日本国内での相続手続きと異なり、「分割協議書」以外の書類のやりとりなども必要になると耳にしたことがあります。ご両親が健在なうちに、こういった「生前整理」に関する意向について、コミュニケーションをとっておくことが大事になりますね。

 

あわせて、住居や居住地に関しても考えたいところです。

地方都市で戸建てにお住まいの高齢者の方も多くいらっしゃると思います。様々な家族の形態があり、価値観も様々なため、一般化するのは困難ではありますが、可能であれば、身内の方の近隣で且つ交通の利便性の高い小ぶりなマンションなどへの転居も検討の余地があるように思います。早い段階で、ご自宅を処分され、気に入った高齢者施設(介護施設ではない)への入居についても考えたいところです。

特に、高齢のご両親が地方の実家にお住まいのケースなどの場合、介護の必要性が生じると、介護する側にとって、大変な負荷となります。私の知る範囲でも複数の知人は、ご両親と話し合いの上、お住まいのご実家を処分されて、ご本人の近くで、お過ごしになる対応をされています。何かあっても、物理的に近くでサポートできれば、介護退職のリスクは少なくなりますね。もちろん、個々の状況によって、必要な対応は異なりますけれど。

 

 

実際、介護に関して、体験しないとわからないことも多いと言われています。例えば、「認知症」の場合、基本的に認知機能が低下するだけのように感じますが、人によって症状がまちまちで、静かに過ごす方もいれば、暴力的になる方もいるようです。お元気だった頃の性格と一変してしまうことも(悪い方に)、介護する方には精神的なショックが大きいようです。また、ご本人が実の子供たち(私たち)を認識できなくなるケースなども、介護する立場からすると、切なく悲しい事態ですね。

 

あらかじめ(お元気な段階で)、経済的な負担、時間的な負担、精神的な負担などを考慮し、ご本人の意向を尊重したうえで、適切な介護施設や高齢者住宅に移っていただくことも、選択肢としては、大きなものだと思います。

 

個人の尊厳の問題、家族内部の問題でもあり、各家庭で価値観が異なるので、正解があるわけではありませんが、世代間で必要なコミュニケーションをとった上で、お互いを尊重し、必要以上に相手に甘えないような過ごし方ができると良いですね。

 

次回は、「株式市場の先行指標について」の予定ですが、グラフがうまく挿入できないので

グラフ無しになる可能性が高いことをご了解ください。

 

 

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