前回は、「コア資産・サテライト資産」についてのコメントをしました。
今回は、その考え方を踏まえて「私流、高配当株投資(コア資産)」をお伝えします。
個別銘柄名も紹介しますが、あくまでもご参考ベース、且つ、自己判断でお願いします。
前回のまとめですが、私の考え方では、
「コア資産」は、必ずしも、安定重視に限らず、低コストでわかりやすい株式インデックスファンドや流動性の高い大型株なども対象となり得ます。
また、「サテライト資産」は、投資信託ならば、小型株や新興国株、テーマ型投資信託など、個別株では、トレンドに乗った銘柄などが視野に入りますが、金融マーケットの環境次第で、投資比率の調整を重視したいという趣旨でした。預金などの安全性の高い資産は、「その他の資産」に区分し、3つのカテゴリーに資産を分類しました。
今回は、コア資産に高配当株を組み入れたケースを考えます。
2022年8月現在、東京証券取引所プライム市場の配当平均利回りは、加重平均で2.33%という水準です。ゼロ金利政策での預金金利と比較すれば、相対的に高い水準です。もちろん、株式にはリスク・プレミアムがあるので、リスク対比ではバランスが取れている水準と考えることもできます。(リスク・フリー((安全資産))の国債利回りに投資家が要求するリスクに見合うプレミアムを加えた水準が期待リターンに近似するという考え方)
いずれにしても、預金金利を上回るインカム収入は、魅力的です。
一般的に高配当株に分類される配当利回り水準は、3.0%から3.5%程度以上でしょうか?
但し、業績が伴わない企業、好業績が将来的に見込めない企業、配当性向(利益に対しての配当の比率)が高すぎる企業などは、できれば避けたいところです。他方、バランスシートが強固で、安定した業績を維持できている企業、営業利益が継続的に伸びている企業、適切な配当政策を実施できる企業はコア資産の投資先として考えられると思います。
このような条件を前提にソートすると、多くの魅力的な企業が該当してきます。
個人的には、コア資産の条件として、流動性は重視したいので、中小型株は除かれます。(投資対象外という意味では無く、中小型株に投資する場合はサテライト資産と考えます)
結果的に、直近の株価水準、利益水準、配当水準を考慮すると、総合商社、保険、銀行、鉄鋼、通信などの業種が主要投資対象となってきます。ご案内の通り、グロース株に分類されるような企業群は、設備投資や研究開発を優先するため、一般的には、配当水準は低めです。
総合商社や鉄鋼、素材株などは、商品市況などに左右される面があるので、グローバルでのインフレやマクロの需給関係、コモディティ価格の変動などに注意を払う必要があります。また、市況産業とされるセクターの場合は、企業の経営努力だけでは、好業績の維持が難しいことが多いのも念頭に置いておきたいものです。
銀行、保険などの金融株は、ALM(資産・負債管理)の構造上、短期調達、長期運用が前提となりますので、金利のイールドカーブが順イールド(短期よりも長期金利の方が高い)の環境が、業績にプラスと働きます。逆イールドが発生すると利ざやの逆転が生じるリスクが高まります。もっとも、過去の蓄積があるので、短期的な影響は軽微とは思いますけれど。
海運株にも触れておきます。現在、日本郵船(9101)や商船三井(9104)は、10%を超える予想配当利回り水準ですが、株価は強弱感が対立し、荒い値動きになっています。過去1年程度の期間、株価は大幅上昇しましたが、コロナやインフレの影響から輸送運賃が上昇したことにより、業績が劇的に好転したのが背景です。最近の株価の値動きは、サプライチェーンが正常化しつつあり、且つ、景気後退の可能性が高まり、将来の業績に対する評価が分かれてきていることが影響していると思われます。理論株価は、将来のCF(キャシュフロー)の現在価値とされますので、2年後、3年後の業績を考えた場合、現在の水準が正当化できるかどうかという視点から強気な見方と弱気な見方が拮抗している局面ですね。それらを踏まえると、仮に投資する場合、海運株は、高配当ですが、株価変動を考慮し、サテライト資産として認識して対処したいところです。特に、この1年間、決算発表前後や配当権利付き最終日前後の値動きが激しいケースが見られました。
ご存じの通り、日本では、3月/9月決算企業が多く、中間配当もあるとすると、3月/9月末(権利付最終日)に保有していれば、配当の権利を獲得できます。次に6月/12月決算企業、2月/8月決算企業が多いのが現状です。概ね、決算後、2ヶ月から3ヶ月後に配当金が投資家の元に届きます。以前のブログでご紹介しましたが、うまく、高配当株を入れ替えすることができると、異なる決算月の銘柄の配当を獲得することが可能となり、資金効率が高くなります。もちろん、うまく行く場合ばかりではありませんが、
前述の決算企業に投資した場合(中間配当があると仮定します)、2月決算(5月に配当金)、3月決算(6月に配当金)、6月決算(9月に配当金)、8月決算(11月に配当金)、9月決算(12月に配当金)という配当収入のスケジュールを作ることができます。特に年金受給されている方、今後、受給予定の方は、偶数月に年金支給がありますから、奇数月に配当収入があると個人のキャッシュフローが安定しますね。
1月/7月決算、4月/10月決算、4月/11月決算については、対象企業が少ないため、私は、J-REITやインフラファンドへの投資を視野に入れています。うまくポートフォリオを組めると、毎月に近い頻度で配当収入を確保することが可能になります。
また、高配当株を意識しすぎることの弊害としては、サテライトでグロース株投資のチャンスを逃すこともありました。高配当株に投資してその権利を確保するまでは、資金が固定してしまう面もありますね。また、含み損状態が続くと、やはり、資金が固定化してしまいます。
SNSなどを見ると、複数の証券口座を持ち、長期保有の高配当株メインの口座、短中期のキャピタルゲイン・メインの口座と分けて、管理されている投資家もいらっしゃるようです。このアプローチは、口座管理やリスク管理が容易になると思われ、戦術のひとつとして良いアイディアかもしれません。
配当狙いや優待狙いの投資家は、いつの時代も存在しており、権利付最終に向けて、株価が上昇することも少なくありません。私は、配当確保のため、ギリギリのタイミングで投資し、痛い目にもあったので、権利付最終の2ヶ月~3ヶ月程度前から、大きく売られる局面があれば、投資を検討することが多いです。高配当株投資で気をつけているのは、あらかじめ売却したい価格をチャート上で確認し、(無理がなく無難な株価水準)それを逆算して安くなった株価で買付けすることが多いですね。
日本経済は、残念ながら低成長で、株式市場も高値を更新していくというよりは、ボックス圏での値動きが続いています。そのため、私は、基本的には、高配当の銘柄をずっと保有するというよりは、値上がりしてキャピタルゲインが取れる際には、売却し、次の銘柄の値下がりを待つようなスタンスをとっています。うまくいくことばかりではありませんが、配当と譲渡損益のトータルリターンでプラスを維持できれば良いと割り切りで、幸い、今までは大負けは少なかったように記憶します。
今回の最後に2022年上期に私が検討した株式(高配当株以外やREIT、インフラファンドも含む)をご紹介します。こんな銘柄があるのだという程度で見て下さい。
割と普通な銘柄なので、ガッカリされるかもしれません。
(参考に配当利回り、予想分配利回りを記載します。尚、各種資料からの数値ですが、その後の減配、増配は加味されていません)
1月
3292 イオンREIT投資法人:4.09%
2989 東海道REIT投資法人:5.20%
3269 アドバンス・レジデンス投資法人:3.10%
2月
3543 コメダホールディングス(優待あり):2.2%
7630 壱番屋(優待あり):1.7%
1343 野村REIT指数連動型上場投信(ETF)
3月
9101 日本郵船(ややサテライト):11.3%
9104 商船三井(ややサテライト):14.5%
8058 三菱商事:3.3%
8002 丸紅:4.2%
9433 KDDI(優待あり):3.0%
8306 三菱UFJFG:4.3%
6302 住友重機:3.0%
2412 ベネフィットワン(ややサテライト/優待あり):1.66%
6501 日立:1.84%
8766 東京海上ホールディングス:2.6%
4月
3309 積水ハウスREIT投資法人:4.0%
5月
1377 サカタのタネ(ややサテライト/優待あり):0.97%
9286 エネクスインフラ投資法人:6.35%
9281 タカラレーベンインフラ投資法人:5.7%
1343 野村REIT指数連動型上場投信(ETF)
6月
7751 キャノン:3.6%
7718 スター精密:3.2%
3436 SUMCO:3.35%
5108 ブリヂストン:3.2%
1911 住友林業:5.2%
1605 INPEX:3.9%
5302 日本カーボン:4.8
3470 マリモREIT投資法人:5.4%
他にも魅力的な銘柄は、数多くありますが、これらを検討しましたが、株価水準などから投資を見送ったケースもあります。
次回の予定は、「元証券会社法人マンの四季報の見方」の予定です。
当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。
いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。
内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。