前回までは、中長期投資と短期投資についてコメントしました。
今回は、それらを踏まえ、短期投資の戦術を考えてみます。
尚、前回、成功されている方の傾向を確認してみましたが、若干の補足です。
皆さんの経歴を見ると、意外と金融機関出身の方はいないようですね。「テスタさん」のお仲間だと「ヤーマンさん」が証券会社の出身のようですが、必ずしも、金融知識が最初から必要という訳ではないようです。
また、グロース株投資を重視するスタンスの方が多いと記載しましたが、背景は資産を大きく増やすことが前提だからです。高配当バリュー株では、配当利回り±アルファの期待リターンとなり、資産を大きく増やしたい投資家ニーズとは合致しないということになります。決して、配当株やバリュー株投資を否定している訳ではありません。念のため。
それでは、短期トレードの勝敗を分けるポイントを考えてみたいと思います。
私なりに、成功された方々の見解や傾向などから、可能性を探ってみます。
中長期投資視点では、株価は本来の企業価値に収斂するという考え方が基本ですが、短期取引の視点で重視されるのは短期の需給です。ついては、想定できる勝敗を分ける変数を独断で俯瞰してみたいと思います。
【勝敗を決める変数】
◆勝率
◆勝ち幅と負け幅
◆投資金額(ロット)のコントロール
◆取引の数(期待値が正の場合)
◆銘柄選択
◆リスク管理
■勝率
もちろん、勝率は高い方が好ましいです。が、超短期間では、株価が上昇するか、下落するかの確率はどちらも50%に近いと考えられます。成功投資家のどなたかが言っていましたが、「勝率は高ければ高い方が良いというものでは無い。60%程度でも十分である」とのことでした。
確かに、勝率を意識するあまり損失確定(損切り)をためらうケースもあり、結果的に株価が良い方向に動くこともありますが、逆に動き損失が拡大するケースも少なくありません。
つまり、勝率にこだわることで負け幅の拡大につながって、トータルリターンを毀損する可能性が考えられます。前回も触れましたが、小さな負けと大きな勝ちがあれば、勝率は低くてもトータルで勝つことは可能です。言うは易しですが、その見極めが難しいですね。
また、損失確定を早く徹底することで、勝率が下がる可能性も考えられます。
精神的にも難しい課題です。良いと思って投資した銘柄選択の自己否定ですからね。
■勝ち幅と負け幅
中長期投資の場合、値上がり益を大きく確保することもできますが、短期投資の場合は、どうしても、一取引あたりの値上がり益が限定されます。欲張ると、あっという間に含み損に転換することも良くあります。
当然ながら、上昇確率、下落確率がともに50%で利益確定と損失確定の値幅(収益率)が同じならば勝てません。(コスト分、負けることになりますね)
と、すれば、短期投資において、勝ち幅を負け幅よりも大きめに確保する必要があります。
仮に勝ちパターンで、0.5%で利益確定、▲0.2%で損失確定した場合、
1回あたりの取引で
・勝ちパターン:投資金額×0.5%
・負けパターン:投資金額×▲0.2%
これも絵に描いた餅の面もあり、0.5%の勝ちパターンが0.2%や0.1%にとどまることや
▲0.2%前提の負けパターンで▲0.5%や▲1.0%になることも考えられます。
短期のトレードの場合に、勝ち負けが50%ずつだったとして、以下の式が成立します。
投資金額×(0.5%-0.2%)×取引回数
1回の投資額が100万円だとすると
100万円×(0.5%-0.2%)=3,000円
3,000円×取引回数=想定キャピタルゲイン
うまく損失確定(自分の意思で可能)をできたとしても、利益確定がシナリオ通り(他力本願)になるかという別の問題も考えられますね。これらのケースは、あくまでも、信用取引で当日限りの決済を前提に考えていますので、勝ち幅を小さく想定しています。
■投資金額(ロット)のコントロール
買い乗せ(上昇時の追加投資)やナンピン(下落時の追加投資)などの場合、投資金額の大小が重要になってきます。ディーリングの世界では、上昇時の追加投資は、当初の投資額よりも控えめの方が妥当とされています。また、ナンピン自体、評価が難しい面があります。失敗した銘柄に追加投資することで、更なる損失拡大につながるリスクですね。追加投資の株数と概算の価格がわかれば、追加投資後の新たな簿価がどの程度になるかがわかりますから、売却目標水準やロスカット水準との見合いで慎重に対処したいところです。
■取引の数
仮に全ての取引の期待値が正の値であるなら、取引数が多ければ、多いほど成果は大きくなります。現実的ではありませんが、1取引で1,000円の期待値であれば(とりあえず、投資金額は考慮しません)、100回取引することで、10万円利益が期待できます。
ネット証券の一日信用取引では、手数料が無料のケースがあり、取引コストや信用取引開始基準の敷居自体は、かつてよりも低くなっていますけれど、
また、1取引あたり、0.3%程度の正の期待値であれば、投資金額を大きくすることで、果実を大きくすることも可能となります。収益率自体は同じなので、投資金額の多寡で果実の大きさが変化するという意味合いです。但し、これも大きな金額を一度に投資するのが困難な小型株などには該当しませんし、リスク管理上の問題も内在します。
■銘柄選択
SNSや著書で拝見すると、短期の投資家の方々の投資手法は様々で、ファンダメンタルを重視しないアプローチの方も少なく無いようです。日中足、日足のチャート、板(売買の株数のわかる画面)などを参考に銘柄選択をされ、日替わりで投資対象を変えていく方、同じ銘柄にこだわる方など多彩なようです。
共通しているのは、値上がり率ランキング上位や売買代金上位のボラティリティが高めの銘柄を投資対象にしているとのことです。個人的には、中長期投資と同様、マクロ的にテーマ性があり、投資信託等も組み入れる可能性のある銘柄を優先したいと思っています。ある程度、個人投資家以外の機関投資家の参加があった方が適正株価に近似するケースが多いと感じているからです。
逆に言えば、中長期投資対象の銘柄であっても、売買代金が大きくて、値動きがある程度あれば、短期投資のターゲットにもなり得るように思います。
最近で言えば、半導体のレーザー・テック(6920)や三菱UFJ FG (8306) 、日本製鉄(5401)などが該当するかもしれません。
■リスク管理
信用取引を利用するとして、反対売買だけでなく、現引き(信用で買付けた価格で、現金を充当することで現物に振替える)や現渡し(信用取引で売りつけした価格で現物を売却する形にする)という決済方法もあります。無期限信用取引などの登場で期日(最長決済期間)を意識しなくても良くなりましたが、含み益が生じ、更に上昇が期待できるケースなどでは、金利負担のある信用取引で決済するよりも、現物に振替えてじっくり保有する選択肢も考えられます。
また、確率の点から期待値が正の値であっても、連敗することは十分、考えられます。その際、仮に4連敗、5連敗しても、耐えられるリスク管理が大事になりますね。得てして、投資の場合、前のめりになりがちですが、寧ろ、うまく行かなかった場合を前提として、慎重なリスク管理することが致命傷を負わない秘訣のように感じています。現物取引だけよりも、信用取引を行うことで、収益機会は増加しますが、その分、リスク管理がより重要になってきます。基本的に当日中に決済する自信がなければ、信用取引の枠に余裕を持たせることが大事になると感じています。
もちろん、中長期投資は、現物取引が基本になりますが、信用取引は、枠の範囲であれば、一日に何度も取引可能であるというのが、現物取引と大きく異なる点です。また、一定の制約はありますが、売りポジション(空売り、ショート)から、入ることも可能です。リスクヘッジという点でも、使い方によっては有効です。
私自身、中長期投資を基本として過ごしてきました。
但し、前述の通り、短期投資を通じて、大きな金融資産を形成された方々がいらっしゃることもわかり、時間の余裕のある範囲で短期投資にチャレンジを始めた次第です。
とは言え、私の場合は、一定期間を設定し、納得できる成果が得られなければ、適性が無いと判断し撤退するつもりです。
次回は、「経済イベントに係わる投資戦略」の予定です。
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