証券会社が発表する株価レーティングを見かける機会が多くなりました。
今回は、株価レーティングの経緯、個人的な活用方法などについてコメントしたいと思います。
以下のコンテンツが株価レーティングの事例です。
注目レーティング | プレミアム銘柄 | トレーダーズ・ウェブ (traders.co.jp)
03/09 ユニチャーム (8113/東P) 三菱UFJMS Neutral継続 4300→5100円
03/09 SOMPOHD (8630/東P) 野村 Buy継続 7100→7300円
03/09 MS&AD (8725/東P) 野村 Buy継続 5200→5600円
03/09 東京海上 (8766/東P) 野村 Buy継続 3300→3500円
03/09 ユナイテッドU (8960/東) 三菱UFJMS Neutral継続 143000→152000円
03/09 ヤマトHD (9064/東P) 三菱UFJMS Neutral継続 2400→2600円
03/09 AZ-COM丸 (9090/東P) 三菱UFJMS Underweight 継続 1300→1600円
03/09 AZ-COM丸 (9090/東P) 大和 3継続 1650→1850円
03/09 GMO (9449/東P) JPM Neutral継続 2300→2700円
03/09 共立メンテ (9616/東P) 野村 Neutral継続 5530→6030円
尚、記載の中立や強気というのは、TOPIX(東証株価指数)などの指数に対して、相対的にパフォーマンスが上回るか、下回るかという投資判断です。また、よく見てみると、評価レベル自体は変わらないのに目標株価水準が変化しているケースもありますね。
かつて、具体的には、平成前半の時期までは、株価レーティングは存在して無かったように思います。推奨銘柄(色々、問題含みでしたが、こんな呼び方もありました)という取り上げられ方はありましたが、そもそも、証券会社が上場企業の株価にネガティブな見方を発信するということが避けられていた節がありました。
今も昔も上場企業が社債や株式で資金調達は、証券会社の法人部門や引き受け部門は
大きなビジネスチャンスとして捉えられています。従って、資金調達する企業の意向を無視できませんし、言い方は変ですが、ご機嫌取りの必要もあったように感じています。株価上昇は、発行企業、投資家、証券会社にとって、皆、ハッピーなことなので、証券会社自体が水を差すようなことは忌み嫌われていた印象があります。
そんな背景もあり、強気のコメントしか出せない環境だったように思います。
しかし、時が経て、ライブドアショック、リーマンショック以降、証券各社もポジティブな見方だけでなく、ネガティブな見方も公表するようになってきました。現実と乖離した見通しや参考銘柄が受け入れられなくなったこともあるのかもしれません。
最近では、株価レーティングで「Over」から「Neutral」へのダウングレードなども普通に見かけるようになりました。さすがに、「Sell」や「Under」、「売り」という評価は発行企業に対して抵抗があるのか、公表する頻度は少ないように感じていますけれど。
また、株価レーティングの際、上記の通り、目標株価を3,000円⇒3,500円というように表現されることも多いです。 但し、株価が上昇してから事後的に株価レーティングをアップすることや、株価下落の後にダウングレードするケースも見かけます。これらは、後出し評価のようにも感じます。
それでは、投資家目線ではどのように活用できるのでしょうか?
まず、目標株価(ターゲットプライス)、特に株価水準を鵜呑みにしないということが大事だと思います。
あくまでも、参考程度です。
目標株価自体、様々な前提条件を置いて算出しているため、アナリストによって大きく数値が異なります。複数の証券会社が特定企業の目標株価を算出しているケースもありますが、結構、水準が異なっています。
では、どのような見方が良いでしょう?
私は、どの業種が全般的に目標株価引き上げ傾向か、引き下げ傾向かをチェックします。個別企業の事情はありますが、業績や株価トレンドは、同じセクター内では、比較的、類似します。セクター内の企業の目標株価が複数、引き上げされているということは、業種として追い風が吹いていると推測できますね。背景まで理解することが好ましいのは言うまでもありませんけれど。また、気になる銘柄の類似企業の評価も参考になるかもしれません。上記の通り、同一業種の場合、収益構造が類似するので基本的に評価の方向性も似てくるように思います。
別の視点での個人的な認識ですが、
証券各社が株価レーティングを発表する際、組織としての見解としての評価する訳ですから、当然、コンプライアンス部門やアナリスト個人ではなく、所属する部門のコンセンサスも得ていると思います。また、SNSなどでは、時として株価レーティングを「自己売買(証券会社自身が株式や先物をトレードして収益を獲得する部門)に利用しているのでは?」という懸念をもたれている方もいるようですが、金融商品取引法などによって、利益相反は固く禁じられていますし、利害対立する部門の情報共有も制限されています。
従って、自己売買部門が別部門の公表した株価レーティングを利用することは、考えにくいと思っています。
また、複数の証券会社が株価レーティングを行って、目標株価を定めている場合、現在の株価と比較して上なのか、下なのかをチェックします。複数の目標株価が引き上げられており、且つ、現在の株価よりも高い水準をターゲットとしている場合は、業績、株価チャート、出来高などを確認し、納得がいけば、ウオッチリストに加えます。レーティングが変わらずに、目標株価だけが変更されるケースは、それも上方向なのか、下方向なのかを確認します。レーティング変化が無くても、ややポジティブなのか、ややネガティブなのかと判断します。
保有している銘柄の目標株価変更も意識しますね。アップサイドが期待されている銘柄なのか、旬が過ぎてダウンサイドの見通しなのか、これも鵜呑みにしませんが、アナリストの方々がどのように見ているのかを参考にします。本来は、理由を示したレポートを熟読して、投資判断に活かしたいところですが、なかなか、情報収集や手間を考えると難しい面もあります。
話は脱線しますが、以前、勤務していた証券会社で、海外のアナリストの方と話す機会がありました。2000年代前半の頃だったと思います。「今後、日本企業でグローバルでも競争力のあるセクターや企業は、何か?」という話題になりました。当時、亀山モデルでシャープも元気でしたし、ソニーも今と異なる元気さがありました。ところが、その方の見解では「自動車産業」とのことでした。
今後、エレクトロニクス産業は、韓国や台湾の台頭があり、日本の競争力は限界がある一方、自動車産業は、当面、競争力を維持できるという意見でした。結果的に、白物家電、半導体、その他エレクトロニクス産業のシェアは指摘の通りになりました。
そのやりとりの際、内外のアナリストの視野の広さの違いを感じました。日本国内のアナリストの皆さんは、組織上、基本的に国内企業に限って、電気セクター、自動車セクターなど限られた業種の中の企業を分析して比較を行っています。グローバル投資に携わる海外のアナリストは、世界の中でどの企業が競争力をもっていて、オンリーワンの存在なのかという視点で企業を分析します。日本国内だけの視点で業種自体が斜陽産業になってしまった場合、その中でマシな企業を幾ら分析しても、グローバルで活躍するトップ企業を見つけることは難しそうですね。
今回は、証券会社の株価レーティングについてコメントしました。私の知見のため、現況と少し、ずれている可能性があることをご承知ください。捉え方によりますが、株価評価は、投資判断の材料になることも事実ですが、くれぐれも目標株価に惑わされないようにしたいものです。
来週は、「含み損銘柄、持っていませんか?」の予定です。
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