今週は、含み損に関するテーマの予定でしたが、急遽、内容を変更します。
次回に延期させて頂きます。
先週末に米国のシリコンバレー銀行(以下、SVB)が破綻し、その後、複数の金融機関の破綻が続きました。今週に入り、欧州のクレディスイスの経営危機が表面化しました。
SVBの危機が伝えられたのが、先週木曜日、翌金曜日には、当該株式の取引は中止され、週末に破綻が確定しました。このように、危機が表面化した際、事態が急変することがあります。当局も迅速な対応だったと思います。
リーマンショックの経緯などを踏まえ、現時点でわかる範囲でコメントしたいと思います。
まず、投資家の立場で、信用不安時に関する私の認識を箇条書きにしてみます。
リーマンショックの際にも感じたことです。
◇信用不安の連鎖が起きることを想定する
◇通常の状態に戻るには一定期間が必要(3ヶ月から半年程度)
◇現金保有を重視する
◇投資ポジションを普段よりも少なめにする
◇金(ゴールド)投資も検討する
◇投資する時は、平時よりも、より慎重に対処する
◇ナンピン(評価損銘柄の追加投資)の場合は、計画的に(予算と投資回数を想定する)
◇ナンピンして肝心な時に資金不足にならないように配慮する
◇他国の信用不安もグローバルに影響を及ぼすと認識する
◇SNSなどを通じた無責任なコメントを重視しない
◇投信の積立、iDeCoは継続する
SVBの破綻は、FRBの急激な利上げの影響で保有債券が値下がりしたことが背景と報道されています。預金に対する有価証券の比率が70%を超過し、金利リスクが高くなっていたようです。ただ、私見ですが、「それなりの金融機関であれば、債券先物や他のデリバティブを使って、金利上昇リスクをヘッジしているのでは?」と感じました。いずれにしても、今後、シリコンバレーのベンチャー企業の資金調達への影響が懸念されます。
信用不安の連鎖についてはどうでしょうか?
SVB破綻は、個別要因なのでリスクは限定的とコメントされる方もいましたが、私の印象では、時間差で他の金融機関に波及するリスクを感じていました。結果、クレディスイスの問題が浮上しました。
リーマンショックは、2008年秋に起きましたが、前年の夏にBNPパリバショックが発生しました。こちらは、サブプライムローンの証券化に絡んだファンドの解約ができなくなるというものでした。その後、不安定な金融マーケットが続きましたが、翌年秋にリーマンブラザーズの破綻に至りました。根っこの問題は解決していなかったため、大きな悲劇につながりました。
以下に2008年から2009年前半のS&P500指数と日経225の月間騰落率を紹介してみます。
SP500 | 日経225 | ||
2008年1月 | -3.48% | 0.08% | |
2008年2月 | -0.60% | -7.92% | |
2008年3月 | 4.75% | 10.57% | |
2008年4月 | 1.07% | 3.53% | |
2008年5月 | -8.60% | -5.98% | |
2008年6月 | -0.99% | -0.78% | |
2008年7月 | 1.22% | -2.27% | |
2008年8月 | -9.08% | -13.87% | |
2008年9月 | -16.94% | -23.83% | リーマンショック |
2008年10月 | -7.48% | -0.75% | |
2008年11月 | 0.78% | 4.08% | |
2008年12月 | -8.57% | -9.77% | |
2009年1月 | -10.99% | -5.32% | |
2009年2月 | 8.54% | 7.15% |
この年は、年初から株価が不安定だったことがわかります。また、ショックの起きた9月は、もちろんなのですが、12月や翌年1月も大きめの下落に見舞われています。ショックの後遺症が残り、半年程度は安定した値動きになることはありませんでした。
また、米国発の危機でしたが、実は日本株にも多大な影響を及ぼしました。実際、9月の下落率は、日経平均がS&P500を下回りました。このように金融市場はグローバル化しており、他国の危機でも相応の影響が出たことがわかります。また、ケースは異なりますが、米国の急激な利上げによって、新興国の通貨危機につながるケースも過去にありました。
それでも、衝撃の大きさの割に、比較的、短期間で落ち着いたのが幸いでした。
当時、運用会社に勤務していましたが、ピーク時は、連日、投信の基準価額が5%超の下落で臨時レポートが頻発していましたね。体感としては、「資本主義が維持できるのか?」というような印象でしたね。
私達を含め、金融業界は、結構なパニックになっていたような記憶があります。
さて、それらを踏まえ、投資家としては、
「Cash is King」という言葉があります。
そのままですが、「現金が王さまです」という意味です。
信用不安や市場がパニックになった際に、手元に潤沢な現金があると、余裕を持って投資できますし、キャッシュ部分は相場変動の影響を受けません。前述の通り、信用不安が生じると一定期間(最低でも3ヶ月から半年位の印象です)、マーケットは不安定になることが多く、投資ポジションを落として、現金化しておくことでいつでも出動が可能となります。通常よりも、投資ポジションを抑え気味にして、急落した際の準備を怠らないようにしたいと思っています。
また、予兆なく信用不安が生じることは、常にあり得ます。今回は、FRBの急激な利上げの副作用がどこかで出ると投資家の皆さんは感じていたように思いますが、思わぬタイミングで発生しました。クレディスイスの信用不安は、かねてから噂になっていましたから意外感はなかったと思います。が、規模が大きいこと、他の欧州金融機関への波及リスクなどを考えると、大事になって欲しくない事象ですね。
この一連の信用不安によって、米国の金融政策が非常に難しくなりました。
来週、22日にFOMCが開催され、先日までは、0.5%利上げ予想がメインでした。
現状は、0.25%、場合によっては、利上げ一時休止という見方もあります。
憂慮するポイントが二つあって、一つ目が、これでインフレ対応が遅れる可能性があること、二つ目は、市場が勝手に都合の良い予想をした場合、0.25%利上げで失望売りが出てくる可能性があること、と感じています。
中央銀行は、物価の安定、雇用の安定を目的に政策金利を決定する訳ですが、金融システムの信用維持ということも重要な目的です。インフレ抑制するために信用不安が加速したら何もなりません。但し、信用不安を払拭するために、利上げ見送りの場合、本来すべきであった利上げ効果が得られない可能性が高まります。か、と言って、信用不安を再燃させることもしたくないはずです。とても難しい政策判断になりますね。
また、市場は、得てして都合の良いように考えますから、利上げ休止を織り込んで、来週に向けてグロース株が上昇したりすると、反動が起きる可能性も高まります。
市場との対話も難しい局面です。
今回の結論としては、
■市場が安定するには、一定の時間が必要
■現金ポジションがとても有効
■信用不安の連鎖がまだある可能性を認識する
■株価急落時に投資する場合は、より慎重に
■FOMCの重要性がより高くなったこと
今回は、信用不安の連鎖にふれましたが、このまま、収束することを期待したいと思います。
次回は、「含み損銘柄、持っていませんか?」の予定です。
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