iDeCoや積立NISAなどの普及によって、各SNSは、どのインデックスファンドが良いのかというようなコメントを見ることが多くなりました。また、「信託報酬が低い方がお得である」というような妙なコメントも散見します。私見を交えながら、株式系インデックスファンドについて考えてみたいと思います。まず、箇条書きでまとめてみます。
◆アクティブファンドと比較して、信託報酬(コスト)が低い
◆信託報酬が低ければ低いほど良いという訳でもない
◆どのファンドを選ぶかよりも、どの指数を選ぶかが重要
◆必要な要件を満たしていれば、インデックスファンドのパフォーマンスに大差はない
◆単一新興国などは、外国人投資規制などによりインデックスファンド設定が困難
◆指数によっては、インデックスファンド自体が無い
◆ETFとの違いは?
◆日本株インデックスファンドにも優位点はある
◆個人的に選ぶなら?
■アクティブファンドと比較して、信託報酬(コスト)が低い
事実です。
アクティブファンドは、ストラテジストやアナリストが市場や企業を分析し、より高い収益機会を探すことで、市場を上回るリターンを目指すという商品設計です。従って、人件費を含めたコストがかかります。一方、インデックスファンドは、市場に連動させることが目的なので、アナリストの分析は不要で低コストですが、市場を上回るリターンは望めません。
■信託報酬が低ければ低いほど良いという訳でもない
上記の通り、アクティブファンドと比較すれば、インデックスファンドは低コストで運営できます。しかし、インデックスファンドとは言え、システム投資やメンテナンス・コストはかかります。数年前から、インデックスファンドの低コスト競争が繰り広げられましたが、適正水準を大きく下回ると、何らかのしわ寄せが生じてくるかもしれません。
■どのファンドを選ぶかよりも、どの指数を選ぶかが重要
以前のブログでも触れましたが、インデックスファンドは、参照インデックス(株価指数)に連動することを目的としています。
従って、個別のファンド選びよりも、どのインデックスを選ぶかの方が大事です。
冴えない指数に連動するインデックスファンドは、結局、冴えないパフォーマンスになりますし、上昇している指数に連動するインデックスファンドは、好調なパフォーマンスになります。
尚、個別ファンド選択は、良いアクティブファンドを探すよりも難易度は高くなく、チェックポイントは、一定水準の残高があること(償還リスクや運営コスト)、アクティブファンドを含めた運用実績のある運用会社(様々なノウハウがある)のファンドを選択すること位だと思います。アクティブファンドと異なり、基本的には大差はありません。敢えて言えば、運用レポートに優劣があること位です。
代表的なインデックスファンドが揃っている三菱UFJ国際投信のe MAXIS slimのパフォーマンスを見てみます。
2023/2/28現在 | 騰落率(%) | |||||||
基準価額 | 純資産(億円) | 過去1ヶ月 | 過去3ヶ月 | 過去6ヶ月 | 過去1年 | 過去3年 | 設定来 | |
全世界株式(除く日本) | 17283 | 2,166 | 2.7% | 0.7% | 1.3% | 8.7% | 60.0% | 72.8% |
国内株式(TOPIX) | 14,657 | 641 | 0.9% | 0.6% | 2.8% | 8.3% | 41.2% | 46.6% |
国内株式(日経平均) | 12,799 | 271 | 0.5% | -1.7% | -1.3% | 5.6% | 36.7% | 28.0% |
先進国株式 | 20,432 | 4,105 | 3.5% | 0.8% | 1.9% | 10.0% | 66.1% | 104.3% |
米国株式(S&P) | 19,213 | 18,163 | 3.7% | -0.9% | -1.1% | 8.6% | 73.3% | 92.1% |
新興国株式 | 12,372 | 1,008 | -3.0% | -0.1% | -3.3% | 0.1% | 24.3% | 23.7% |
各ファンドのパフォーマンスが異なることがわかります。各指数のパフォーマンスが異なりますから、当然と言えば当然ですね。各期間でトップパフォーマンスのものをボールドで表記しています。尚、設定来の数値は、各ファンドの設定時期が異なるため、単純比較は難しく、参考程度に見てください
■必要な要件を満たしていれば、インデックスファンドのパフォーマンスに大差はない
上記の通り、指数に連動することを目的にしますから、どのファンドも近似したパフォーマンスになります。但し、トラッキングエラー(指数との乖離)やオペレーションリスクなどを考えると、大手運用会社の商品が安定しているようには感じます。
■単一新興国などは、外国人投資規制などによりインデックスファンド設定が困難
新興国の中には、外国人に対する株式投資の規制がある国やインデックスファンドのオペレーションには欠かせない先物市場が整備されていないケース、流動性の低い銘柄が多いインデックスのケースなどがあり、例外を除いてインドやブラジル、中国などの単一国に投資できるインデックスファンドはありません。複数国に投資する新興国インデックスファンドはありますが、新興国の中でも代表的な流動性の高い銘柄が各国から選ばれています。現状では、単一国に投資するインデックスファンドを設定することは、なかなか難しいようですね。
■指数によっては、インデックスファンド自体が無い
以前、取引先の日系大手運用会社の方と質疑をしました。
趣旨としては、当時、日本の小型株が非常に好調にも関わらず、東証マザーズやジャスダック市場のインデックスファンドが無い理由を確認するものでした。
基本的に、インデックスファンドは、日々、設定解約に応じ、売買を行います。従って、流動性の乏しい銘柄が多い指数の場合は、インデックスファンドを設定することが難しいとのことでした。また、オペレーションをサポートする先物の存在の有無も影響すると思われます。
■ETFとの違いは?
前述の通り、東証マザーズのインデックスファンドは、今のところ、見かけません。(存在していたらすみません。)一方、マザーズのETFは、東証に上場しています。また、米国市場には、新興国各国の株式ETFも上場して取引ができます。
この違いは何でしょうか?
投資家の立場では、大きな違いがありませんが、ETFの場合は、裏付け資産が事前に確保されており、対象銘柄をインデックスファンドのように売買する必要がないからと考えます。
大きな箱の中にインデックス組み入れ銘柄が比率通りに納められ、その箱自体が売買されるイメージだと認識しています。
■日本株インデックスファンドにも優位点はある
日本株は、純資産残高を見てもあまり人気がありません。成長性や高齢化、閉塞感などが背景と思われますが、日本株インデックスファンドの最大のメリットは、時差がなく、基本的に株価が上昇、下落していることを確認してからでも、売却注文、買付け注文を出せることだと思います。(15時のクローズ時間直前まで発注可能です)
また、指数に連動しますから、日経平均が1%上昇していれば、ファンドも概ね同水準の上昇が期待できます。概算ですが、解約時に損益を推定できますね。海外に投資するインデックスファンドだと、時差の関係で価格変動リスクを負うことになりますし、為替リスクも常に影響を及ぼしますので、日本株ほど事前に損益が正確にはわかりません
明確な理由で急落した場合や売られすぎの局面などでは、短期的なリバウンドを期待して投資を検討しても良いかもしれません。
■個人的に選ぶなら?
最後に私のスタンスです。
私の好みとしては、コア(メイン)のインデックスファンドは、できるだけ幅広く分散されているものを選択しています。具体的には、全世界株式(日本除く)です。
全世界株式と言いながらも、米国のウエイトが高いのが実態です。もちろん、米国は投資対象として非常に魅力的なのですが、単一国だとどうしても、政治リスクや為替リスク、地政学リスクなどがダイレクトに影響します。今年も米国株式は本調子ではありませんが、欧州株は最高値を更新していたりします。また、新興国が非常に好調なケースもあります。幅広く投資することで、調子の良い地域の貢献度は薄まりますが、また、好調な地域もタイミングで変化していきます。世界経済が成長すれば、企業活動を通じて、株価の上昇が期待できるのは、単一地域と同様です。大勝ちはありませんが、大負けもない指数だと思います。個人的には、積立NISAやiDeCoなどの長期積立投資は全世界株式。それと別枠で米国株式や新興国株式への投資を考えるスタンスです。
理想を言えば、インド株式やマザーズ指数のインデックスファンドがあると良いと思いますけれど、
次回は、「インデックスファンド(債券編)に思うこと」の予定です。
当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。
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