私なりの信用取引の活用法

 

信用取引は、証券会社から融資を受けて株式を買建てしたり、株式を借り売建てしたりして、保有資産の約3倍程度まで、レバレッジ(テコ)をかけることができる取引です。幾つかの決済期限が設けられており、当日中、6ヶ月などの期限までに取引の決済が必要となります。また、買建てだけでなく、売建て(下がると儲かる)ができるのも特徴です。

 

一方、現物取引は一般的な取引で、証券会社にある現金の範囲で取引すること、決済期限が無いことが特徴です。

 

金融機関勤務だと、信用取引を行うことはできません。

私は、昨年、デビューしましたが、振り返ってみると、我ながら、散々な成績です。

 

今回は、信用取引の留意点と個人的に使えると思ったアプローチを紹介したいと思います。

 

 YouTubeなどの媒体では、信用取引を通じて、金融資産を大きく伸ばした方のコメントなどを見ることがあります。事実だとは思うものの、安定して勝つことの難易度はかなり高い印象です。

 

 ネット証券では、信用取引が30万円程度から開始でき、敷居がかつてと比較して大幅に低くなりました。だからと言って、簡単に利益を上げられる程、簡単ではありません。株価が上昇している良い環境で成功しても、持続性があるかどうかは別問題です。特に、レバレッジを高めて、リスクを取った場合、良い環境では素晴らしい成果につながりますが、流れが逆流すると一発退場のリスクも高まります。

 

信用取引をするに当たり、常に意識しておきたいのが、①保有期間、②ロット(建玉)の大きさ、③当初金額でしょうか?

 

初めて信用取引を開始する場合、当初金額は少なめの方が妥当だと思います。

ダメージを受けても、致命傷にならない金額を念頭に置きたいものです。

うまくいった場合に金額を増やすイメージですね。

 

保有期間に関しては、短い順に①スキャルピング(数円から数十円の値幅で決済)、②デイトレード(当日中に決済し、翌日まで持ち越さない)、③スイングトレード(翌日以降に持ち越し、数日、数週間保有する)という言い方がされます。

 

現物取引以上に損失確定が重要になりますので、ある程度、事前にうまくいかなかった場合の損失確定の水準を決めておきたいところです。意外に発生してしまうのが、デイトレードのつもりが、値下がりしたため、翌日以降に持ち越すケースです。結果的にうまくいくこともありますが、あくまでも結果論で、当日の決済をしておきたいところです。(デイトレード前提の取引の場合)

 

ロットに関しては、限られた銘柄に集中して勝負するケース、複数の銘柄で勝負するケースなどがあると思いますが、可能であれば、代用有価証券や現金担保の金額の範囲におさめることが好ましいように感じています。(翌日まで持ち越す前提です)あくまでも、リスク管理上の視点ですが、急落が起きた際の対応を考えると、投資枠の限界まで投資するのは、危険度が高い印象です。翌営業日に持ち越さず、取引時間中に枠を消化することは、特に問題ないと思います。

 

 仮に100万円の担保(掛け目は考慮しません)の場合、約300万円まで信用でポジション構築が可能です。但し、損失が100万円を超えて決済した場合、担保の金額では不足し、追加に資金を投入する必要が生じます。仮に300万円が全損の場合、200万円の追加が必要となります。現物の場合は、投資額が最大損失ですから、この点が大きく異なりますね。

買建ての場合は、最大損失は建玉(信用取引の残高)の金額ですが、売建ての場合(空売り、ショートとも言います)、損失は理論上、無限大になります。安くなると思って、空売りした銘柄が急騰を続けた場合、損失がどこまで膨らむか、わかりません。(高くとも買い戻しする必要があります)それを防止するには、基本的に翌日に持ち越さない、薬品株や小型株(何らかの理由で急騰する可能性がある)などの空売りは避けるなどが考えられます。

 

投資格言に「買いは家まで、売りは命まで」という恐ろしいものもあります。

信用取引を例えた格言ですが、改めて、肝に銘じておきたいところです。

 

能書きが長くなりました。

では、わずかですが、個人的に有効に感じるアプローチです。

 

◆現引き(品受けとも言います)

 

買建てした株式を決済するときに反対売買により差額決済をするのではなく、現金で株式を引き取ることです。

 

証券会社の営業現場で良く目にしていたのは、期日(6ヶ月など)に近づいても含み損で決済しにくい状態の銘柄を現物に振替えるという光景でした。この場合、現引きすることで、新たに現物の含み損が生じ、代用有価証券の評価が下がることで、信用取引の余力も減少します。

 

寧ろ、信用取引でうまく上昇した場合に一部を現引きし、代用有価証券に振替えるという手法の妥当性が高く感じます。振替えした際に代用有価証券の含み益が生じ、余力も大きくなります。また、現物であれば、期日を意識すること無く、継続保有が可能となります。信用取引で反対売買による実現益を出さずに、含み益にシフトするとも言えますね。税金負担も考慮すると、状況によっては、有効な作戦になるかと思います。

 

 

◆つなぎ売り(現物保有銘柄を信用で売建てすること)

 

前述の通り、空売り(現物保有せずに売建てすること)すると、最大損失は無限大になります。

現物を保有している場合の同一銘柄の売建てはどうでしょうか?

 

現渡し(品渡しとも言います)とは、売り建てた株式を決済するときに買い戻しにより差額決済するのではなく、手元にもともとある、またはほかの方法で取得した同銘柄・同株数の株式を差し入れて決済することです。

 

仮に売建てして、株価下落の場合は、反対売買(買い戻し)することで差益が確保できます。

 逆に、売建てした銘柄が上昇してしまった場合の対処方法としては、現渡し(品渡しとも言います)という手法があり、信用の売建ての約定代金で現物を売却したことにできるやり方です。もちろん、売建てした銘柄が上昇した場合、①反対売買で損失確定する、②現渡しすることで損益を確定するという選択肢に考えられます。

 

例1)1,000円の銘柄を売建て(つなぎ売り)して、950円になった場合

 

  • 950円に下落⇒信用取引で買い戻しすることで50円の差益が確保できる
  • 950円に下落⇒現渡して1,000円での売却代金を受け取る

 

例2)1,000円の銘柄を売建て(つなぎ売り)して1,100円になった場合

 

  • 1,050円で買い戻しして、損失を確定する
  • 現渡しして、1,000円での売却代金を受け取る

 

相場がボックス圏で推移する場合や当面、下落が続きそうな場合、行き過ぎた急騰の場合などにチャンスがあるかもしれません。ベテランの方は、うまく活用されているようですね。

 

 現物が含み益の状態の時に有効かと思いますが、仮に含み損の状態でも、先々、大きな下落が想定されるケースなどでは、現物を売却して現金化する手法だけでなく、信用でつなぎ売りを行う手法も選択肢として考えられますね。

信用取引は、現物取引と異なり、現物に投資する現金を用意する必要はありません。

差金決済ですから、損金の充当できる現金があれば十分とも言えます。

 

 但し、大きな損失が出た際の損金充当する現金、現引きする際の現金の確保は意識しておきたいものです。特に大きな損失が出た際には、現物を売却して損金に充当する必要が生じたりします。また、含み損の銘柄を現引きするために、現物を売却したりすると、ポートフォリオがグチャグチャになりかねません。

 

 また、現物取引は、基本的に買い目線で銘柄を見ることがほとんどだと思います。が、信用取引の場合は、(うまくいくかどうかは別として)売り目線でも見ることができるのが特徴です。売建ては、買建て以上に難しい面がありますが、上手に活用すると威力を発揮する局面もあるかと思います。空売りはともかく、つなぎ売りは作戦として考えておきたいところです。

 

いずれにしても、あまり、うまくいっていない投資家が語っても、説得力はありませんね。

 

次回は、「投資戦略~ダウの犬~」の予定です。

 

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