新築マンション高騰はまだ、続く?-前編-

 

今回は、新築マンション価格高騰の話題です。

思ったよりも、ボリュームが多くなったので、今週と次週にわたってコメントします。

 

 先日、不動産経済研究所の発表で、7月の首都圏新築マンション1戸当たりの平均価格が、前年比60%強上昇し、9,940万円になったと報道されました。更に、東京23区に関しては、84.8%上昇、1億3,340万円となり過去最高となったそうです。近畿地方では、4.1%上昇、5,188万円です。

 

 今回は、マンション価格上昇の持続性について、国内要因とグローバル要因に分けて考えてみたいと思います。人口減少が進む日本にもかかわらず、新規住宅の供給が増加し続けており、そんな中での価格高騰は違和感があります。今回のマンション価格上昇が過去の不動産バブルと異なる点のひとつに、海外投資家の存在が指摘されています。相対的な割安感(ロンドンやNY、香港と比較して)や円安で投資しやすい環境になったこと、地政学リスクが小さいことなどの理由が考えられます。こちらに関しては、次週、コメントします。

 

まず、今週は、国内の構造的な要因を思いつくまま、確認してみます。

もちろん、漏れがあるかもしれません。その点は、悪しからず。

 

■人口減少

■一極集中の加速

■郊外から中心部への人口動態移動

■高齢化の進行

■税金対策(相続税)

 

 

■人口減少

 

もちろん、不動産全般に対して、ネガティブ要因です。

 

我が国は人口減少が進行しています。特に地方が顕著です。

一方、新築マンションだけでなく、戸建て住宅の供給も増加が続きます。当然、人口や世帯数が減少する中で、住宅の供給増加、総住宅戸数が増加している訳ですから、空室率は増加しますね。過去の不動産バブルが全国に波及した一方、今回の不動産価格上昇は、性格が異なり、地域も物件も限定されたものになる可能性が高いと感じています。

実際に東京23区でも、利便性の高い都市部の新築マンションの上昇が目立つ一方、郊外の物件の上昇は限定的なようですし、戸建ては、上昇が見られないようです。

 

 

■一極集中の加速

 

都市部にはポジティブ要因、地方や郊外にはネガティブ要因です。

 

前項とも関連しますが、日本国内で人口減少の中、都市部への流入が加速しています。その結果、地方での人口減少も加速しています。生活に関する利便性や賃金格差、インフラなどを考えるとやむを得ないと思われます。不動産需要の視点で捉えると、今後、都市部と地方の価格格差はより拡大すると想定されます。現実に都市部で生活する世帯が、地方の実家を相続した場合、売却を希望するケースが多いようです。このように、構造的に都市部の不動産の需要は安定し、地方の需要は減少していく傾向が続くと考えられます。首都圏、近畿圏、東海圏だけでなく、北海道なら札幌、東北なら仙台、中国なら広島、九州なら福岡と人が流入する中核都市が明確になってきています。

 

 

■郊外から中心部への人口動態移動

 

都市部の中心部にはポジティブ、郊外にはややネガティブです。

 

お屋敷街と呼ばれるような高級住宅街の戸建てから、より利便性の高い中心部のマンションへのシフトも進んでいます。都内でも田園調布や成城学園と言った高級住宅地が相続などによって売りに出されるケースが多くなっているようですね。核家族化、高齢化、ライフスタイルの変化が進展することで、大きな戸建てよりも、コンパクトで利便性の高いマンションのニーズが高まってきています。

 

 

■高齢化の進行

 

マンションにはポジティブ要因です。

 

都市部では、高齢者免許返納の話を聞くことが少なくありません。当然、返納するためには、交通の利便性の良い地域に居住する必要があります。郊外の戸建てを売却し、中心部のマンションに引っ越すケースもよく耳にします。バリアフリーや戸締まりなどの負担も戸建てよりも最近のマンションの方の利便性が高いのは言うまでもありません。また、複数の知人のケースでは、地方在住の両親を都市部の自宅近郊に呼び寄せ、介護退職のリスクを軽減されている話も聞きます。一定の資産保有が前提かと思いますが、高齢者の都市部回帰の傾向も続きそうですね。バリアフリーや戸締まりの負担軽減、買い物、医療施設の有無なども考慮されそうです。別の知人は、子供達が独立した後、郊外のファミリータイプのマンションから都心部のコンパクトな間取りのものに引っ越したそうです。ライフサイクルに応じたニーズの変化ですね。

 

 

■税金対策(相続税)

 

ポジティブ要因です。

 

いやらしい話ですが、現金や有価証券で資産を保有するのと不動産として資産を保有するのでは、相続税の課税評価が異なります。不動産の場合は、路線価や固定資産税評価額での評価になり、基本的には時価よりも低くなる傾向があります。それに加えて、様々な特例もあり、現預金や有価証券で保有するよりも相続税課税評価の面では有利になるケースが多く存在します。この点は、マンションも戸建ても同様ですが、大きな金融資産を保有されている方などは、検討の余地があるかもしれません。

 

以前のブログでご紹介したとおり、海外では相続税が課されない国もあり、日本の税制に基づいた不動産評価は、ややいびつな構造になっているようにも感じます。

 

 

以上のように、国内要因だけを見るとネガティブなものも少なくありません。

但し、高齢化やライフスタイルの変化から、利便性の高いマンションのニーズが今後も高止まりする可能性が高いと思われます。あくまでも、利便性が高いことが条件ですね。

 

 

次にグローバルな視点で日本の国内マンションを見るとどうでしょう?

以下の論点が考えられます。

 

■相対的な不動産価格の水準

■円安

■不動産価格や株高による資産効果

■相対的な地政学リスクの水準

■コロナの渡航制約解除による外国人の賃貸ニーズ

 

来週は、グローバルな視点で上記項目を確認してみたいと思います。

と言うことで、次回は、「新築マンション高騰はまだ、続く?」後編の予定です。

 

 

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