最近の円安を考える

 

 

今回は、最近の米ドル円の為替について考えて見たいと思います。

ご存じの通り、円安が進行し、一時、150円近辺まで米ドルが買われました。

 

やや強引ですが、期間別に為替の変動要因をまとめてみると

 

■短期:二国間の金利差

■中期:経常収支の動向(貿易収支)

■長期:購買力平価(物価)

 

おおよそ、上記のことが言えると思います。

最近の動向は、日米の金利差拡大の要因が大きいと感じています。

 

一つずつ、確認してみます。

 

 

■二国間の金利差

 

短期の資金動向に大きな影響を与えます。

 

端的には、金利の高い通貨に資金が流れやすい傾向のことです。

 

ご存じの通り、米国でもインフレが深刻化しており、ファーストフード店の平均時給が3,000円を超えたり、NYの大戸屋のホッケ定食が5,000円を超えたりしているようです。

FRBは、インフレの沈静化を目指し、利上げ継続しています。

 

米ドルは基軸通貨とは言え、自国優先の金融政策ですから、他国に影響を及ぼすことは少なからず、あり得ます。米国が利上げを継続すると、他国の通貨安が生じやすくなり、輸入物価が上昇します。結果として、他国にもインフレが波及し、利上げを余儀なくされる傾向が出てきます。

 

逆にこのような為替変動を避けるために為替を連動させる「ペッグ制」という政策をとる国もあります。

 

香港、中東の産油国、かつての東南アジア諸国などが該当します。

金融政策(利上げや利下げ)を基軸通貨国の米国に連動させることで、為替変動を避ける政策です。但し、自立的な金融政策をとれないため、利上げしなければいけない局面でも利下げせざるを得なかったりする矛盾が生じるリスクがあります。

 

 

■経常収支(貿易収支)の動向

 

経常収支の黒字国(貿易収支の黒字国)の通貨は高くなりやすい傾向のことです。

輸出が輸入を上回っているのが貿易収支黒字という状態ですが、言い方を変えると、自国通貨の支払いよりも、外貨の獲得の方が大きいことを意味します。外貨を獲得してそれを自国通貨に変換することで自国通貨高になりやすいという構造です。

 

もちろん、近年は企業の為替のオペレーションが多様化し、単純に外貨を自国通貨に転じることは無くなりましたが、大枠では、この傾向が継続していると思います。

特に新興国の場合は、経常収支赤字国の通貨は弱い傾向が強く、通貨安を防ぐために金利を高めに維持する傾向が見られるように感じます。

 

 

■購買力平価(物価)

 

これは、金利とも深く関係しますが、為替においても一物一価の法則がある程度、生じるという考え方です。

物価ありきで、為替が物価にあわせていくという趣旨です。

 

米国で1ドルのハンバーガーが日本では100円で買えるとする時、1ドルと100円では同じものが買える(つまり1ドルと100円の購買力は等しい)ので、為替レートは1ドル=100円が妥当とする考え方です。

 

全ての財、サービスが自由に貿易できることが前提となりますので、やや現実的ではありません。

 

但し、こちらも長期的に大枠での方向性は妥当で、物価上昇率の高い国の通貨が減価(値下がり)しやすい根拠となっています。新興国通貨でも、見た目の金利(名目金利)が高くても、為替で大損することが発生するのは、このような背景です。

 

 

さて、現状はどうでしょうか?

 

現在の円安米ドル高の背景には、米国が利上げ継続、日本がなかなか利上げできないという構造が背景にあると考えられます。日本も利上げすれば良いのでしょうが、国債の利払い増加、企業や個人の借り入れの返済負担増などから、なかなか、日本銀行も踏み切れないでいます。

 

為替の介入などは、一時的な効果はあっても、解決策にはなり得ません。

米国の利下げを待つほかないのでしょうか?

 

ここからは、更に個人的な見解となりますが、

短期的な解決策ではありませんが、構造改革で利上げに耐えうる経済にしてゆく必要があると感じています。

 

人口減少の中、持続的な経済成長が難しい面は否定できませんが、過去最高の税収の現下、消費税減税や石油揮発税の見直し、配偶者控除の見直しとセットでの所得税減税などに取り組む必要があると思います。日本の税制は、現在の経済や生活様式に必ずしも、マッチしていない面も多く、海外の優秀なビジネスパーソンを呼び込むためにも、国際競争力のある税制への転換が必要だと思います。以前、耳にした外資系企業の高級幹部のコメントに「相続税が高いので日本では死ねない」というブラックジョークがありました。海外の半導体企業の日本進出の話題もある中、税制改革をして筋肉質な経済構造に変化させていって欲しいものです。

 

 

「通貨高で危機に陥った国はない」という格言があります。

 

色々な解釈があると思いますが、通貨高は通貨政策で対応が可能ですが、通貨安は経済的な裏付けがないと回復が困難であると理解しています。一旦、通貨安になると、輸入物価が上昇し、自給率の低い国には、厳しい負担となります。また、為替を安定させるために、望まない利上げの可能性も高まります。外貨建て負債があると、通貨安で負債が膨らみ、財政悪化も加速します。結局、通貨安には特効薬は無く、時間がかかっても、経済のファンダメンタル強化が必要だと感じています。

後半部分は、全くの私見ですので、ご承知ください。

 

次回は、「悲惨指数(ミザリー・インデックス)」の予定です。

 

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