早いもので、今年も残すところ、僅かとなりました。
今回は、有価証券(株式、投信など)の譲渡益の損益通算についてコメントします。
SNSなどを見ていると、結構、誤解されている方もいるようなので、まず、基本的な情報を確認します。
有価証券の課税は、分離課税で、暦年の利益に対して、20.315%が課税されます。(2023年現在)
あくまでも、利益に対しての課税です。
また、対象期間は、約定ベースではなく、受け渡しベースとなります。
今年(2023年)で言えば、12月29日が最終売買日ですが、受け渡しベースでは、12月27日が譲渡損益通算の最終日となります。うっかりすると、翌年の対象になりますので、注意が必要ですね。
所得税は、累進課税ですが、有価証券の譲渡に関しては定率の課税です。
また、分離課税ですから、他の所得と合算されないメリットもあります。
損失の場合は、分離課税のため、他の所得と合算できませんが、有価証券売買における損益通算が可能です。また、確定申告が毎年、必要になりますが、譲渡損を3年間、繰り延べすることができます。譲渡損と配当の損益通算も可能です。こちらも確定申告が必要となりますけれど。
うまく、譲渡損失を計上することで、税金面ではメリットが生じることとなりますね。
前述の通り、有価証券に対する課税は、利益に対するものですから、年末にかけて、不本意であっても、損失確定することで、利益の圧縮が可能になります。
今年、大きな実現益を出した方が、含み損を抱えている場合、私ならば、損失を確定することで、課税対象利益の圧縮を図り、課税額を小さくすると思います。税金の観点からは、含み損のまま、越年するのは、もったいないように感じます。
取引証券会社の口座情報を確認することで、現在までの暦年の損益が確認できます。
尚、NISAに関しては、損益通算ができません。
個人的には、NISA口座の銘柄でも見込みが外れたものは、機会損失の観点で、損失確定で現金化して、新たに仕切り直ししたいスタンスです。
この前提で幾つかの作戦が考えられます。
例えば、前述の通り、現在まで累積でプラスの場合、年末に向け、含み損銘柄を実現損にすることで、課税対象を減らすことができます。無理に損失確定をする必要は無いと思いますが、保有している銘柄で含み損のものがあるのなら、累積のプラス金額と含み損の金額を比較して、損失確定することも検討できますね。
例)20%の税率に簡易化した損益通算の事例です。
累積利益:10万円⇒この時点で約2万円が税金となります
評価損:▲5万円⇒損失確定し、実現損にすると
新たな累積利益:5万円(10万円+▲5万円)⇒約1万円の税負担に圧縮できます。
大きな実現益を確保できた場合、税金もそれなりの金額になります。
最近の株価低迷で含み損の銘柄もあるかもしれません。その際、銘柄を選別の上、損失確定して利益を圧縮することも一案です。
尚、その銘柄がお気に入りの場合や継続保有したい場合は、売り切りではなく、翌営業日以降に買い戻しすることで、基本的には取得価格を下げることができます。(短期的に急騰した場合は考慮しません)
一旦、損失確定してから、買い直して、簿価(取得価格)を下げるということです。
また、累積で実現損益がマイナスの場合でも、確定申告をする前提で、含み損銘柄を損失確定し、来年以降に損失を繰り延べすることも、検討の余地があるかもしれません。
投資家の立場では、実現益と含み益の両方あるのが好ましいに違いありませんが、実現益がなくとも、含み益が増加し、資産全体が伸びることが理想に感じます。
税務面で見ると、含み益の段階では、課税されませんから、利益の繰り延べ効果が生じます。
逆に、損益通算のための売却が多くなると、銘柄によっては需給の影響を受け、適正株価よりも安くなることも考えられます。新規の投資のチャンスと捉えることもできるかもしれません。
以上をまとめてみます。
■有価証券譲渡課税は、利益に対してかかる(年末の対象期間には、要注意)
■利益を圧縮するための損失確定も税金対策としては有効
■確定申告が必要ですが、配当との合算、譲渡損の3年間の繰り延べも可能
■NISAでは、損益通算ができない
■損失確定した銘柄を翌営業日以降に買い戻しすると、取得価格が下がる
■年末にかけて、損失確定で下落する銘柄は、投資チャンスがあることも
尚、個別の税務に関しては、税理士の方など専門家にご相談ください。
また、言わずもがなですが、投資は自己責任で宜しくお願いします。
次回は、「最近の決算直後の株価急落について」の予定です。
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いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。
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