インフレと預金の関係

 

 日本では、預金神話と申しますか、「預金は基本、安全だ」という感覚の方が多いように感じます。

 

確かに預金保険機構があり、元本1,000万円までは保証されますし、破綻がなければ、所定の金利が獲得できます。但し、あくまでも名目ベースのお話です。

 

というのは、インフレ(物価上昇率)を考慮しないと、実質、目減りするケースが考えられるからです。言い方を変えると、名目ベースでは安全、安心。しかし、実質ベースでは、そうでもないと指摘できます。

 

極端な例ですが、

 

利が1%、インフレ率が3%だとすると、1年後の価値は

 

預金:100万円→101万円

財:100万円→103万円

(預金)-(財)=▲2万円

 

ということで、購買力が減じてしまうことになります。

 

「インフレ率よりも、金利が高ければ良いのでは?」という声も聞こえてきそうですが、基本的に金融機関の預金はインフレ率を下回りますし、中央銀行の政策金利もインフレ率を下回るケースがほとんどです。また、銀行の融資の金利よりも預金の金利の方が低くなります。(銀行は、利ざやが収益源ですから、当然ですよね)

 

見た目の金利は、名目金利と言います。インフレを考慮していない金利ですね。債券投資でも同様です。

 

一方、実質金利というものもあり、こちらは、名目金利からインフレ率を引いたものになります。インフレ考慮後の実質的な金利という位置づけです。

 

先程の例の預金金利が1%、インフレ率が3%のケースだと

 

名目金利:1%

実質金利:▲2%(1%-3%)

 

ということになります。

確かに金利は確保できますが、購買力自体は、インフレの影響で減じてしまいます。

 

より具体的な事例で言うと、

2024年2月現在の三菱UFJ銀行の1年もののスーパー定期の金利は、0.002%です。

一方、2023年12月の日本の消費者物価指数(総合)は、鈍化したとは言え、2.6%でした。

 

定期預金の期間と同じ1年間、今後も同水準が続くかどうかは別として

ほぼ、年間2.5%強の貨幣価値減少となりますね。

 

デフレの場合は、どうでしょうか?

 

実は、デフレ経済は、あまり良いことがないのですが、インフレ率がマイナスの場合、貨幣価値が上昇します。

 

物価が▲2%の場合、預金金利がゼロでも、購買力は上がりますね。

 

預金:100万円→100万円

財:100万円→98万円

(預金)-(財) =2万円

 

デフレ時代、ゼロ金利と言っていても、実は、預金者にはありがたい状態だったのです。

逆に借入れを行っている方にとっては、金利が低くても、貨幣価値(借入れの実質価値)が上昇するため、借入金額も実質、上昇してしまいます。

インフレ時は、貨幣価値が下がるので、借り入れを行うには良いタイミングとされています。

名目の借入れ金利と物価上昇率のバランスです。

 

 

さて、それでは、インフレ時の預金対応に作戦はないのでしょうか?

 

インフレは貨幣価値が下がるので、実物である不動産やゴールドが良いとされています。

一面、正しいのですが、人口減少の日本で不動産が継続的に有利かという点や価格変動が起こる点などから、安定や安心を求める性質の資産を全て投資するということになると疑問が生じます。

 

と言って、株式や投資信託という商品も相場変動の影響を受け、良い時ばかりではありません。一定程度は、保有しておきたい金融商品ではありますけれど。

個人的には、「預金の他は、それだけでも良いかな?」と思っています。

 

 

で、具体的な作戦です。

宣伝するつもりはありませんが、

 

以前、個人的にも投資したことがあるのですが、銀行や証券会社で購入できる「個人向け国債」という面白くない商品?が預金代替になり得ると思います。

解約の手続きや制約などから、普通預金と同等の利便性は望めませんが、定期預金の代わりにはなるかと思います。

 

個人向け国債窓口トップページ : 財務省 (mof.go.jp)

 

個人向け国債には、変動金利の10年債、固定金利の5年債と3年債があります。

直近の発行条件は、変動10年債が0.49%(税引き前)、固定5年債が0.25%(同)、固定3年債が0.05%(同)です。金利水準は、前述の定期預金よりは、高い水準ですね。

とは言え、インフレ率を考えると十分ではありません。

 

この中で、変動の10年債のクーポン(金利)は、最低金利保証(0.05%)がある上で、半年ごとに金利が見直しになります。金利上昇局面では、金利の見直しがメリットになります。

物価上昇分をカバーできる訳ではありませんが、預金指向の方には、検討の余地があるかもしれません。

 

物価上昇局面では、金利も上昇することが多いですが、基本的には物価上昇率を下回ります。

預金だけでなく、有価証券などを含めて、バランス良く資産分散することが、インフレ対策になると感じています。

 

 

次回は、「新NISAランキングを見た感想」の予定です。

 

 

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