今回は、含み損を確定する「損切り」についてのコメントです。
損失を確定する訳ですから、精神的にも苦痛が伴う作業となります。
以下は、特に個人の投資判断が重視される分野ですので、自己責任の原則をお忘れ無きようお願いします。
「損切り」については、様々な意見がありますが、個人的には、ある程度、必要であるという立場です。何点か論点を整理してみます。当然、違う意見があることもご承知ください。
◆何故、損失確定が必要か?
◆どういう銘柄の場合、損失確定をしたら良いのか?
◆どの程度の水準で損失確定を考えたら良いのか?
◆信用取引の場合
◆過去の事例
◆何故、損失確定が必要か?
日々、経済環境や個別企業の事業環境は変化していきます。
それに伴い、株価は上下し、悲喜こもごもの様相を呈します。
企業の株価は、一定のレンジ(値幅)の中で推移することもあれば、上昇トレンドで高値を更新していくこともあり、逆に下落トレンドで安値更新することもあります。
株価は変動することからも、理由はともあれ、投資判断の間違いはつきものです。
ある意味、「損切り」は、間違いを修正する投資行動と言えると思います。
損切りして、株価が戻るケースもありますが、半分以下になってしまうケースもあります。半分以下になった場合、結構なダメージを負いますね。株価が半分になった場合、簿価に回復するためには、100%の上昇が必要となります。また、回復できたとしても、多くの時間が必要になることが多い印象です。
一度、損失確定してから、再投資するかどうかを検討すると良いと言われていますね。
また、含み損の状態を一旦、忘れて、新規に投資するという前提で、その銘柄が魅力的かどうか考えてから、投資判断すると良いとも言われています。
◆どういうケースの場合、損失確定をしたら良いのか?
なかなか、難しいところで、一概には言い切れません。
但し、日経平均やS&P500といった指数が上昇しているのに、保有株が冴えない展開で含み損が拡大しているような時は、損失確定を検討した方が良いかもしれません。
株価指数全体が下落している場合、多くの銘柄が下落します。
優良銘柄も例外ではありません。金融危機や経済危機という極端なリスクオフの場合は、それら銘柄でも、危機回避の意味あいで損失確定の候補になるかもしれませんが、基本的に全体相場が下落している場合と個別銘柄だけが下落している場合を分けて考えた方が良いと思います。全体相場が下落している場合は、追加投資(ナンピン)が有効になるケースもあります。
当然、全体相場が堅調な展開にも関わらず、投資した銘柄が下落している場合などは、損失確定を検討するタイミングかと思います。投資理論では、「株価は全ての情報が織り込まれており、短期的には過大評価、過小評価となるものの、長期的には企業価値に収斂する」という考え方があります。従って、何らかの売られる理由が潜在的にあるのかもしれませんね。
好調な企業決算を期待して投資したのに、期待外れの決算で株価が下落したケースなどが、損失確定も視野にはいると思います。投資の前提条件が崩れた時は、一時撤退することを私は考えます。
現在、私も日本株で複数銘柄が損失確定リストに入っています。
◆どの程度の水準で損失確定を考えたら良いのか?
この判断もまちまちですね。
私の場合は、全体相場が下落したケースを除くと、▲10%程度の含み損の状態から損失確定を視野に入れるイメージです。▲20%になったら、具体的な投資行動を検討します。
前述の通り、▲50%以上になるとダメージが大きくなり、リカバリーに時間もかかりますし、精神的な負荷もバカになりません。下落率が▲50%ということは、上昇率が100%にならないと基の株価に戻りません。(100→50:▲50%、50→100:100%)ということです。
一旦、売却し、損失を確定してから、再度、同じ銘柄に投資したいかどうか、考えるのも手です。冷静になって、改めて投資判断を行うというプロセスです。
◆信用取引の場合
信用取引は、レバレッジをかけて(株式などを担保にして、融資を受けたり、株を借りたりする投資)投資をしますから、損失確定は欠かせません。制度信用取引では、期日までの期間が6ヶ月ありますが、基本的には、含み損銘柄の損失確定は、長くとも半月から1ヶ月程度で判断したいところです。予想通りに値上がりした場合は、現引き(買付価格で現物に振り替えること)することも選択肢ですね。
また、信用取引で投資枠をフルに使った場合、想定と逆の動きになると、追加保証金(追い証)が必要になり、これらを避けるためにも、リスク管理が欠かせません。極端なケースでは、損失が拡大することで、担保にしていた現金や株式が全て無くなることも十分考えられます。売建ての場合は、担保以上に損失が拡大する可能性もあり、その場合は、担保以外の現金を損金に充当する必要が出てきます。
現物取引以上にリスク管理の重要性が高く、適切な損失確定が欠かせないと思います。
とは言え、「損切り貧乏」という言葉もあり、損切りばかりしていると、利益につながらない面も事実で、なかなか、難しいプロセスだと感じます。
◆過去の事例
大幅下落で株価が回復しないケースで、個人的に印象にあるのが、
日本株の場合は、IPO(新規上場)銘柄で、上場直後に活況な取引となり、高い株価をつけた場合、その価格を回復しないケースが見られます。特に上場直後の場合は、株価評価が定まっておらす、極端な高株価をつけることもあります。いつか、株価が回復すると信じたいところですが、この悲劇は度々、発生します。また、材料株(何らかの理由)で株価が急上昇した銘柄なども、再起不能な高株価をつけることがあります。
他にも経営危機で上場廃止の可能性が高まっている銘柄なども、損失確定の必要がありますね。公式に発表されると売り気配で値段がつかなくなることが多いため、噂レベルでも損失確定の判断が必要になってきます。
米国株も例外ではありません。
数年前に、フィンテックやリモートワーク絡みで活況だった銘柄の株価を見てみると、1/10程度になっているものも少なくありません。元の株価に戻る可能性は低いと言わざるを得ませんね。エヌビディアのように数十倍、数百倍になる銘柄がある一方、大幅下落する銘柄も多いということを念頭に置きたいところです。
これらの悲劇を避けるために、どうすれば良いでしょうか?
ネット証券では「逆指し値」という取引手法があります。
例えば、100で買った銘柄を80以下になったら、成り行きで売る(売れる値段で売る)という手法です。特に米国株の場合は、日本と異なり、値幅制限が無いため、取引時間中に極端な株価になっていることがあります。それに時差もあるため、個人的には、逆指し値注文は必須と考えています。日本株でも、取引時間、株価を見られない方は、逆指し値を活用した方が良いかもしれませんね。
また、投資信託でも損失確定をした方が良いと思われるケースがあります。
具体的には、テーマ型投信というタイプや特定の新興国に投資するタイプです。
投資したタイミングと外部環境が劇的に変化した場合、長期投資のつもりでも、回復が見込みにくくなることも考えられます。かく言う私も、リーマンショックの際は、当時、脆弱な経済体質だったトルコ株投信を損切りしましたし、最近では、NISA枠で買った米国IPO株式投信やテーマ型のインデックスファンドを損切りしました。米国の金利上昇が続いたため、当分、回復が見込めないという投資判断です。
投資に絶対はありませんし、失敗はつきものです。
その失敗のダメージをある程度、限定するのが損失確定だと考えます。
傷が浅い方が、復活もしやすくなりますね。
人間の感情としては、損失確定は苦痛が伴いますが、時間が経つと心の傷も癒えてきます。
優れた投資対象を長期で保有すると素晴らしい成果になりますが、冴えない投資対象に長期投資しても、結果は散々となります。
適切な損失確定が、良好な投資成果につながっていくと思います。
皆さまのご健闘をお祈りします。
次回は、「米国個別株投資について」の予定です。
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いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。
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