仮想通貨を考える

 

 今回は、米トランプ政権誕生で注目されているビットコインを始めとする仮想通貨についてのコメントです。

 

 投資対象として考えた場合、個人的にはややネガティブな印象を持っています。

投資しないという意味ではありません。難易度が高いという意味合いです。

幾つかの点で、個人投資家には、リスク管理が難しい面があります。

 

 とは言え、過去数年で数十倍や数百倍になるなど強烈な上昇をしましたから、無視できない投資対象でもあります。

今回は、個人的に感じる留意点を紹介したいと思います。

 

まず、値動きですが、下記URLの月足チャートを見ると価格変動の激しさがわかりますし、

強烈な上昇トレンドだったこともわかります。

 

ビットコイン/円(BTC/JPY)リアルタイム価格・チャート | みんかぶ 暗号資産(みんなの仮想通貨)

 

冒頭のコメントでややネガティブなスタンスと紹介しましたが、理由は主に以下の通りです。

 

◆フェアバリュー(適正価格)がわからない

◆価格の方向性を確認する術がチャート位しか存在しない

◆法整備が十分でない

◆ハッキングなどのリスクがある

◆日本の税制では雑所得に分類され、税制面で不利である

 

 

◆フェアバリュー(適正価格)がわからない

 

仮想通貨は、価格の裏付けが乏しい面があります。

言い換えると、適正価格がわからないので、一方的な値動きになりやすい傾向です。

過去には、大きな急落が何度も起きましたが、どの水準で値下がりが止まるかわかりません。

 

 株式の場合は、企業の利益や純資産などをベースに、PERやPBR、ROE、配当利回りなど複数の指標があります。その数値に基づき、大幅に下落すると投資家の資金が入ってくることで下落が止まる傾向にあります。為替の場合も、2国間の金利差や実質金利、購買力平価などで一応の目安が存在します。

 

仮想通貨の場合は、急落時や急騰時に売買するとしても、投資基準が明確ではありません。

上昇しだすと、まだまだ上がる、下落しだすと止まらないという心理が働きがちです。

半減期などのポイントが無い訳ではありませんが、割安とか割高といった判断ができないのが難点ですね。

 

そういう面では、ゴールド(金)も多少、類似点があるかもしれません。

但し、ゴールドには長い歴史があり、産出量も限定されている点、中央銀行の外貨準備にも組み込まれている点、実需(宝飾や工業製品)も存在する点などが異なります。

 

 仮想通貨の場合、仮にある日、大きく急落した際に、買って良いのか、保有しているポジションを売った方が良いのか、判断ができないと感じています。数日前、数ヶ月前より安いという判断はできても、その水準が妥当で上昇に転じるかどうかは別の話ですもんね。また、仮想通貨もビットコインを筆頭に種類が多くなってきました。フェアバリューがわかれば、裁定(価格差の調整)が働きますが、そんな様子もありません。方向性としては、多くの仮想通貨が上昇トレンドですが、短期的に見ると、結構、値動きが異なっています。

 

 

◆価格の方向性を確認する術がチャート位しか存在しない

 

 過去のチャートを見ると大きな上昇をしていますから、今後も上昇が期待できると考えがちだと思います。確かに米トランプ政権が仮想通貨を活用する報道が出たり、米国で仮想通貨のETF(上場投信)が認可されたり、と上昇のキッカケになる話題には事欠きません。

 

但し、価格の裏付けが乏しいため、より高くなった価格で買う投資家がいなくなれば、当然、下落に転じることになります。また、大きな下落時に高値で買った投資家の含み損が拡大した場合、損失確定の売りが断続的に継続し、どの水準で下落が止まるか、判断できない点が切ないところです。

 

 

◆法整備が十分でない

 

仮想通貨は、世界中に普及している一方、法整備が十分でない面があります。

また、国によって法律が異なっていることは、容易に想像できます。

 日本の場合、預金であれば、預金保険機構、有価証券であれば、分別管理など、投資家保護が図られています。が、仮想通貨の場合、登場したのが比較的、最近だったこともあり、税制を含めて、十分な法整備がなされていない点は理解しておいた方が良いと思います。

仮想通貨の取引所や取引する業者などのリスクの把握も欠かせないと思います。

 

もっとも、法整備が十分でないから、強烈な価格上昇が起きたりするとも言えますね。

「綺麗すぎる水には魚は住まない」という例え話を思い出します。

 

 

◆ハッキングなどのリスクがある

 

時々、報道されますが、仮想通貨は、各国のハッカーの対象になることが少なくないように思います。

仮に、ハッキングされた際、保有していた資産がちゃんと保全されるのか、否か、今ひとつ、わかりません。業界全体で保険機構を作ったとか、ハッキングの対策を進めているとかの話題も聞きませんから、各社が各々、対策を取っているという印象を持っています。

 

 

◆日本の税制では雑所得に分類され、税制面で不利である

 

 他の投資対象と異なり、仮想通貨の損益は、雑所得になります。雑所得のつらいところは、損失が出ても雑所得内でしか損益通算ができないことです。言い換えると、株式や投資信託の損益と通算できないというデメリットがあります。また、ザックリ言うと、仮想通貨を売って、他の通貨に乗り換えた場合(保有資産を売却した時点で課税の対象)や仮想通貨で買い物をした場合も課税の対象になります。

 

 数年前の仮想通貨バブルの時、保有していた仮想通貨を売却し、他の仮想通貨に投資、その後、暴落したケースで、巨大な課税が待ち構えていて、下落した仮想通貨では納税資金に不足したという悲劇を聞いたことがあります。雑所得は総合課税で、最高税率は55%になります。有価証券の20.315%の分離課税の税率と比べても高く、大きな利益がでると多額の税負担が発生します。

 

FX(為替取引)も、以前は分離課税ではなかったようですが、時間をかけて分離課税になりました。仮想通貨も早く分離課税になって欲しいところです。

 

前述の通り、米国では仮想通貨のETFが上場していますが、国内証券会社から、現時点では投資できません。これは、有価証券の場合になると、税制が異なることから、ブレーキがかかっているように感じています。

 

 

今回は、リスク面を全面にコメントしましたが、次回は、これらを踏まえ、前向きに投資手法や考え方をお伝えしたいと思います。

 

次回は、「仮想通貨投資をするならば」の予定です。

 

当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。

金曜日が休日の場合は、お休みします。

 

いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。

内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。

 

尚、HP下部にInstagramのリンクを用意させて頂きました。

基本的に毎日、日米の金融マーケットに関する投稿、不定期で投資やライフプランに関する投稿をしています。是非、ご覧ください。