今回は、米国の関税に関してのコメントです。
トランプ大統領就任から、内外の株式市場は冴えない展開が続きます。
関税リスクや地政学リスクが顕在化してきています。
また、政府の人員削減なども投資家心理を冷やしている印象です。
関税は、基本的に国内産業保護のために実施されることが多いのですが、そもそも、国内産業に競争力があれば、関税をかける必要は無いとも言えます。また、現在では、グローバルのサプライチェーンが構築されており、各国が関税をかけることで分断が進行してしまい、コストが増加します。
経済理論に「比較優位」という考え方があります。
自由貿易において、自国が得意な分野に特化することで、お互いの利益が最大化できるという考え方です。具体的には、人件費の低い国で製造することで製造コストを抑えることができること等が挙げられますね。全てを自国で賄うのでは無く、グローバルのサプライチェーンを有効活用することで、世界前代の貿易量が増え、経済規模が拡大するという考え方です。
メキシコに各国の自動車工場が多いのは、米国と比較して人件費が低い上に、北米の自由貿易協定で貿易の障壁が緩和されていたことが背景です。
ご存じの通り、トランプ政権は、メキシコとカナダに25%の関税を検討しています。
それにより、各自動車メーカーは、関税の影響を受ける国で生産を続けるか、関税はかからないものの、人件費が高く、熟練工が少ない米国で生産するかの選択を迫られることになります。企業の設備投資は、数年から十数年以上の期間で検討する必要がありますし、多大な費用負担も生じます。現政権が4年間という期間であることからも、簡単に工場を移設するという経営判断も困難に感じます。
そもそも、米国の自動車会社もメキシコに進出しています。
また、部品メーカーへの影響も無視できません。両国間を移動する度に、関税負担が生じるとコスト増が無視できません。
そもそも、「関税を誰が負担するのか?」という視点もあります。
誤解もあるようですが、海外企業が関税を負担するのでは無く、米国の消費者が負担することになります。
海外企業は、小売価格上昇で販売数量が減少するデメリットが考えられますが、米国の消費者は、海外からの輸入物品については、関税を負担し、従来よりも高い価格で購入することになります。
当然、物価上昇圧力がかかります。もちろん、米国内で製造されたものには、関税はかかりませんが、様々なルートで海外の輸入品の影響は排除できませんし、そもそも、魅力的な物品が国内だけで賄えるかという課題もありますね。関税に関しては、大統領選挙の公約にも掲げられていたようですが、物価が上昇し、消費者が負担しなければいけないことを、有権者の方々が十分、理解していたか、何とも言えません。
政府の立場では、税収が増加しますから、収支は改善しますね。かなり、強引に例えれば、消費税に近いイメージだと感じています。FRB(米国の中央銀行)が苦労して、インフレを抑制し、金利をコントロールしてきました。ようやく、利下げ局面に入りましたが、関税によって、インフレ率が上昇すると、再び、利上げを余儀なくされる可能性が高まります。
悪い予想としては、関税により消費が低迷する一方、インフレだけは上昇する、不景気のインフレ(スタグフレーション)になることを懸念します。
4月上旬から、関税がスタートすると、5月乃至は、6月以降の消費者物価指数に反映されてくると思われます。
また、イーロン・マスクさんが取り組んでいる政府機関の人員削減を始めとするコストカットに関しても、政府機関だけでなく、発注先の人員削減や業績にも悪影響が及ぶ可能性を感じます。私見ですが、人員削減をするにしても、数ヶ月単位の計画の上、対象者や対象機関を精査し、退職後の受け皿を準備するという手順が欠けているようにも感じています。
失業率増加は、4月以降の米雇用統計に影響が出てくるかもしれませんね。
また、移民の問題も経済的に悪影響が考えられます。
米国では、低賃金の労働の受け皿は主として移民の方々が受け持ってきています。
移民の送還などは、まだ、具体的に報じられていませんが、仮に移民が減少すると、労働力不足になり、賃金が上昇、こちらもインフレ要因になってくるかもしれません。
と言うことで、私が理解知りうる経済原則からすると、厳しい政権運営になる可能性を感じてしまいます。もちろん、世界有数の知能が集まる米国の政権ですから、私の理解を超える戦略がある可能性を否定しません。
ただ、ウクライナに関する対応等を見ていても、各国や各地域の分断が加速するリスクを感じます。各国の中央銀行が持つ外貨準備高の多くは、米国国債が占めています。が、最近のゴールド価格の上昇を見ると、資金シフトが起こっている可能性も感じます。あまり、現政権が唯我独尊になると、経済面でも防衛面でも悪影響が広がり、米国から資金が引き揚げられるリスクも考えられますね。
いずれにしても、
今後は関税のある世界、地政学リスクが上昇した世界を前提に、投資戦略を考えていく必要を感じています。
次回は、「日銀の利上げに思うこと」の予定です。
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