不動産クラウドファンディングについて

 

 今回は、不動産証券化商品のひとつである「不動産クラウドファンディング」についてコメントします。基本的に投資家から集めた資金を不動産に投資し、賃料と売却益を還元するというスキームです。

 

個人的には、ネガティブな立場です。

 

SNSやネットを見ていると、多くの広告が掲載されています。

 

「煩わしい手続きが無く、ネットで申込み完了、高利回り、元本割れ実績無し」

というような触れ込みです。

 

不動産証券化商品投資の王道は、国内では、J-REITになると思います。

利回りやスポンサー(運営主体)等、REITを見ると不動産市況がザックリ把握できます。

J-REITの場合、東京証券取引所の審査を経て、上場することになり、定期的な情報開示が求められ、運営の透明性が高いのが特徴です。

 

REITの利回りを見ると、4%台から5%台が中心です。最近の日本銀行の利上げの影響で、価格が下落し、ひと頃よりも利回りが上昇していますね。

 

 オフィス系REITの代表で、三井不動産が運営主体の「日本ビルファンド」の利回りは、約3.5%です。また、同様に三菱地所が運営主体の「ジャパンリアルエステート投資法人」の利回りは、4.3%程度です。運営主体の信頼性や物件の内容によって、利回りは異なってきます。

また、投資法人(ファンド)のHPも充実しており、様々な情報を入手することが可能です。

運営主体が主として大手企業であり、情報開示もシッカリしています。

とは言え、J-REITの黎明期には、親会社が保有している不良資産をファンドに付け替えるということも耳にしました。

 

以下にHPと上場REITの一覧情報のURLをつけておきます。

 

NTT都市開発リート投資法人

 

JAPAN-REIT.COM – 全ての投資家のための不動産投信情報ポータル REIT一覧(リートデータ)

 

で、不動産クラウドファンディングに話を戻しますと、最高利回り10%超とか、元本割れの実績無しとか、口座開設でクオカードやアマゾンギフトが貰えるとか、怪しさ満載です。

 

 常識的に考えれば、国内不動産において、まともな物件で10%近い利回りのものは、皆無と言って良いと思います。実際に上場しているJ-REITでも、高い利回りのものが6%台程度です。幾つか、クラウドファンディングのHPを見てみましたが、運営主体の会社情報や会員外からは、物件情報もよくわかりません。もちろん、全てを否定する訳ではありませんが、高い利回りをどのように出しているのか、不透明ですね。過去の実績が高かったからと言って、将来が保証されている訳ではありません。更に言えば、投資家の受益する利回りは、運営主体の企業の利潤を控除した後の数値です。そんなに美味しい不動産物件がゴロゴロしているとは思えません。証券化商品にせずに、自分自身で投資した方が旨みがあるようにも感じます。

 

個人的に懸念するのは、以下のようなスキームがあり得る点です。

 

ある事業者がクラウドファンディングで資金調達します。

 仮にAファンドとします。集めた資金を不動産に投資するわけですが、次から次に高利回りの魅力的な物件が見つけられるとは思いません。従って、Aファンドが償還(満期)になる際にBファンドを新規に設定し、Aファンドが100でスタートしたものを105の価値でBファンドに移行します。Bファンドは、Aファンドの105の価値を引き継ぎ、100で再スタートします。更に償還の際には、Cファンドを設定するという流れが考えられます。

仮にこのスキームであれば、持続性に懸念が生じますね。

 

また、資産や資金の保全が十分であるかという点も気になります。

投資信託等のケースでは、分別管理がなされており、信託銀行で資産は保全されます。

仮に、償還時に資金が返金されず、運営会社が破綻する場合、保証がどうなるのか?という点も気になります。投資家保護の法的なバックアップも良くわかりません。

海外不動産に投資するケースもあるようですが、こちらも物件概要などが不明です。

海外投資の場合は、投資国の税制変更リスクや法令変更リスク、為替変動リスクや地政学リスクも考慮する必用があります。

 

中には、詐欺まがいのケースも考えられます。

過去には、「カボチャの馬車」や「みんなで大家さん」等の事例があります。最近でも「ヤマワケエステート」の償還金遅延が話題になりました。

結構なリスク要因が考えられますね。

 

であれば、不動産証券化商品に投資する場合、REITかREITに投資する投資信託を選択するのが、妥当かと思います。不動産に興味をお持ちで、収益物件の実物不動産に投資したいという方は別ですが、手間や流動性、換金性などを考慮するとREITに軍配が上がるように感じます。もちろん、REITも価格変動があり、特に金利上昇局面や景気後退局面では価格が下落するケースもあります。が、価格の下落要因を把握することで、継続保有するのか、売却するのかと言った投資判断が可能です。

 

実物不動産も景気変動や金利変動で価格が変動します。

前述の通り、「元本割れの実績が無い」と歌っていたとしても、価格変動がある以上、元本割れリスクは普通に存在します。日本銀行の利上げの影響などで東証REIT指数も昨年9月から今年の3月までの期間に約11%下落しています。REITが10%以上下落しているのに、クラウドファンディングは無傷とは、理解に苦しみます。

日々の価格変動が把握できないからと言って、安心安全な投資の訳ではありません。

 

ネガティブな話が続いてしまいました。

あくまでも、私見ではありますが、箇条書きにしてみると

 

◆高利回りの不動産を証券化するメリットがわからない

⇒自己保有すれば十分では?と感じます。

 

◆REITなどと比較した情報開示の脆弱さ

◆高利回り物件がそもそも、存在しない

◆リスク要因を十分、明示していない

◆運営会社の破綻時の保全

 

等がクリアできなければ、私は投資対象として認識することは無いと思います。

手軽に投資できるからと言って、リスクが無い訳ではありません。

仮に投資する場合でも、今回の指摘事項をクリアにしておきたいものです。

 

次回は、「株主優待のあり方について」の予定です。

 

 

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