株主優待のあり方について

 

今回は、株主優待に関するコメントです。

 

上場企業には、配当と別に株主優待を実施する企業も少なくありません。

自社製品やカレンダー、地元の製品、カタログギフト、QUOカードなど、多岐に渡ります。

株主優待が楽しみで投資を行っている方も多いと思います。

企業サイドの視点としては、株主数や安定株主の確保、特に個人投資家の支持を得たいインセンティブがあるかと思います。但し、後述の通り、何らかの理由で株価を上昇させたいという邪な動機も否定できません。

 

 ここ数年の傾向としては、株主の公平性の観点から、株主優待を廃止するケースが多くなってきました。国内機関投資家や外国人投資家の場合、株主優待を活用することが困難で、優待をするくらいなら、配当に回して欲しいというスタンスです。年金組織が株主優待の権利を得ても、事務処理が煩雑になるだけですもんね。実際、大手運用会社勤務の知人に、優待に関して聞いてみたところ、金券ショップ等で現金化し、ファンドに組み戻す作業をしていると言っていました。確かに、投資信託保有者の場合、株主優待の行く末が気になりますね。基本的には、換金され、ファンドの資産に加算されているはずです。

因みに、配当に関しては、基準価額に加味されます。

 

その一方、株主優待の新規導入や条件変更、廃止等で株価が大きく上下することがあります。

投資メディアなどでは、配当と株主優待を加算した総合利回りランキングを表示しているケースも見かけます。低金利の昨今、総合利回りが10%を超えていた ら投資したくなりますね。但し、個人的な印象として感じるのは、食品会社などの自社製品の優待は、廃止になりにくく、本業に関連しないQUOカードなどの優待は、唐突に廃止されることも少なくないように感じています。

 

最近、株主優待に絡み、残念な出来事がありました。

 

「Revolution(9984)」という不動産関連の企業があります。

同社は、昨年10月に新たな株主優待制度を発表しました。

 

 基準日(毎年4月末と10月末)の時点で2,000株を保有し、かつ2回以上連続で株主名簿に記載、または記録された株主にQUOカード6万円分(年間12万円分)を贈呈するというものです。当時、株価は500円程度でしたから、2,000株保有の場合、100万円程度の投資で12万円分のQUOカードが手に入ることになるはずでした。12万円/100万円ですから、12%程度の利回りになることから、株価が上昇、一時、700円近くまで上昇しました。

ところが、残念なことに優待が実施される前に、優待制度が廃止されてしまいました。当然、投資家は失望し、売りがかさみ株価は70円台まで急落しました。優待目的で投資された方々は、優待を受けることができないだけでなく、大きな株価下落に見舞われたことになります。

 

道義的な責任はもちろん存在しますが、廃止理由については、大株主が株式を売却したことから、個人株主が増加し、予定よりも資金負担が大きくなり、廃止せざるを得なくなったということらしいです。

 

そこで、気になるのは、株主優待を新設することで株価上昇を誘発し、そこで株式を売却するという投資行動です。インサイダー取引には該当しないかもしれませんが、相場操縦に近いようにも思います。魅力的な株主優待制度を導入すれば、株価上昇が期待できます。悪意を持てば、その株価上昇を受けて、大株主が持ち株を売却することもできてしまうという大きな課題を残しました。後の優待は、言い方は悪いですが、「知ったこっちゃ無い」というスタンスで短期的に廃止されてしまうかもしれません。

 

また、同じ時期にくら寿司(2695)」の株主優待復活が話題になりました。

同社の優待も個人投資家には、人気が高く、高株価を維持する背景になっていたようです。

 

同社は、昨年12月11日に優待廃止を発表し、その後、株価は下落し、2月19日に優待復活で株価は急騰しました。このケースでも、気になるのが優待廃止で株価が下落した局面で主要株主の資本移動があったことです。優待を復活すれば、株価が元の水準に戻る可能性があります。安いうちに株式を購入し、投資後に株主優待を発表すれば、保有株が含み益になる可能性が高くなります。

なんか、恣意的な株主優待の廃止、復活にも見えてしまいますね。

 

金商法における、インサイダー取引や相場操縦は、株主優待導入、廃止に関わる株価変動の際の特定株主の売買を考慮してなかったような印象があります。

今回のケースに関しても、当局の対応が注目されますね。

 

株主優待制度は、個人投資家にとって、楽しみのひとつです。

従って、優待を簡単に廃止する企業や改悪する企業は避けたいものです。

 

当然、それらのケースでは、優待の権利消滅だけなく、株価下落にも見舞われる可能性が高くなります。投資する前に優待実績や優待目的なども確認したいところです。とは言え、大手企業でも、オリックスやJTなどの優待廃止がありました。必ずしも、知名度や企業規模で判断できないのが切ないところです。

 

今回は、インサイダーや相場操縦まがいの残念なケースを紹介しました。

今後、同様のケースが無くなることを切に期待したいと思います。

 

次回は、「今年のSell In Mayは?」の予定です。

5/2はお休みさせて頂き、5/9から再開します。

 

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