前回は、「プロが考える?アクティブファンド編②」についてお伝えしました。今回は、具体的なチェックポイント後編についてコメントします。
今回、ご紹介するチェックポイントは、以下の通りです。
・純資産額
・運用会社
・開示資料
・分配方針(あれば)
・組み入れ銘柄
・販売会社
【純資産額】
純資産は、多ければ良いというものでも無く、ほどほどの水準(100億円程度?)から少しずつ、資産が増加しているケースが好ましく思います。投資家にとって具体的な留意点は2つあります。一つは、純資産が少なくなると繰り上げ償還のリスクがあること。これは、「適切な運用ができないと運用会社が判断した場合、ファンドが償還されることがあります」というリスクがあることを意味します。もう一つは、投資対象とのバランスになりますが、ファンドに資金が集まりすぎると、こちらも適切な運用ができなくなるため、新規の買付けが不可になるリスクです。小型株のファンド等は、運用キャパシティに限りがあるため、残高が一定以上になるとソフトクローズといって、新規の買付けができなくなることがあります。(解約はOK)
この点に関しては、目論見書に信託金の限度額という記載があり、純資産額に関する一定の目処として判断できると思います。
また、コストの項目でもご紹介しましたが、その他費用(一般的にはほぼ定額)のコストがかかるため、純資産額が小さいと受益者の負担率が高くなる可能性が出てきます。
運用サイドの視点では、資金が流出しているケースでポートフォリオをうまくマネジメントするのは困難が伴います。解約超過だとベストと考えたポートフォリオを崩していく必要があるからです。急激な資金流入のケースの際、割安な水準、購入したい水準でポートフォリオ構築ができるのか?という論点もありますね。
【運用会社】
外資は、基本的にジョブローテーション(業務変更)が少なく、FMであれば、FMとして他社に転職を行います。一方、日本の場合は、業務変更が少なくなく、極端な場合、営業担当からFMになるようなケースもあったように記憶しています。私は、外資のFMの方が相対的に安定感を感じています。
私事ですが、15年前位に海外のFMとミーティングをした際に、「日本の企業で将来的に成長期待ができる業種は何か?」と尋ねたところ、「自動車関連」との回答を得ました。当時は、亀山モデル(シャープ)やソニーなどの企業に注目が集まっていた頃ですが、海外の視点では、サムスンや台湾セミコンダクター(TSM)などの方がより有望との判断でした。国内の視点で選別する銘柄とグローバルの視点で選別する銘柄は大きく異なることを認識した出来事でした。結果は、その見立て通りの結果となりましたが、国内アナリストやFMの判断は、あくまでも国内の同業種の中で優劣をつける傾向が強く、グローバルでの比較する視点は、欠けている印象です。
【開示資料】
目論見書、月報、運用報告書などがありますが、目論見書でファンドのコンセプトや運用方針をチェックし、月報でその通りの運用がなされているかをチェックする手順が基本線だと思います。運用報告書は、組み入れ銘柄詳細やその他費用などが把握できますが、必要があった際にチェックすれば良いという位置づけです。手間はかかりますが、月報で月間の騰落率(ベンチマークがあればその比較)、組み入れ銘柄の変化、運用コメントを確認することで、現下の運用が順調なのか、苦戦しているのかを確認できます。運用会社によっては、手を抜いた運用コメントしか出していないケースもありますけれど。有用なコメントは、マーケットの状況や個別銘柄に関して非常に参考になります。
一般的には、目論見書でコンセプトをチェックすれば、月報でファンドの推移をチェックしていれば十分だと思います。
尚、運用会社にはコールセンターが設置されているケースも多く、問い合わせをすれば、対応してもらえます。
【分配方針】
投資信託の分配に関しては、運用効率や税負担などを考慮すると、分配が無い方が好ましいというのが、教科書的な見解です。但し、高齢者の方など、インカムを重視される場合は、この限りではありません。分配を受け取るよりも、適宜、解約する方が好ましいとは思いますが、解約の手間を考えるとインカム重視のニーズに応えているものだと考えます。とはいえ、分配水準は、一考の余地があります。組み入れ銘柄の平均利回りと年間の分配金の合計を基準価額で除したもの(分配金×12ヶ月(年間分配金)/基準価額)のバランスが悪いと分配金の引き下げの可能性が出てきます。分配金が高い方がうれしいのが人情ですが、投資対象の実際の利回りに近い水準の方が分配金減額リスクは小さくなります。
また、資産形成層には、分配タイプは基本的に向きません。分配金を楽しみにすることを否定はしませんが、それであれば、積立の場合は、積立額を少額にして無分配のファンドに投資した方が投資効率は向上しますね。また、一括で購入する際も、投資額を減額しても無分配のファンドに投資した方が投資効率の面では良いと思います。
多くのインデックスファンドが無分配なのは、投資効率を優先しているからだと私は認識しています。必要な資金があるのなら、その一部を解約することで対処が可能だと思います。
【組み入れ銘柄】
前述の通り、組み入れ銘柄に関しては、月報や運用報告書から把握することができます。
時系列にチェックすると、組み入れ比率の変化を確認することもできます。それらの売買と該当期間の騰落率を比較することで、運用の状況を推測することができますね。
運用パフォーマンスの優れたファンドの組み入れ銘柄は、証券会社でも参考にしていた場面をよく見ました。内外とも個別銘柄投資の参考になると思います。
多くの場合は、組み入れ銘柄の比率に上限を設けており、10%程度を上回ることは稀です。しかし、集中投資の運用コンセプトのケースなのでは、かなり投資比率が高いケースもあります。好調の時は良いのですが、組み入れ上位銘柄が大きな調整に入ったりすると、パフォーマンスに少なからず影響を及ぼします。
昨年来、米国株ファンドのパフォーマンスの優劣に電気自動車のテスラの有無で大きな差がついています。有望視されている企業である一方、強弱感があり、株価も大きな上昇と調整を繰り返しています。逆に、テスラに投資していないファンドもあり、FMの運用哲学が見えてきます。以前から一部の銘柄に資金が集中し、株価上昇が目覚ましい場合、多くのFMが運用哲学に関わらず、投資を集中させるケースを見てきました。かつて、日本のITバブルの頃のソフトバンク(9984)や光通信(9435)などが該当します。当時、各ファンドは競って、上位に組み入れをしていました。環境関連株式ファンドなどにも上位組み入れがなされて、疑問に感じた記憶があります。ベンチマークや他社ファンドに劣後できないという事情はわかりますが、運用コンセプトを優先すべきではないかという印象を持ちました。当該株式が急落(20営業日以上ストップ安が続いた記憶があります)になった後のパフォーマンスは、申し上げるまでもありません。金融業界でも是非が問われた案件です。
【販売会社】
基本的に販売会社は、複数あった方が好ましく感じます。
専用ファンドで販売会社が限定されているケース(特に対面金融機関)の場合は、そちらの営業方針によって、ファンドの純資産が増減する可能性があり、安定した運用に影響がでることも考えられます。複数の販売会社があることで、ある程度、パフォーマンスや人気に連動し、1社の場合よりも資金の流出入が安定している印象です。
最後になりますが、コア・サテライトのファンドとう視点では、コアにインデックスファンド、サテライトにアクティブファンドや個別株というアプローチが中級者までは好ましいと思っています。アクティブファンドも個別株もトレンドから外れると、厳しい展開も少なからずあります。損失を伴うリバランスは、精神的にも苦痛が伴いますし、タイミングを逸するとより大きな損失にもつながりかねません。
当たり前ではありますが、コアとサテライトのバランス(投資金額、リスク量など)を重視したいところですね。
皆さんにとって、来年も良いファンドとご縁があることをお祈りします。
当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。本年は今回が最後となります。
来年は、1月7日、「2021年の振り返り(投資環境)」を掲載予定です。
いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。
内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。