「成長する資産の条件とは」

今回は、「成長する資産の条件とは?」というテーマを考えたいと思います。

 

長期投資をする際に、成長する資産に投資できれば、高いリターンが期待できますが、冴えない資産に投資してしまうと、残念な結果につながりかねません。「長期投資」という言葉だけが、一人歩きし、投資対象に関しては、無頓着なケースも、個人投資家の皆さんに多く拝見しました。長期投資することだけが絶対なわけではなく、投資対象を適切に選択することが、より重要だと思います。「短期投資に関しましては、前回、お伝えした通り、売買代金やボラティリティ等の要因が大きく、今回のテーマには該当しません。

 

私が考える成長する資産については、複数の条件がありますが、必ずしも、全てを満たす必要はありません。尚、投資環境次第では、冴えない資産でも一定のリターンを獲得できるケースもありますが、持続的ではありませんし、再現性も限界があります。複数の条件を満たしていれば、今後も成長する可能性が高まり、それにともない一定のリターンの達成が期待できると思っています。尚、以下の条件については、あくまでも私見であり、さまざまな見解があることを承知しています。

 

 

【成長する資産の条件】(企業の場合を参考に追加してみます)

 

・人口の大きな国

・若い人口が多い国(検証していませんが、平均年齢の若い企業も要チェックですね)

・人口が増えている国

・政治のリーダーシップが期待できる国(企業トップのリーダーシップ)

・教育(基礎研究)に投資をしている国(有効な研究開発費が十分な企業)

・イノベーションが期待できる国

・英語が普及している国

・資源を産出できる国

・GDP成長率の高い国(EPS成長率が継続的に高い企業)

 

人口に関しては、消費という観点で語ることができます。人口が増えている国は、活発な消費行動が期待できます。また、若い人口が多ければ、労働力として、納税者として、消費者として長期に渡り国力に貢献するという魅力が挙げられます。

政治のリーダーシップに関しては、過去からの因習やしがらみ等を突破する原動力になる可能性、また、外交力によってより、魅力的な経済圏の構築、新興国にありがちなインフラ投資の遅れへの対処等も期待できます。

教育投資や研究への投資は将来の国力の源になります。かつて、日本の高度経済成長期も高等教育では、理系の高度な技術者の輩出が進み、技術大国の礎となりました。あわせて、イノベーションが期待できる国、地域も大きな魅力があります。IT革命、DX等、新しい技術や概念が立て続けに誕生してきました。今後も新たな技術やサービスが現れるでしょう。軍事技術から転用されたものも少なくありません。(カーナビ等が代表例です)

また、言語も無視できません。インドやフィリピンのビジネス英語のレベルは非常に高いものがあります。ネイティブに近いレベルでのコミュニケーション能力は侮れません。

資源を持つ国も大きなアドバンテージがあります。輸出で外貨を獲得することができ、国の信用力の裏付けの一つである外貨準備高の確保につながりますし、構造的に貿易収支の黒字を確保しやすくなります。中東の各国をイメージしてみてください。

最後にGDP成長率の高い国です。GDPは一国の経済活動の成果と言えます。その成長率が高いということは、そこに所在する各企業の総和として利益成長率が高いということと同義と言ってよいと思います。また、今ではバフェット指数という言葉がありますが、古今東西、各国のGDPの規模と株式時価総額は近似するというデータがあります。全く、同じ動きをするわけではありませんが、GDPの規模を中心に上下に連動しているイメージです。別の見方をすると、GDP成長率と企業全体の成長率は近似するとも言えると思います。

 

これらを踏まえますと、具体的には、米国、中国、インド、フィリピンやベトナム、ブラジル、イスラエル等、将来的にはアフリカ大陸等も候補に挙がってくると思います。米中貿易摩擦等があり、予断を許しませんが、諸条件を見ると中国も投資対象として、注視する必要があるように思います。

 

個別企業に投資をするにしても、少子高齢化が進展している国でビジネスをしている企業に投資をするよりも、成長地域でビジネスをしている企業の方が高い期待リターンが望めるでしょう。日本で今後も高い成長をする企業が出現すると思います。しかし、確率論で申し上げれば、それよりも、より、大きな確率で成長地域や国に新たな産業やリーダー企業が登場するでしょう。

 

名目GDP成長率の推移(2011年~2020年) ※2019年以降はIMF予想値

 

  2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
全世界 4.3 3.5 3.5 3.6 3.5 3.4 3.9 3.6 2.9 -3.0
米国 1.6 2.2 1.8 2.5 2.9 1.6 2.4 2.9 2.3 -5.9
中国 9.5 7.9 7.8 7.3 6.9 6.8 6.9 6.8 6.1 1.2
インド 6.6 5.5 6.4 7.4 8.0 8.3 7.0 6.1 4.2 1.9
日本 -0.1 1.5 2.0 0.4 1.2 0.5 2.2 0.3 0.7 -5.2

(各種資料より、株式会社Noble Principleが作成)

 

2011年から2020年の対象期間で全世界は経済成長率が約+33%の一方、日本は同期間で経済の成長率が約+3.3%と大きなギャップがあります。もちろん、各国の企業もグローバルな展開をしており、本国だけの成長率だけで判断できない側面もありますが、国内向けの業種等では、利益成長に相違が出てくると思われます。投資信託を通じての投資に関しては、上記のような国や地域が投資対象のものを選択するのが望ましいでしょう。個別企業への投資に関しては、証券会社を通じて、米国、中国を始めとする国の企業への投資が可能になっていますが、2021年現在において、個人的には、上場開示の制度や市場の信頼性、情報の多寡、正確性等から米国株で十分という気はしています。その他の地域への投資は、投資信託経由や場合によっては、米国上場のETFを通じた投資で良いのでは?という認識です。もちろん、現地に駐在経験のある方やネットワークをお持ちの方は、この限りではありませんが、各地域との時差の問題や英語圏以外の情報の少なさ等を考慮すると他地域での個別株投資は、一般的とは思えません。

 

本題から、一旦、脱線します、投資アイディアのひとつとして、ご紹介します。

1990年代後半の日本市場での出来事です。当時、山一證券や長期信用銀行等の破綻が続き、信用不安が東京市場でも深刻になっていました。特にゼネコンと呼ばれた総合建設業に対する評価は非常に厳しいものとなっており、株価も低迷していました。私の仲間内で話題になったのがCB、今の呼び方だと「転換社債型新株予約権付社債」です。償還まで2年以内でクーポンも2%から3%程度はあったでしょうか、それらの債券価格が10円から30円程度で取引されていました。補足しますと、CBは、デフォルトがなければ、クーポンが支払われ、100円で償還されます。リスクを取れば、20円、30円の投資で70円から80円程度の償還差益が得られるような投資環境でした。(額面が100万円でしたので、30万円投資で何事もなければ、100万円償還のイメージです)そこで考えたのは、「5銘柄、10銘柄程度、ゼネコンのCBをパッケージにして購入すれば、投資対象の一部が破綻して満額回収できなくても、他の銘柄が、償還すれば、トータルで万々歳」というものでした。結果、当時の私は、「見ているだけ」の状態でしたが、ほぼ、該当銘柄は償還したような記憶があり、当時の風の噂では、このような取引で大成功をした方達もいたようでした。極、稀にこのようなケース(チャンス?)があります。

 

これを転用すると、米国株で、スタートアップで、うまくいくかどうか良くわからないけれども、ビジネスモデルやリーダーが魅力的な企業を10社程度、ピックアップして、それらに投資(大体、同じ金額を投資)するアイディアが出てきます。仮に5勝5敗でも、株価が5倍、10倍になるような大きな成長を遂げる企業に投資できれば、トータルでリターンを確保できるというアプローチです。ITバブル崩壊で、米国でも多くのIT企業が企業価値を失いました。しかし、IT産業自体は、ご存知の通り、モバイルやIOT、DXと進化を遂げ、その中で成功した企業の企業価値は驚異の増加率となりました。「現在、新たなイノベーションが起こりつつある中で、このような視点もありかな?」と個人的には感じています。投資信託でも同じようなアプローチの商品が散見されるようになってきましたので、そちらを使う手もありますね。

 

もっとも、米国株式市場の奥深さは、グロースと呼ばれる成長株だけでなく、バリューと呼ばれる割安株でも、過去の実績ベースでは、十分なリターンを上げていることです。バフェットさんは、割安株投資をメインにして資産を増大させましたし、例えば、バフェット銘柄のコカ・コーラは、2011年7月末、調整後株価で34.01米ドルだったのが、現在、54米ドルを超えています。また、クレジットカードのVISAの株価は、2011年に株価調整後21米ドル程度だったものが、現在240米ドル近辺になっています。決して、派手な企業と思えませんが、最近のフィンテック等の技術革新もあり、10年で10倍以上になっています。各企業の10年前の株価と現在の株価を比較すると驚くことばかりです。もちろん、米国でもエンロンの問題もありましたし、リーマンブラザーズも同様です。新陳代謝が活発で淘汰される企業と生まれてくる企業、生き残る企業のダイナミズムは眩いばかりです。

 

次回は、「インカム収入確保、高配当株投資について」についてコメントしたいと思います。

 

当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。

いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。

内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。