アノマリーに関する私見

先日、米国では1兆米ドル(円換算110兆円超!)のインフラ法案が可決され、我が国では、子供のいる世帯に5万円が給付されようとしているようです。両国の方向性が全く異なり、成長が後回しにされているようで、納税者として複雑な気持ちになってしまいます。

 

さて、「アノマリー」とは、理論の枠組みでは説明できないものの、経験的に観測できる金融マーケットの規則性のことを言います。これらの値動きを利用して追加リターンを目指すアクティブ・ファンドもありますし、逆手にとった定量分析アプローチのファンドもあります。内容を見ると、季節性のもの、定量的なもの、規模的なもの、需給によるもの等がありますが、個々の事象について、ご紹介をした上で、私見を述べたいと思います。

 

「小型株効果」

小型株で構成されたポートフォリオは、市場平均よりも相対的にリターンが高いという事象のことです。

→小型株投信等で良くセールストークで使われていますが、「大型株と比べて、カバーするアナリストが少ないため、超過収益を確保できるチャンスがある」との視点です。確かに、効率的な価格形成が十分ではない可能性もあるため、チャンスがあると言えばあるのですが、玉石混淆の傾向が強く、当たり外れが大きいように感じます。また、大型株が選好されるケースや新興国市場が選好されるケース等の場合は、値動きが低調になることも留意しておきたいところです。

 

「低PER効果」

PER(株価収益率)が低い銘柄は、高い銘柄に比べて収益率が高くなりやすい傾向にあるという相場のアノマリーのことです。PERが低い銘柄は市場で過小評価されている傾向が強く、リスクの割に相対的に高い収益を獲得できる可能性があるとされています。

→成長株と割安株という比較で捉えるとわかりやすいと思います。局面ごとに、金融マーケットの指向は変わるため、必ずしも、割安株だけが優位とは言えないと思います。但し、金利上昇局面等では、成長株(高PER銘柄)の値動きが振るわなくなる傾向はあるため、相対的に優位になるケースは否定できません。PERは、割高/割安という判断基準の他に、期待値が高いか低いかという判断基準もあり、低いPERには、それなりの理由があって、万年割安株という不名誉な評価もされるケースもあります。バフェットさんは、基本的に低PER、割安株を好んで資産を形成してきたと言われていますね。

 

 

「配当利回り効果」

権利付き最終売買日に向けて、高配当株や優待株が市場を上回る傾向があるというものです。

→この傾向について、強く同意する一方、人間の心理についても考えてしまいます。権利付き最終日の3週間前程度から、株価が需給関係で上昇してゆくケースが多いことに関するアノマリーです。しかし、配当に関するブログでご紹介したとおり、人間の欲望との戦いの面もあります。高配当や優待を確保する直前に株価が高い水準にあれば、権利を確保してから売却しても良いと考えがちです。(株価が同水準を維持できれば良いのですが)しかし、権利落ち後に大きく株価が下落するケースは、少なくありません。この効果は、権利を確保する前に利益確定することも戦術のひとつであるとの教えのように感じます。配当や優待を確保するよりも相対的に大きなリターンを獲得できる可能性がある点を排除しないという視点です。

 

「1月効果」

機関投資家などが年末年始の決算対応で絞ったポジションを、新年のスタートで改めて買いから入る「新年効果」が一つの原因だと言われています。 特に小型株に「1月効果」が強く、米国株にもその傾向が強いとされています。

→海外では、企業もヘッジファンド等も、年末の12月決算が主体であることが背景のように思います。年度初めに新たなポジションを取るという意味合いと理解しています。逆に、年度初めに利益確定から入るケースも考えられるため、その点に関して留意は必要だと思います。

 

「4月効果」

日本株では4月に上昇しやすい傾向があるとされています。

→日本の企業の3月決算が多いことが背景だと思いますが、昨今は、外国人投資家のウエイトが高まったこともあり、印象としては、あまり、傾向が出ていないように思います。また、1月効果で外国人の日本株買いがなされた際には、4月に株価が既に高くなっていた年も少なくないように記憶しています。また、年金資金の新年度の配分が4月から5月にあることも背景の一因と言われています。

 

「セル・イン・メイ」

米国の格言で、1月から5月にかけて株式市場は上昇、6月から下げる傾向があることから、5月に株式を売却してマーケットから離れた方が良いという意味で使われています。英語では、「Sell in May and go away」と表現されます。これに「But remember to come back in September」と続き、9月頃に底を迎える傾向があることから、秋に株式市場に戻ることを忘れないようにという意味合いです。

→確かに、日本のゴールデンウィーク前後に株価が調整に入る年が多い印象があります。これは、上記の通り、海外の投資家の決算が12月に多く、6月が中間決算に当たることが影響しているように感じています。特にヘッジファンドは、四半期の一定時期だけ、解約できるケースがあり、また、1ヶ月程度前までに解約の通知が必要になったりします。そのため、6月に向け事前に現金化の動きが出やすいのではないかと、以前から思っていました。但し、「5月に売れ」という投資行動を多くの投資家が意識すると、売却時期の前倒しが発生してきます。株価の高い4月に先んじて売却する投資家が増えれば、今度は「Sell in April」という格言が生まれてくるかもしれませんね。

 

「月初めの株高」

文字通り、月初めに株価が高くなる傾向が強いことを言っています。

→特に米国では確定拠出年金(401K)の普及が日本より進んでおり、以前、買付け額の概算値を調べたところ、月初めに1兆円を超える資金流入が定期的にあったと記憶しています。安定した買付けの需要が存在することが背景にあると推測できます。

 

 

 

 今回、ご紹介したアノマリー以外にも沢山のアノマリーがあります。一般的に知られるようになると、効果が減退し、別のアノマリーが生まれてくることになるかと思います。ここ最近の傾向を見ると、10月から11月に米国株を購入し、4月から5月頃に売却すると確かに勝率は高いようです。この事象も少しずつ、時期が変わってきたり、規則性が乏しくなってきたりするかもしれませんね。また、アノマリーの内容が有名になると、それを意識する投資家が増加し、結果的にアノマリーの効果が減退すると思いますが、参考程度に内容を理解することは、意味があることだと考えます。

 

次回は、「相場格言に関する私見」を取り上げたいと思います。

 

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