今回は、不動産投資信託(REIT)の投資の心得です。
個人的に、かつてREIT組成に携わった経験や15年以上投資してきた経験を踏まえ、私見を述べたいと思います。
あくまでも、私見なので、投資の判断はご自身でお願いします。
国内のREIT(不動産投資信託、以下REITとします)には、様々な用途(住居、オフィス、物流、商業、ホテルなど)やスポンサー(運用主体)のファンドがあります。また、決算月がバラエティに富んでいることや株式と比較して配当利回りが高い点も魅力のひとつです。
REITは、一般的な不動産市況に先行して価格が動く傾向があり、金利上昇や不動産の需給悪化、スポンサー企業の業績悪化などがリスク要因として指摘できます。昨今の金利上昇に関しては、いち早く、価格に織り込まれつつある印象もあり、日本銀行の金融政策にも注目です。
REITは、保有している不動産の賃料収入を原資に分配する構造になっています。
空室率が高くなるケースや賃料が下落すると配当利回りが低下する要因になります。
また、金利上昇で支払利息が増加すると、利益を圧迫し、配当利回りが低下する可能性も出てきます。
安定しているようにも感じますが、価格変動はそれなりにありますね。
以前の事例ですが、コロナが大きな問題になった際、ホテル系REITが大きく下落し、逆に物流系REITの価格が上昇しました。コロナの影響でホテルの稼働率が下がり、価格を下げても満室にならない環境でしたから、やむを得ませんね。コロナの落ち着きと共に、ホテルREITの価格は大きく上昇しました。物流REITに関しては、外出規制もあり、巣ごもり消費の関係から、アマゾンなどのネット消費が拡大しました。それらの商品を保管する物流倉庫の需要が高まるという流れで物流REITが上昇した経緯があります。もっとも、株式と異なり、需要(賃貸需要)が増加すると供給(物件供給)も増えるため、劇的に賃料(売上げ)が上昇することは、稀だと思われます。とは言え、需要の高まりから、稼働率が高くなり、賃料が安定するという点はプラスに評価されたと感じています。
このように物件の用途によって値動きが大きく異なることも留意点のひとつです。
それでは、私がRIET投資をする際の手順を紹介してみます。
シツコイですが、あくまでも私見です。失敗することも良くありますので、ご理解宜しくお願いします。
《チェックポイント》
◆決算月の確認
◆用途の確認
◆利回りの確認
◆スポンサーの評価
◆値動きの確認
※留意点 増資
◆決算月の確認
高配当株投資も同様ですが、決算月(配当の権利を獲得できる月)の確認は重要です。
例えば、今月(2024年6月)にREITに投資しようと考えた場合、6月決算月の銘柄を選べば、配当の権利を獲得できます。因みに現在、6月の権利がある銘柄は8本あります。同様に7月に権利獲得は、14銘柄です。
株式と同様、REITの場合も、本決算と中間決算の2回、配当されるケースが多いです。一部、年1回配当のケースもあるので要確認です。一般的に決算月の2ヶ月後から3ヶ月後位に配当が支払われます。前述の通り、REITは決算月が様々で、毎月のように決算があります。
極端な事例ですが、半年ごとに配当を出すREITを6本保有すると、毎月、配当を得ることができます。REITに投資する上場投信(ETF)もあり、銘柄によっては、年4回の配当が行われます。私は、売買代金の大きさなどから、野村東証REIT連動ETF(1343)に時々、投資しています。また、公募投信でも国内REITタイプは、毎月分配のタイプがあることからも人気がありました。
◆用途の確認
REITには、オフィスビル、住宅、商業施設、ホテル、物流施設などに投資するファンド(投資法人)があります。それぞれ、オフィスビルは景気変動に影響を受けやすい、住宅は景気変動に影響を受けにくい、などの特徴があります。また、複数の用途の不動産に投資している総合型というタイプもあります。また、大阪や福岡中心に投資をしているREITもあります。
最近は、GDPのマイナス成長の推移などから、やや景気が冴えない状態と思われますので、景気敏感なオフィスビルなどよりも住宅やインバウンドの恩恵を受けるホテルなどが無難のように感じています。
◆利回りの確認
投資家にとって、利回りが高いに越したことはありません。
ところが、利回り一覧(下記参照)を見ると、REITによってかなり違いがあることがわかります。
スポンサーの信用力の差、事業の安定性の差、今後の見通しの差などが背景と思われます。
また、利回りが高く見えても、業績(空室や賃料改定など)によって、減配されることもあります。従って、見た目の利回りが高いといって、必ずしも魅力的とは言えないと思います。
スポンサーが大企業の場合とあまり知られていない企業では、利回り格差があります。
もちろん、大企業の方が利回りは低めになります。
傾向として、住居や物流REITの業績が安定しているため、利回りが低いと言えます。
ご参考までに、REITの利回り一覧がわかるURLを添付します。
JAPAN-REIT.COM – 全ての投資家のための不動産投信情報ポータル REIT一覧(リートデータ)
◆スポンサーの評価
REITのスポンサーとは、投資法人の運営やプロパティマネジメントなどを行う事業主体です。財閥系不動産会社、商社、新興不動産会社などがスポンサーを務めています。
HPをチェックすると、会社概要が記載されていますので、確認しておきたいところです。
前述の通り、利回りの高低にスポンサーの信用力が反映されます。
個人的には、不動産の投資リスクを負う以上、スポンサーの信用力のリスクを負う必要は無いと考え、財閥系不動産会社や大手商社がスポンサーのREITを選好します。
おまけ:主要投資主(株主)について
投資法人(REIT)のHPには、主要投資主の記載があります。
これも、投資の判断材料になると考えます。信用力の高い金融機関や事業会社が上位の投資主の場合、取引関係の投資は別として、事業内容を把握の上、投資していると推測できます。
知らない投資主ばかりの投資法人よりも、知名度の高い投資主が多い投資法人の方が安心感を持てますね。
◆値動きの確認
REITは、金利動向や景気動向で価格変動します。
一般的に、株式ほどの価格変動はありませんが、それなりに価格変動します。
金利が上昇すると、支払い利息が増加し、配当の原資になる利益が減少し、価格が下落しやすくなります。また、既にブログで紹介したとおり、賃料の現在価値が減じるため、金利上昇は、REIT価格にネガティブに働きます。
また、景気減速によって、オフィス需要が減じると、空室リスクが高まります。
住宅の賃料は比較的、緩やかに変動しますが、オフィスなどの法人需要は、大きく変動する傾向があります。この点も注意ですね。
現状、日本国内では、日本銀行が金融引き締めスタンスをとって、長期金利が上昇傾向です。それに伴って、REIT価格も低迷しています。ある程度、金利上昇に目処が立った段階でREIT価格も底打ちすると期待しています。
価格変動も用途によって異なりますが、REIT指数全体を把握するには、以下のHPが有用です。
株価指数ヒストリカルグラフ -東証REIT指数- 日足チャート | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)
※留意点;増資
REITは、外部成長をするために、増資を行うことがあります。
時価よりも、ディスカウントされた価格で投資家を募集しますので、増資後、しばらくの間は、REIT価格が上昇しにくくなります。(売りたい新規の投資家が増えるため)
多くの銘柄で定期的に増資が行われますが、なかなか、それを事前に避けるのは難しく感じます。
増資を行い、資金調達した資金をより魅力的な物件に投資することで、REITの価値が高まることが期待されるのですが、変な物件に投資したり、REITの需給悪化が懸念されたりすることもありますので、増資には、注意が必要だと思います。
REITは、不動産に間接的に投資するという経済効果があります。
株式や債券と相関が低いため(異なる値動きをする)、資産の一定割合を保有すると分散効果が期待できるとされています。また、前述の通り、REIT指数に連動するETF(上場投信)や投資信託もあり、個別銘柄を調べるのが、面倒な方は、この選択肢もあるかもしれません。
繰り返しになりますが、REITを含め、不動産投資にとって、金利上昇は向かい風になりますので、お忘れ無く。
上場REITは、既に金融引き締めを、ある程度、織り込んでいるかもしれませんが。
次回は、「株価と株式時価総額について」です
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