今年のSell In Mayは?

 

毎年恒例となりましたが、今年のSell In Mayに関するコメントです。

 

翻訳するまでもありませんが、「株は5月に売れ」という米国の投資格言です。

 

 過去のパターンを見ると、夏場から秋に向けて、株価は調整する傾向があり、年末から春先に向けて、株価が上昇しやすい傾向があることから、春に売却して秋に買い戻しすると投資効率が良いという意味合いです。月別の騰落率を見ると概ね、そのような傾向が見られます。

 

さてさて、今年はどうでしょうか?

例年の株価変動に加え、今年はトランプ関税が株価変動を大きくしています。

関税発動で4月初旬に世界中で株価が急落しました。その後、5月にかけて、リバウンドしましたが、先行きは相変わらず、見通しにくいのが正直なところです。

 

日本のGW中でも、映画に対する関税や製薬に対する関税発動を匂わす発言があり、連騰中の米国株式も強気になりきれない展開になっています。

 

4月頃より米国の経済指標で弱いものが目につくようになってきました。

が、多くはソフトデータ(アンケート形式で見通しをヒアリングするもの)で、ハードデータ(現実の統計数値)でサプライズが出たものは、あまりありません。マイナスのGDPが該当するかもしれませんが、関税発動に向けた駆け込みの輸入増加はある程度、織り込まれていたので、大きなサプライズにはなりませんでした。

 

 各企業が、関税の影響を限定するため、在庫を積み増したことで、今のところ、ハードデータには大きな変動は出ていないと言えますね。但し、米小売り大手の経営者の方々がコメントしていますが、6月以降は、在庫が無くなることから、販売価格が大幅に上昇し、棚から商品が無くなる可能性があるとのことです。確かに、アマゾンやウォルマートでは、中国から輸入している財が多く、高い関税の影響から逃れられないという見解です。

 

個人的には、今年の夏以降は、厳しい投資環境になり得ると憂慮しています。

従って、最近のリバウンド局面で現金化を徐々に進めておきたいと思っています。

 

トランプ関税の影響で、対米輸出を主とした企業業績に暗雲が立ちこめることや世界中の貿易量が減少することなどから、スタグフレーションは避けられないように感じています。

 米国中央銀行のFRBは、昨年から利下げを継続してきており、トランプ関税が無ければ、今年も数回の利下げが期待されていました。が、関税による物価上昇懸念から利下げが厳しくなってきています。もちろん、消費や企業の設備投資が落ち込む場合、利下げを期待したいところですが、物価が上昇している環境では利下げは困難になります。景気悪化とインフレが同居するスタグフレーションは、中央銀行の金融政策は無策となり得ますね。

 

トランプ政権は、所得税減税も指向しているようですが、関税の歳入水準との見合いで実現性が変わってくると思います。

 

また、余談ですが、トランプ政権は米国への設備投資を呼びかけています。

が、米国国内向けに限った工場や設備であれば、関税も回避できてある程度、有効かもしれません。しかし、他の地域(アジアや欧州など)へ輸出を視野に入れた場合、米国の高い人件費が負担になる上に、相互関税がかかる地域向けであれば、価格競争力がありません。

購買力はあるものの、3億人の米国のみを対象として投資するのか、米国を除いた世界、80億人弱の人口は、対象外の設備投資なのかという切ない選択肢が出てきます。

 

 関税以外にも、トランプ政権は、デンマークの自治領であるグリーンランド併合やカナダへ対応など、外交面でもギクシャクしています。先日のトリプル安ではありませんが、米国投資(株式も債券も)の魅力の変化も見逃せませんね。支離滅裂な不規則発言が続くと、長期投資家は、リスクを取りにくくなると思います。経済政策にせよ、外交面にせよ、安定した合理的な政策運営が見えないと、安心して長期投資ができなくなります。炭鉱のカナリヤではありませんが、米国の株式、債券(金利)、為替の値動きとゴールド価格のバランスを見ると投資家のリスク許容度が推測できると感じます。株や債券が売られてゴールドが買われる局面は、資金が逃避している可能性が高まります。

 

中東やウクライナ問題だけでなく、インドとパキスタンの紛争も拡大してきています。今後の地政学リスクも気になるところです。

 

結論としては、格言の通り、最近のリバウンド局面は現金化のチャンスと捉えています。

 

 また、例年とは異なり、今年は、夏以降に景気後退が深刻化する可能性を感じます。

それに加え、紛争などの地政学リスクもリスクオフの材料になりますね。

例年ならば、秋口に安値をつけた頃に投資すると投資効率が良いとされていますが、今年に限っては、安いからと言って、買い場になるか、判断が難しい気がします。

長期目線の積立て投資は継続するつもりですが、個別株投資などは、比較的短期で対処せざるを得ないと、現時点では感じます。

 

米国経済が低迷すると、各国に影響が及びます。特に日本の輸出企業の業績が懸念されます。

米国に偏らない地域分散や内需株などへの分散なども視野に入れてゆきたいものです。

 

次回は、「良いインフレと悪いインフレ」の予定です。

 

 

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