ご存じの通り、
PERは、株価収益率とされ、企業利益と株価のバランスを表す指標です。
PER=株価/一株利益(EPS)
または、
PER=時価総額/最終利益
とされ、PERが高いと一般的に株価が割高、低いと割安とされます。
以前、PERの理解に関して、ガッカリしたことがありました。某運用会社の方のセミナーを聞いていたのですが、ロシア株や中国株のPERが低い事象を米国や日本と比較して、割安なので魅力的とおっしゃっていたケースでした。私の認識では、当該国のPERが低いのはリスク要因が複数存在するからであり、先進国の米国や日本と前提が異なっていると認識していました。敢えて、割安水準と述べるのであれば、時系列で過去の水準よりもPERの数値が低いことを指摘しないと合理性がありません。また、PERは、投資家の期待度や熱狂度合いを潜在的に表現しているという側面もありますね。後述のPEGレシオとも関連しますが、将来が期待されている企業や国は、高いPERが正当化され、将来性が乏しいものは、低いPERのまま、放置されるという見方です。市場全体に先高感がある場合や金融相場のように金融緩和や金余りで市場に資金が流入する場合などは、PER上昇によって、株価上昇につながります。
異業種比較がナンセンスなのは、例えば、商社の三井物産と東京ガスを比較して、PERの高低でどちらが割安と判断できないのは、ご理解頂けると思います。
このように、異なる国や異なる業種でPERを比較しても、割安なのか割高なのか、判別することはできません。同業種であってもビジネスモデルや財務体質、PBR(株価純資産倍率)等をあわせて、チェックしないとPERだけで割安かどうかは、判別するのは危険だと思います。
また、PERは、株価を一株利益で除することから、現在の利益の何年分の株価が値付けされているか、という捉え方もされます。この場合は、成長率が加味されていない点が弱点です。
それを補うアプローチとして、PEGレシオという指標があります。
PEGレシオ=PER(株価収益率)/企業の利益成長率(%)
その数値が1以下であると割安とされています。将来の利益成長率が高ければ、足下の高PERが正当化されるという考え方です。
例えば、以下のケースでは、①の方が割安と判断されます。
- PER 30倍 利益成長率 30% ・・・・・PEGレシオ 1
- PER 10倍 利益成長率 5% ・・・・・PEGレシオ 2
もっとも、利益成長率自体が確定した数値ではありませんので、ぼんやりした概算値として捉えた方が良いかもしれませんね。
また、
PER=株価/一株利益(EPS)
この式を変形すると
株価=PER×EPS
となります。
株式市場では、金融相場とか業績相場という捉え方をしますが、この式で一定の説明が可能となります。仮に利益が横ばいでも、金融緩和(金利低下)などで株高期待が高まるとPERが上昇し、株価上昇につながります。企業利益の期待値は、日々、それ程、大きく変動することはありません。しかし、投資家心理(PER)は、刻一刻と変化し株価に反映されていると捉えられます。
また、業績相場の場合は、PERが横ばいであっても、企業利益の伸びが株価上昇につながるというアプローチです。
年明け以降の米国株式市場は、インフレに伴う利上げ観測が強まり、また、ウクライナの問題の深刻化に伴い、PERは低下傾向にあります。企業業績は足下では好調ですが、コスト増によって、先々、利益成長が継続できるか、懸念が出ている状況です。先程の式に当てはめると、PERが低下傾向で企業業績が向上するという確信が不十分ということで、以下の関係にあるように思います。
株価↓=PER↓×EPS?
PERに関して、私の見解をまとめますと
・他市場や他業種との比較はナンセンス
・同業種でも、諸条件が異なるため、複数の指標でチェックすることが好ましい
・企業の利益成長率を考慮すると、割安/割高の見え方が変わってくる
・株価=PER×EPSの関係式で、株式市場の立ち位置が理解しやすくなる
・PERは、市場の熱狂度合いや期待値を内包している面もある(投資家心理)
・PERが低いから単純に割安であると判断するのは危険である
PERに限らずですが、指標の正しい理解は大事ですね。
次回は、「有事のゴールド」の予定です。
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