ご存じの通り、株価は日々刻々と変動しています。
そもそも、「株価は変動するものだ」という固定観念を持ってしまいますが、今回は日々の株価変動の背景を考えてみたいと思います。
日本では、午前9時から株式の取引がスタートし、午後3時に取引所の取引が終わります。その間、個別株式では、上下に5%程度以上変動することは珍しくありません。また、日経225やTOPIXといった指数も1%程度上下することも頻繁に見かけます。
1日や数日程度の期間で、株価の基になる企業価値や業績がそれ程、変化するものでしょうか?
基本的に、「否」と考えます。
株価変動を指標面から考察してみます。
株価収益率(PER)という投資指標があります。それを変形させることで株価の構成要素の一面が見えてきます。
PER(株価収益率)=株価/EPS(一株利益)
株価=PER(株価収益率)×ESP(一株利益)
PERは、株価の割安割高の判断材料として使われることが多い指標です。株価が企業利益の何倍の評価になっているかというアプローチです。これによって、今の株価が利益の何年分に該当するのかということが可視化されます。また、その企業に対する期待値が高いのか、低いのかを判断するアプローチという面もありますね。但し、異なる業種や国のPERを比較しても、前提条件が異なるので適切とは言えないと思います。一方、同一業種の類似企業間での比較、該当企業の過去のPERを時系列に見てみることは有用だと思います。とは言え、業績への期待値が高まってPERが上昇しているのか、単に一時的に人気化しただけかなどの背景の分析は欠かせないと感じます。
EPSは、企業の利益を発行済み株式数で除したものです。つまり、企業の利益が伸びて大きくなればこの数値も基本的に大きくなります。また、同じ利益水準であれば、発行済み株式数が少ない方が数値は良くなります。
改めて、式を見てみると、株価はPERとEPSを掛け合わせたものであることがわかります。
株価=PER(株価収益率)×ESP(一株利益)
EPSは、企業の利益水準ですから、毎日のように大きく変動するものではありませんし、ましてや、分単位で変動するものでもありません。確かに新商品導入、大規模な設備投資などの要因で将来の利益が変化することはあり得ます。また、決算発表で翌期の見通しなどを通して、利益水準の変化を株価が織り込むことはありますが、結論としては、企業の特別な意思決定がなければ、EPSの日々の変化は大きくないと言えます。
一方、PERは、どうでしょうか?
前述の通り、PERは企業に対する期待という一面があります。更に、私は、投資家心理の状態という一面も感じています。投資家心理が良好で楽観的なスタンスの場合は、高いPERが正当化され、ESPが変化しなくても株価は上昇する傾向が高くなります。逆に、何らかの理由で投資家心理が悪化するとPERが低下し株価下落となります。日々の株価変動は、基本的にはPERの変動、言い換えると、投資家心理の変化で起こっていると捉えています。
別の視点ですが、
株価=PER(株価収益率)×ESP(一株利益)
この式の場合、赤字企業はどう評価されるでしょうか?
EPSがゼロまたはマイナスな訳ですから、株価はゼロや負の値をとってもおかしくありません。実際には、赤字企業は、低い水準の株価であっても、取引されています。
これは、企業の純資産がプラスであるからと私は認識しています。
企業の保有する資産から負債を控除したものが純資産です。その純資産を発行済み株式数で除したものがBPS(一株当たり純資産)となります。赤字企業であっても、債務超過で無い限り、解散価値が残ることになります。その価値が株価に反映されていると考えます。
財務理論上の話ですが、基本的に金利上昇は株式にネガティブに働きます。
昨年、米国で利上げが継続され、株価が低迷しました。政策金利は、決定会合次第ですが、
長期金利は日々変動します。金利が大きく動くと前述のPERの議論以外の要素も影響を及ぼします。今回は、株価変動を単純化するために金利の話は省きました。次回、金利と株価の関係についてコメントする予定です。
ファンダメンタル重視の中長期投資は、「基本的に株価は長期的には企業価値に収斂する」という考え方です。投資家心理によるPERの上下はある意味、ノイズに近い存在として認識し、短期的な価格変動にはあまりとらわれないというスタンスですね。逆に、短期の投資家は、株価変動が収益の源泉なので、PERの上下による価格変動は大歓迎の立場だと思います。短期の需給バランスを重視するスタンスですね。
別のアセットクラスですが、為替も大きく変動します。専門分野ではないことをお断りして、少しだけコメントしてみます。
為替は、短期的には、相対的な金利変動、マクロ経済指標、要人発言、地政学リスクなどを背景に値動きがあるように感じています。長期的には、購買力平価(インフレを考慮した物価)に収束すると言われています。為替が株式と異なるのは、為替水準を評価するバックボーンになる具体的な指標がないことが指摘できます。株式評価でPERやESP、BPSが万能かと言えば、必ずしもそうではありませんが、一応の目処にはなっているように思います。
為替は、長期的には購買力平価に収斂し、中期的には、経常収支や貿易収支などの影響を受けると言われています。確かに、実効為替レートのような目安はありますけれど、実際の為替レートと乖離していることも多く、現状の為替の適正水準を推測することはなかなか困難で、株価のように割安水準や割高水準であると判断することも難しいと感じます。為替市場は、株式市場以上に大きな市場で、且つ、プレーヤーも世界中の金融機関や事業会社や富裕層などの実需と仮需の資金が動く市場なので、とても奥深く、様々な思惑に基づいた需給で為替水準が変動すると私は感じています。為替が難しいのは、金利が重視される局面、国の信用力が重視される局面、国の成長率が重視される局面、地政学リスクが反映されやすい局面など、その都度、重視されるファクターが変化することだと思います。専門家の方の株価予想もあまり的中しませんが、為替は予測がより困難に思われます。
株価も為替も日々変動していますが、理論的な背景の一端を整理しておくと、少し見方も変わってくるかもしれませんね。
来週は、「金利が上昇すると、何故、株価は下がる?」の予定です。
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