何故、株価は動く?

 

4月に入り、日米株式市場とも上値が重い展開となっています。

 

 米国では、インフレ沈静化が遅れ、6月利下げ、年内3回利下げの期待が後退してきているようです。昨年から利下げ期待で株価が上昇してきた面もあるので、利下げ期待後退を織り込んでいるのが現状だと思われます。一定水準までの株価調整か、利下げ期待復活が次のステージに入るためには、必要な気もしています。

 

さて、日々、取引されている株式ですが、何故、株価は変動するのでしょうか?

 

企業の業績や経済指標などで株価は変動するものですが、今回は、数式を用いて整理してみたいと思います。証券理論や財務理論の視点を簡潔にコメントします。

色々な切り口はありますが、シンプルな切り口だと以下の式で株価は表現できます。

 

 

株価=EPS(一株当たり利益)①×PER(株価収益率)②

 

  • EPS(一株当たり利益)とは、企業決算による利益総額を発行済み株式数で除し、一株当たりの利益を算出したものです。企業の利益が株価の裏付けになりますから、EPSが高ければ高いほど、高株価が正当化されます。来期以降の予想利益も重視されますね。

 

  • PER(株価収益率)は、「株価が一株当たり利益の何倍になっているか?」という関係です。

以下の式となります。

 

PER =株価/一株当たり利益

 

  PERの解釈は、色々な視点があります。

 

   ■数式の通り、現在の株価が利益の何年分に該当するか?という捉え方

  ■複数銘柄を比較する場合(留意点はありますが)、割安度、割高度を判断する捉え方

  ■企業の利益や経営に対する期待値の高低という捉え方

 

 

◇利益の何年分に該当するか?という捉え方

 

現在の利益と将来の利益の水準の違いがポイントになります。PERが高く、数十年分の利益に該当する株価というケースがあったとして、今後の利益成長率が高ければ、現在の一株当たり利益だけでは判断できないことになります。極端ですが、毎年、利益が倍増するような企業があった場合、高いPERでも、成長力を考慮すると、割高とは言えないことになります。逆に利益が微増、または、減少傾向の場合は、PERが低くても割安とは言えないかもしれません。

 

 

◇複数銘柄を比較する場合、割安度、割高度を判断する捉え方

 

企業を比較する場合、PERが低い方が割安であるとされています。但し、留意点もあり、少なくとも同一業種間で比較しないと、判断を誤りかねません。安定成長の電力会社と需要が伸びている半導体企業のPERを比較して、どちらが割安かと議論してもナンセンスですね。

 

更に言えば、同一業種であっても、ビジネスモデルが異なる場合、潜在的な成長率が異なることも多く、あくまでも参考程度の比較にとどめた方が良いように感じています。

但し、同一企業の時系列(過去からの推移)のPERの推移は、参考になると思います。業績見通しが明るい時は、PERは高めに推移する可能性が高く、逆の場合は、低めの推移になりそうです。

 

 

◇企業の利益や経営に対する期待値の高低という捉え方

 

個人的には、この捉え方が一番、シックリきます。

 

利益成長率が高く、将来の利益の伸びが期待できる企業の場合は、同一業種であっても、いまいちの企業よりも高PERが正当化されるという考え方です。利益成長率だけでなく、企業のガバナンスや経営スタンスも、投資家からの信頼度という面で影響がありそうです。当然、経営陣への信頼度が高い企業のPERが相対的に高くなる傾向がある印象です。

 

 

 

さて、本題の株価変動についてです。

 

現在、企業は四半期決算(3ヶ月ごと)の開示を行っています。四半期決算の翌月から翌々月に開示されます。(3月決算の場合、4月から5月頃の発表が多くなります)

来期予想を開示している企業、していない企業があります。

 

従って、日々の価格変動に関しては、企業の利益変動による影響は限定的と言って良いと思います。毎日、決算発表をするわけではありませんからね。

もちろん、画期的な新製品発売や業務提携、M&Aなどのイベントがあれば、株価変動に大きな影響を及ぼします。一般的には、企業利益は日々、大きく変動するものでは無いとの理解で良いと思います。

 

一方、PERに関しては、日々、もっと言えば、刻々と変化するものであると感じます。

PERは、上記の特徴に加えて、投資家心理を反映している面もあります。外部要因が好転し、株価上昇トレンドになっている際には、投資家心理は好転し、高いPERでも買いが続きます。また、過去の日本市場でも構造改革が期待される局面で、海外投資家の資金流入が顕著になりました。これも、日本市場や企業への評価が向上し、それがPERの上昇につながって、株価上昇となったと捉えています。過去のPER(例えば、TOPIX)の水準は、参考になるものの、大きな変化が起きた場合は、その限りではないと思います。

 

改めて、先程の式を見てみます。

 

株価=EPS(一株当たり利益)×PER(株価収益率)

 

EPS自体は、日々、変動するものではありません。

従って、EPSが変動しないとすれば、PERの変動で株価は動くことになります。

 

前述の通り、PERは、株価評価という面だけでは無く、投資家心理が反映されている面もあります。長期的に、企業価値(株式時価総額)は、企業利益に連動すると言われているのは、PERの水準は移ろいやすく変動しがちなので、レンジでの推移だとしても、EPSが伸びていることで、高株価が正当化されるという考え方です。

EPSもPERも変動しなければ、株価は動きませんね。

 

結論として、PERは、投資家の感情、需給の反映でもあると、個人的に感じています。

 

現在は、米国の金利上昇で、日米とも投資家心理が悪化しつつあり、投資マインドが減退気味、言い換えると、PERが低下傾向にあるように認識しています。

 

 

次回は、「最近のゴールド価格上昇について」の予定です。

 

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