金融商品を検討する際、リスクと期待リターンの把握は欠かせません。
一方、投資を決定する前に、コスト水準を確認する重要性は言うまでもありませんが、意外と情報を得ることが難しいケースも少なくありません。
金融商品を評価するには、様々なアプローチがあります。
今回は、比較的、客観的に把握しやすい「コスト」の面から考えたいと思います。
当然、不相応な「コスト」を投資家が負担することになれば、(開示されていても、されていなくても)リターンは犠牲になります。
もっとも、その「コスト」の情報開示が不十分だと、投資に値するのかどうか自体が、判断できませんね。
「コスト」の問題には、「コストに関する情報開示が不十分」と「期待リターンに対して高コスト」の2つの切り口があると思います。そもそも、金融商品である以上、一定のコストがかかるとは言え、その水準が把握できないと良い商品かどうかの判断もできません。
奥の深い論点になりますので、前編と後編に分けてお伝えします。
あくまでも、個人的な見解で、個々の商品自体を非難する意図はありません。
また、特定の金融機関を評価するものではないことをご理解ください。
【期待リターンに対して高コストに感じる商品】(前編)
こちらは、基本的に事前にコストが把握できることが前提となります。
■外貨預金
■バランス型投資信託(販売手数料、信託報酬が高い)
■債券型投資信託(販売手数料、信託報酬が高い)
【コスト開示が不十分に感じる商品】(後編予定)
事前に総コストの把握が困難のため、期待リターンとコストのバランスが不明です。
■生命保険関連商品
■私募不動産投信
■仕組み系商品
■その他金融商品
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■外貨預金
外貨預金は、為替手数料が高コストです。
現在、外貨建てMMFや海外資産に投資する投資信託、FX(為替証拠金取引)などを通じて、低コストで外貨建て資産に投資できますので、コスト面から私は後者を選択します。ネット銀行やインターネット経由で、為替手数料がディスカウントされたものもあるようですが、根本的に為替水準に関わらず、定率ではなく、定額(片道50銭など)なのが、納得できない理由です。例えば、某銀行のHPを拝見すると、トルコリラの為替手数料は窓口で片道2.5円です。そもそも、トルコリラ/円は、7.6円近辺です。(2022年8月現在)このケースだと往復で5円のコストがかかります。豪ドルの場合でも窓口の為替手数料は、片道2円です。豪ドル/円の水準は、95円近辺です。私の認識が間違っていなければ、理解できないレベルの手数料水準だと感じます。尚、実務ベースでは、外貨の受け皿(外貨を円転するまでの受け皿など)としての機能が中心のようです。このようなケースは、有効な活用方法だと思います。投資対象として、検討するには高コストだと思います。
■投資信託(販売手数料、信託報酬が高いもの)
投資信託は、相対的にコストの情報開示が進んでいる金融商品です。
投資対象や運用手法などによって、一応、コストの相場水準が存在します。
こちらの論点は、適切ではない販売手数料や信託報酬の水準が挙げられます。私は、販売手数料や信託報酬は、期待リターンとのバランスが重要であるとかねてから思っていました。
例えば、期待リターンが年率1.0%(信託報酬控除後)のファンドがあったとします。この場合に、販売手数料が3.3%だった場合、順調に運用がなされたとしても、累積リターンでカバーするのに3年程度かかってしまいます。金融機関も営利企業なので、ノーロード(販売手数料無し)という訳にはいかないと思いますが、個人的には、期待リターンが年率1.0%の商品であれば、販売手数料は1.0%未満、どんなにひいき目に見ても、1.5%が上限だと感じます。
また、現在、米国国債10年ものの金利水準が3%を超えてきていますが、今年の前半までは、2%を下回っていました。仮に信託報酬が2%近い債券型投資信託だと、販売手数料がノーロードであっても、債券の金利収入(インカム)部分のほとんどが、信託報酬に消えていきます。特に過去、高金利時に設定されたファンドは、現状では、インカムや期待リターンとコストのバランスが崩れているケースも少なくないので、気をつけたいものです。
また、運用会社の肩を持つ訳ではありませんが、以前の信託報酬の水準は現在と比較して、相対的に高いものでした。年々、信託報酬の水準は低下してきています。従って、長いトラックレコードのファンド(昔、設定されたファンド)は、現在と比べ、信託報酬の水準が割高に見えるという背景があります。とは言え、投資家としては、他の条件が同一ならば、コストが低い方が好ましいので、高コストの投資信託は、私は遠慮させていただきます。
株式の投資信託では、販売手数料が3.0%(税込み3.3%)のものもあります。高いか安いか、と言えば高いと言って良いと思いますが、仮に優秀で勤勉な金融機関スタッフの皆さんの十分なフォローが期待できるのであれば、必ずしも高いとも限りません。売買のタイミングや投資手法などの良質なアドバイスを受ける対価として考えるとリーズナブルと捉えることがあるかもしれません。
バランス型投資信託の中には、ヘッジファンド的な運用手法で、信託報酬が高水準のものもあります。個人的には、期待リターンとのバランスがやや悪いように感じます。仮に2%程度の信託報酬(マネジメントフィー)ならば、フィー控除前の期待リターンは、5%以上は欲しいところです。(この場合、5%-2%=3%程度が投資家のリターンとなります)
このように、期待リターンとコスト(販売手数料、信託報酬)のバランスが良くない商品も現状、少なくありません。ご参考までに、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2020年から適用した資産ごとの期待リターンを記載します。
《各アセットクラスの期待リターン》
国内債券:0.5%程度
海外債券:2.5%程度
国内株式:5.5%程度
海外株式:7%程度
対人営業の金融期間の個人投資家向け投資信託であっても、せめて、信託報酬と販売手数料の合計が上記の数値を下回っていて欲しいものです。(理論的には、合計が下回っていれば、1年後にプラスになる可能性が高まります)
ここ数年、販売手数料無し(ノーロード)で信託報酬が低率のインデックスファンドが人気化し、残高が大きく増加しているのは、もっともなことだと思っています。とは言え、アクティブファンドの健闘も期待しています。コスト控除後のリターン向上に努めて頂きたいものです。
次回は、「個人的に投資を避けたい金融商品(後編)」です。
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