個人的に投資を避けたい金融商品(後編)

 

 前回は、外貨預金と投資信託のコストに関してのコメントをしました。

今回は、生命保険商品や私募不動産投信、仕組み系商品についてお伝えしたいと思います。

 

こちらのカテゴリーは、「コスト」の情報開示が不十分な部類に属すると思っています

尚、生命保険商品や私募不動産投信の一部は、相続の際、節税効果を得られるものがあります。

 

前回からの議論の通り、投資商品のコスト自体が適切な水準かどうかわからないと、期待リターンが適切かどうか(本来得られるリターンがコストの犠牲になっているかもしれません)も判断できません。

 

金融機関勤務の知人、友人に嫌われそうですが、今回も宜しくお願いします。

 

【コスト開示が不十分に感じる商品】

 

事前にコストの内訳の把握が困難のため、期待リターンとコストのバランスが不明です。

 

■生命保険関連商品

■私募不動産投信

■仕組み系商品

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■生命保険関連商品

 生命保険関連商品は、多くの方が加入され、日本ではもっとも一般的な金融商品のひとつです。もちろん、私も終身保険や医療保険に加入しています。毎月、保険料を払い込むため、月々の負担感はそれ程でもないかもしれませんが、総額を考えると人生で住宅に次ぐ大きな支出となります。その一方、加入の際に、十分にコストとベネフィット(リターン)を検証しないケースは少なく無いと思います。私もそうでした。

 

これらの生命保険関連商品は、税制面から様々な面で優遇されており、該当する方にとっては、商品性というよりも税制面でのメリットが優先するケースもあるかもしれません。

年末調整で生命保険料控除があるだけでなく、相続税課税評価でもメリットがあります。

 

《死亡保険金の控除》

500万円×(法定相続人数)

 

現預金や有価証券では、相続に際し、死亡時の控除はありません。死亡保険金の場合、法定相続人1人当たり500万円の控除があり、該当する人数が多い場合は、特にバカにならない金額になります。仮に配偶者の方とお子さんが3人いる場合、500万円×4人で2,000万円の控除額です。また、法人で生命保険に加入した場合、損金計上が可能なケースもあり、節税の手段として活用されているようですね。

 

その一方で、コストに関してはどうでしょう?

 

生命保険は、「純保険料」と「付加保険料」で構成されています。

「純保険料」は、実際の保証や貯蓄に回る部分で、「付加保険料」は、運営コストとなります。投資信託で言えば、「付加保険料」は、信託報酬、場合によっては販売手数料も該当するかもしれません。ライフネット生命がこの保険料の開示を行っているようですが、他の保険会社は、開示を実施していません。支払った保険料から「純保険料」に充当される部分と「付加保険料」に充当されるコストの部分の割合が不明では、本来、加入すべきかどうかを判断できないように思います。

 

「信託報酬がわからない投資信託に投資できるのか?」という視点ですね。

 

極端な例ですが、「純保険料」が30%で「付加保険料」が70%だったら、かなりの負担率になりますね。実際のところは、情報開示されていないのでわかりません。

 

仮に私が、今後、生命保険に加入する場合は、付加保険料を開示している保険会社の低コストの保険か、都道府県共済のような保険を考えたいと勝手に思っています。

 

 

■私募不動産投信

 

 不動産投資関連のSNSを覗くと、私募不動産投信に関する投稿が多いことに気づきます。

 

これらは、不動産関連企業が独自に投資家から資金を集め、不動産に投資することで、そのリターンを投資家に配分するものです。多くの場合、運営会社も証券化商品も上場していませんし、スキームを含め条件も様々です。

 

試しに、ある会社のHPを見ると、期間5年、想定利回り7%などと紹介されていました。因みに、J-REITの平均利回りは、2022年8月現在、4%弱程度の水準です。従って、何らかのリスクがあり、その分のプレミアムが加わっていると考えられます。

 

不動産の実物投資では、不動産取得税、固定資産税、都市計画税、印紙税などの租税公課だけでなく、住宅の場合は、修繕積立金や管理費などの費用がかかります。管理を委託する場合には別途、管理費などの負担も必要です。実際の修繕費や電気系統などのメンテナンス費用も必要です。それらに加えて、不動産投信の場合は、運用委託先に対する報酬も発生します。これらのコストは、潜在的に又は、具体的に負担することになります。

 

投資を検討するつもりで、各社のHPを拝見しても、それらのコストの明細や概算値の記載がありません。従って、上記の5年で7%の想定利回りが適切なのかどうか、判断できません。

 

で、あるならば、情報開示が進んでいて、一定のガバナンスが効いている上場不動産投信(REIT)やREITを投資対象にした投資信託の方が多少、期待リターンが低くても、流動性や運営者の破綻リスクなどの点から商品的には優れているように感じています。

 

しかしながら、視点を相続税の課税評価という点に移すと違った景色が見えてきます。

生命保険商品と同様、税制のメリットが存在します。

 

任意組合型不動産ファンドの相続税の課税評価は、実物不動産と同様で、優遇されています。土地評価は実勢価格の約8割の路線価、建物は固定資産税評価額で計算するため、現預金を保有するよりも節税効果が高くなります。また、「貸家建付地」や「小規模宅地」に該当すれば更に評価は減額されます。一方、REITの相続税課税評価は、有価証券の株式と同様とされ、特段の優遇措置はありません。何か、釈然としませんね。

 

経済合理性の点から、相続税課税評価が大幅に減額できるのであれば、運営コストが高くても無視できるという投資判断も可能かもしれません。とは言え、人口減少が加速している環境下で相続税課税評価の優遇が継続しているのは、不動産の供給過多を誘発しかねないため、マクロの視点では、見直しの検討が必要な気もしています。人口増加で安定した住宅供給の重要性が高かった時代ではありませんからね。

 

生命保険も私募不動産投信も同様ですが、「相続時の優遇」がある一方、「コスト」の開示には積極的に見えません。純粋に投資対象としての金融商品と見るか、相続税対策としての金融商品として見るかで評価が分れそうですね。

 

また、これらを検討する際には、将来的に相続税課税評価の方法が変更されるリスクも念頭に置いておきたいものです。

 

 

■仕組み系商品

 

 仕組み債や仕組預金が該当します。実は、これらの商品はかなり複雑で、プット・オプションのショート・ポジションから得られるプレミアム分をインカムに充当している商品です。個人的には、そもそも、プレミアム評価の把握が困難であるという点とコストがクリアでない点から距離を置きたい商品です。

 

例として、個別株仕組み債で、ソフトバンクグループ(9984)の3ヶ月満期、ノックイン価格が5,000円、クーポンが年率15%だとします。(時価を5,600円とします)

同様に、米国株のテスラ(TSLA)が対象で3ヶ月満期、ノックイン価格200米ドル、クーポンが年率20%という条件のどちらが魅力的でしょうか?(時価を270米ドルとします)

 

これだけでは、どちらが有利か判断できません。

 

実際の個別株のオプション・プレミアムが幾らで、組成に関係する金融機関への手数料が幾らかという前提条件がわからないと、どちらが良いか判断するのは無理ですよね。年率15%や20%という水準は、魅力的なのですが、考えられるリスク/リター/コストのバランスが適切なのかどうかを把握してからでないと投資判断できないと思います。

 

3%の期待リターンがあることを前提として、負担するコスト(手数料)が0.5%なら、許容できても、負担するコストが4%としたら、私はコストをもっと下げて欲しく感じます。仮に実リターンの7%の金融商品を金融機関の手数料と投資家のリターンに配分するのであれば、手数料を2%に下げてもらえれば、期待リターンが5%にアップするケースも考えられます。

 

ということで、私の個人的には、コスト(手数料)の開示が十分でない商品については、税制面を別とすれば、投資を避けたいと思っています。

 

基本的にどの金融商品でも同じですが、利害関係者が増えれば増えるほど、コストはかさみます。よりシンプルな商品の方がコストは低くなりますね。コストが高めでも、それに見合ったリターンが期待できるのであれば、投資対象になり得ますけれど。

 

今回のブログも、個人的な見解で、個々の商品自体を非難する意図はありません。

また、特定の金融機関を評価するものではないことをご理解ください。

 

 

次回は、「コア・サテライト投資の考え方」の予定です。

 

当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。

いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。

内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。