元金融マンの投資生活 その1

 今回と次回は、複数の金融機関に勤務していた私の経験と当時の伝聞を踏まえ、金融マン・金融ウーマンの投資活動についてお伝えしたいと思います。今回は、投資に関わる規制や資産ごとの制約について、次回は私の失敗談を含めた投資経験の予定です。私見に基づくものなので、偏りがあることをご承知ください。

 

金融機関に勤務していると、金融商品の販売業務に携わることが多いことやインサイダー情報の触れる可能性もあることから、投資活動に様々な制約がかかります。

各業種、企業、職種により、投資制限や規制も様々ですが、法令に沿ったものになっています。

 

基本的に投資に関わるルールは、インサイダー規制の問題と投資家との情報格差是正、証券事故の回避などの視点から定められているものと理解しています。金融商品取引法に基づき各社ごとに社内ルールが定められています。

 

 

《個別株式》

 

証券会社では、個別株式に関しては、事前申請し、承認後に発注する手順でした。また、保有期間に関して規制があり、1ヶ月から数ヶ月の継続保有が義務づけられていました。背景は、インサイダー規制に関わる役職員の義務という位置づけだと理解しています。当然と言えば、当然なのですが、証券会社勤務の場合の株式注文は、自社への発注に限られていました。ネット証券などと比べ、委託手数料が割高になりましたが、やむを得ない点でした。

運用会社でも、個別株式に関しては、ファンドの投資内容を把握しやすい立場ということから、より厳しい規制だったような記憶があります。それ故に、私は、個別株式の売買は控えていました。

 

また、証券会社の場合、職種によって、インサイダー情報により接する可能性のある法人関係部門や投資情報部門が保有期間や投資対象がより厳しく、通常の営業職を含む一般業務はそれ程でも無かった印象です。銀行でも、融資に関係する部門の方の規制が厳しくなる傾向があると思います。

 

保有期間の規制があるということは、マイナス効果もプラス効果もありました。購入した株式がみるみる下がっても、見ているだけという切ない思いも数多く経験しましたし、逆に、上昇していても売却することができないので、かえって含み益が拡大することもありました。保有期間の規制があるため、中長期の視点で銘柄選択をせざるを得ない立場だったので、結果は別として、かなり慎重に銘柄選択や投資のタイミング(株価水準)を検討した記憶があります。投資制約がないと、「いつでも取引できる」、「常に取引をしなければ」という非論理的な投資行動も出てきますね。また、値下がりした場合でも、保有期間の制約があると、含み損が生じても、一定期間は保有せざるを得ないわけで、不要な損失確定の売却が防げた面もありました。なかには、損失が拡大して回復しなかったケースもありましたけれど。

 

また、旧・証券取引法の時代から、証券会社勤務の人が他の証券会社に注文を発注することは、相場操縦などの可能性があることから、禁じられていましたが、金融業界が大きく構造変化したことから、証券会社勤務でも他社で株式以外の投資は可能になりました。(違っていたら済みません)従って、自社の取り扱いのない投資信託や債券を他社で購入することも可能であったと理解しています。(やや、弱気な言い方ですね)

情報入手という意味では、確かにQUICKやブルムバーグといった情報端末に接することができ、一般の投資家の方よりも情報収集の面では大きく恵まれていましたね。だからといって、投資成果につながるかというと、私を含めて、それは別だったという印象です。

 

 

《投資信託》

 

個別株式と異なり規制は厳しくありません。私の勤務していた運用会社の場合は、自社商品購入のみ、事前申請が必要、他社の商品は規制なしというルールでした。どこの金融機関で取引しても問題なしです。実際のところは、会社によってルールは異なっているようでしたね。

 

対面証券会社では、営業職員は、お客さまに商品を販売する立場ですが、気に入った商品を自分自身で投資するケースも少なくなかったと思います。投資信託に対する投資の規制ですが、特に保有期間や事前申請も必要なかったと記憶しています。

上記の通り、株式発注以外で他の証券会社の取引は規制されていない(はず)なので、ネット証券やネット銀行で、ノーロード(販売手数料)無料の投資信託を積立したり、スポットで投資したりすることは、可能であったと認識しています。株式には、保有期間の規制がある一方、投資信託に関しては、特段の定めがないので、短期でも対処できる利便性がありましたね。

 

 

《債券など》

 

インサイダー情報による影響が限定的(少しはあると思いますが)、という位置づけで、特に制約はなかったと思います。他国の国債などに関しては、インサイダー情報入手を議論すること自体、ナンセンスですもんね。但し、新発の債券などは、当然、お客さま優先なので、社員が投資できるケースはなかったと思います。

 

 

《FX、仮想通貨など》

 

「投機性の高い投資対象に対する投資は控えるように」というややぼんやりしたルールは、どの金融機関でもあると思いますが、実際のところは、個人の自己判断に任されているケースの方が多いように感じていました。社内外を問わず、投資している人達は、それなりにいましたね。

 

 

《実物不動産など》

 

これは、有価証券ではありませんので、どの金融機関でも規制はないと思います。なかには、投資不動産や太陽光発電などで上手に運用されていた方もいました。

 

 

 以上のような規制はあるのですが、そもそも、金融機関に勤務されている方でも、投資に熱心なタイプと全く興味がないタイプに分かれていたように思います。

私は、前者でしたが、興味がないタイプの方々は、確定拠出年金などでも預金だけというケースも多いようでした。「自分自身でリスクをとってリターンを得る体験をせずに、投資アドバイスをするというのは、如何なものか?」と感じなくもありませんね。

仕事の業務内容と個人の嗜好を他人がとやかく言うべきではない面はありますけど、できれば、投資による痛みを知っている方に投資アドバイスをして欲しいものです。

 

 

 

次回は、「元金融マンの投資生活 その2」をご紹介したいと思います。

 

当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。

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