安定運用の投信でも元本割れする?

 

結論から、申し上げると、安定運用であっても、元本割れすることがあります。

 

今回は、投資信託の話題です。

 

 基本的に、投資信託は、価格変動のある資産(株式や債券)に投資するため、ファンドの基準価額も上下に変動します。また、株式や債券、為替の価格変動リスクやカントリーリスクなどを内在しています。

 

「S&P500」や「オルカン(全世界株式)」と言った株式インデックスファンドは、海外の株式に投資を行うため、株価変動リスクや為替リスクがあって、大きく上昇する期待がある一方で、下落する可能性もあることは、多くの投資家が認識されていると思います。

 

一方、「バランスファンド」と呼ばれる複数の資産に投資をする投資信託も存在します。

株式の組入れもあるものの、債券中心の運用で安定した運用をアピールしています。

 

 ファンドによっては、内外のREIT(不動産投資信託)やコモディティ(商品)を組入れています。通常の環境であれば、各々の資産の相関が高くないため、リスクが低下するという建付けです。例えば、債券の比率が50%、株式の比率が30%、REITの比率が20%といったタイプです。ものによっては、為替変動リスクを排除するために為替ヘッジをするケース(ヘッジコストがかかります)、マーケット環境に応じて、組入れ比率を可変にするなどの味付けをしているファンドもあります。

 

一般的に、株高、円安、金利低下局面では、安定したパフォーマンスが期待できる傾向にあり、それが逆に出ると、元本割れのリスクが出てきます。

 

 金融機関で投資信託の販売業務に携わっている方々でも、商品に関する理解が十分でないケースもあるので、確認しておきますと、「安定運用」というのは、あくまでも、価格変動が株式等に投資する積極運用と比べて、小さいという意味合いです。決して、下落しないとか、元本割れしないという意味合いではありません。言い方を変えると、リスクが低い(標準偏差が小さい)商品と言えますね。

 

 実際、運用会社の商品開発の方々が工夫して、様々なタイプのバランスファンドを提供しています。円高に備えて、債券部分に為替ヘッジをしたり、価格変動に応じて、組み入れ比率を調整したり、色々と意図を感じます。

 

ところが、相場環境というか、商品組成の前提としたマーケット環境が崩れると、結構、厳しい結果になることもあります。

 

私の知る範囲でも、円高に備えて外債部分に為替ヘッジをしたバランスファンドがありました。

 

為替ヘッジは、為替の影響を排除できるものの(逆に円安メリットは放棄します)、日米の短期金利差がコストになり、金利差が拡大するとバカにならないコストが生じます。

 

ここ数年来、米国の金利が上昇し、為替が円安となりました。

 このファンドの場合は、為替ヘッジのコストが上昇、米債の価格下落(金利上昇のため)、ヘッジをしているため、ヘッジ部分では円安メリットを受けられないという逆風が吹きました。私の理解では、このファンドは、円高局面で円高の悪影響を排除するという前提で設計されたと思っています。

前提としている相場見通しを投資家に直接的に伝えられれば良いとは思いますが、目論見書等でも明示することは、難しいようです。金融機関の販売現場では、なおのこと、理解が十分であるとは思えません。

 

 また、バランスファンドは、価格変動を抑えて安定した運用を目指す目的ですが、想定外の金融パニックが起きると、元本割れを余儀なくされます。基本的に、基準価額が下がりにくい建付けですが、仮にリーマンショックのような激震が来た場合、無傷では済みません。

 

また、下がりにくいというのと、表裏ですが、一旦、下落すると基準価額の回復に多くの時間がかかるという特徴もあります。リーマンショックの際は、株価も為替も大きな変動が生じ、株式投信等でも、短期間で▲40%や▲50%というものも少なく無かった記憶があります。

 

 但し、同ショックも傷は深かったものの、比較的、短期間でマーケットが落ち着きを取り戻したため(とは言っても、1年半程度はかかりました)、下落した株式も回復して行きました。一方、バランスファンドは、債券の組み入れが大きいため、基準価額の回復には、より長い時間がかかった記憶があります。

 

バランスファンドは、ある意味、できあいの「幕の内弁当」のような印象です。

現在では、様々なインデックスファンドが誕生しているので、ご自身のリスク量や嗜好に合わせて、組み合わせることができれば、そちらの方がベターかと思います。

 運用コストである信託報酬もインデックスファンドを組み合わせた方が低コストになりますね。「幕の内弁当」だと、足下の経済環境に適していない資産が組み込まれている可能性もあります。また、ご自身で組み合わせた場合は、適宜、各資産のファンドを解約したり、買付けしたりする機動性も確保できますね。「幕の内弁当」の場合は、我慢して保有するか、解約するか、追加投資するかの三択しかありません。

 

 債券ファンド(債券部分)は、基本的に投資先の金利低下がプラス、金利上昇がマイナスです。また、現地通貨高(円安ドル高など)がプラス、現地通貨安(円高ドル安)がマイナスです。今後の見通しを踏まえると、債券投資に向いている局面、向いていない局面があることがわかると思います。米国を例にとると、関税が発動されるとインフレが再加速し、金利が上昇してゆく可能性があります。前述の通り、このケースが起きてしまうと、債券が売られる訳ですから、バランスファンドの外債部分にはネガティブとなります。

 

比較的、金融知識が十分でない高齢者の方がバランスファンドに投資されている印象です。

販売員の方が「安定運用だから安心です」というセールストークを聞くと、クラクラします。

価格変動が小さいことが安心につながるとも言えないと感じますね。

運用会社の商品開発の方を擁護する訳ではありませんが、一応、各ファンドには、前提とする相場環境を基に、商品設計がなされています。ところが、なかなか、投資家には伝わっていないのが切ないところです。

 

 可能であれば、個々人の方々が金融リテラシーを向上させて、ご自身で資産配分を決め、独自のポートフォリオ構築をしたいものですね。これは、個別株投資も然り、インデックスファンド投資も然りです。リバランス(資産配分や銘柄の入れ替え)も適宜可能ですもんね。

 

次回は、「日本人は、何故、預金が好きか?」の予定です。

 

 

当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。

金曜日が休日の場合は、お休みします。

 

いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。

内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。

 

尚、HP下部にInstagramのリンクを用意させて頂きました。

基本的に毎日、日米の金融マーケットに関する投稿、不定期で投資やライフプランに関する投稿をしています。是非、ご覧ください。