対決! テクニカル分析VSファンダメンタル分析

 

「テクニカル分析とファンダメンタル分析のどちらが優位か?」という株式運用に関わる議論は、古今東西、続いており、未だに結論は出ていません。

 

 テクニカル分析は、日々変動する株価の過去の値動きを基に売買のタイミングを捉えるアプローチです。株価チャート分析を基本に、移動平均やRSI、一目均衡表など様々な手法を用いて将来の株価を予想します。過去の株価変動は、投資家心理が反映されており、将来の株価を判断するのに一定の汎用性があると考えられています。一般的な傾向としては、短期、中期のアプローチですね。

 

一方、ファンダメンタル分析は、株式の本質的価値と市場価格のギャップがやがて収斂するという考え方です。株式を分析する場合は、財務状況や業績動向をベースに、PERやROE、割引現在価値などの財務的アプローチを通じて、企業価値を分析します。当然、実力よりも割安な銘柄を探していくことになります。株価が適正水準に修正されることを前提とするため、中長期の投資がメインですね。

 

伝統的資産運用の世界における投資信託の運用部門は、基本的にファンダメンタル分析を重視します。機関投資家の運用手法も同様だと思います。一部、クオンツ運用やシステム運用などもありますが、これらは、重回帰分析などの統計的手法を用いたものなので、テクニカル分析とはやや異なるアプローチです。

 

ヘッジファンドの世界では、グローバルマクロやCTAといった運用戦略で、テクニカル分析を用いるケースも少なくないと思います。為替の世界やコモディティの世界でもテクニカル分析は用いられます。これらは、株式よりも本質的価値がわかりにくい点などから、過去の価格変動が重視されているのかもしれませんね。

 

今回は、テクニカル分析とファンダメンタル分析の立場をわかりやすくするために(わかりにくかったらすみません)、対話形式でお伝えしたいと思います。

 

 

《登場人物》

T:テクニ君(テクニカル分析応援団)

F:ファンダちゃん(ファンダメンタル分析応援団)

※文面の都合上、テクニカル分析はT分析、ファンダメンタル分析はF分析と省略します。

 

司会:「今回は、お二人に二つの分析手法のどちらが優れているか、それぞれの立場から、議論をしてもらいたいと思います。まず、ファンダちゃんからお願いします。」

 

F:「私が思うに、F分析が優れていることは、世界中の多くの機関投資家がこのアプローチを使っていることからも、明白だと思います。株価上昇には、企業の利益の裏付けが必要で、それを的確に分析するのがF分析の特徴だと思いますね。」

 

T:「そうは言っても、T分析は、応用範囲が広いですよ。為替や原油、他のコモディティの分野でも大活躍しています。F分析の場合は、「株式は美人投票」(上昇する株式は、自分が良いと思うよりも、多くの投資家が良いと思う銘柄を見つけることが大事という考え方)では、ありませんけど、幾ら良い銘柄を発掘しても、誰にも気づいてもらえなくて、株価低迷が続くこともあるではありませんか?」

 

F:「確かに短期的には、そのようなケースもあるかもしれません。但し、F分析は、効率的市場仮説(全ての市場参加者が同時に情報を入手できて、すぐに株価に反映されるという考え方)に則っているので、遅かれ早かれ、他の投資家もその銘柄の魅力に気づくと考えています。F分析は、配当や自社株買いなどの株主還元策にも目を配りますから、トータル・リターンという考え方にも合致しますよ。

 むしろ、T分析の場合は、マーケットの環境が変化した場合、パフォーマンスの再現性(同じようなパフォーマンスを再現できるか)が困難なのではありませんか?」

 

T:「F分析の方は、そのような偏った見方だから困るのです。

T分析の場合も、様々な分析手法があり、それらを適切に組み合わせてポジションを取るので、失敗することはあっても、パフォーマンスの再現性はあると思っていますよ。それこそ、F分析の場合は、本質的価値まで株価が上昇するのに時間がかかりますよね。T分析の場合は、勝負が早いのもメリットです。」

 

F:「確かに、F分析の場合は、長期投資を前提にした考え方かもしれません。とは言え、米国の著名投資家であるバフェットさんも基本的には、同じアプローチですよね。バフェットさんは、一代であれだけの資産を築けているのですから、やはり、F分析は有用だと思いますけど。」

 

T:「F分析によって、「テン・バガー」という株価が10倍になる銘柄を発掘できたとしても、達成までに時間がかかる訳ですし、ポートフォリオ全体からしたら、あまり大きな寄与度(貢献度合い)ではありませんよね。 日本でも個人のトレーダーで数百万円からスタートして、数十億円まで資産を増やしたような投資家は、多くの場合、T分析メインだと思いますよ。」

 

F:「T分析で投資されている個人投資家の方は、銘柄の業績や企業戦略などを把握せずに投資されるケースもあるようですが?そんなアプローチで良いのですか?また、業績の振るわない無配の銘柄でも投資対象になるのですよね?」

 

T:「F分析の方との考え方の相違ですね。企業の業績や企業戦略の分析に多くの時間を割くことはありませんが、私たちは、株価チャートや出来高変化、様々なパターンを分析し、リスク管理を行っています。株価の決定要因の何を重視するか?の違いではありませんか?」

 

F:「短期的な株価変動は、ランダムウオーク(酔っ払いがどちらに動くかわからないように短期の株価変動も予想できない例え)で動き、上がるか、下がるかは、運次第だと思いますけどね。長期投資はプラスサム(全体のパイが大きくなり、参加者の得られるパイの大きさが当初よりプラスになること)と言われていますけど、短期投資はゼロサム(限られたパイの取り合いで、全体のパイの大きさは変わらない)の世界ではありませんか?」

 

T:「短期的な信用取引の売り方と買い方の利益の総額は、確かにゼロサムに近いかもしれませんけど、仮にゼロサムの取引であっても、T分析を通じて、勝率と実現益の期待値を高めることはできると考えていますけどね。想定と逆に行った場合の損失確定を含めたリスク管理の重要性は言うまでもありませんけど。」

 

司会:「宴もたけなわですが、時間の限りもあるので、最後の質問です。テクニ君(T)とファンダちゃん(F)は、投資するに当たって、ご自身が応援するアプローチだけを使っているのですか?」

 

T:「実は、F分析も参考にしています。業績の良い企業の株価は上昇トレンドのケースが多いので、短期のトレードでも勝率は高くなりますね。」

 

F:「私もT分析は、気にしています。株価チャートの動きは参考にしますね。割安で投資できなければ、F分析も成果につながりませんから。」

 

司会;「今回の結論としては、どちらの手法が優れていると言うよりも、双方の良い点を活用できれば、より好ましいということで良いでしょうか?」

 

T&F:「はい、結構です。」

 

 

 金融機関勤務の仲間内で、テクニカル分析重視派とファンダメンタル分析重視派で議論をすると、上記のような展開になるかと思います。実際のところ、個人投資家で短期トレードによって資産を築いた方は、テクニカル分析重視の印象があります。もちろん、退場された方の数は圧倒的に多いと思いますけれど。

 

それはそうと、テクニ君とファンダちゃんとニックネームを折角、つけたものの、あまり名前を使う場面がありませんでしたね。

 

私個人の立場では、運用会社出身の一面もあるので、ややファンダメンタル分析重視ですね。とは言え、テクニカル分析を軽視するつもりもありません。但し、デイ・トレーダーの方々のようなトレードは得意ではありません。そのような方のコメントを興味深く見ているだけです。共通するのは、ご自身で決めた運用ルールを遵守することが大事なようですね。

 

 

次回のブログは、「住居は、戸建てが良いか?マンション(区分)が良いか?」の予定です。

 

 

当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。

いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。

内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。