悲惨指数(ミザリー・インデックス)

 

今回は、悲惨指数についてコメントします。

 

悲惨指数(ミザリー・インデックス)とは、国民の経済的悲惨さを表す指標です。

 

悲惨指数は、消費者物価指数と失業率の合計数値で表し、数値が高いほど悲惨さの度合いが高いとされます。また、様々な改良が加えられ、金利やGDP成長率を加味するケースもあるようです。

 

この数値が10%を超えてくると国民の不満が高まり、20%を超えると政権に影響を与えると言われています。数値が上昇すると政情不安や経済危機につながる可能性も高まります。

 

確かに物価が上昇し、失業者が街にあふれる状態は、経済的にかなり厳しいと言わざるを得ません。収入が途絶える一方、物価が上昇し、インフレが加速しては、生活が成り立ちません。もちろん、人にとって幸せは、経済的なものだけで図れる訳ではありませんが、「貧すれば鈍する」という言葉があるとおり、一定水準の経済的安定は幸せに欠かせないものだと思います。

 

従来、この指標は、経済基盤の弱い新興国を分析する際に使用される傾向がありました。特に通貨危機や経済危機の際に折に触れて、注目されることがありました。

しかし、昨今のインフレで先進国も他人事ではなくなりつつあります。

 

各国の雇用統計や消費者物価指数などの経済指標が中央銀行の金融政策決定プロセスで重視されるのも、このような背景かと思います。雇用と物価の安定が各中央銀行の政策目標になっていることからも、重要性がうかがえます。

 

ハイパーインフレの国は、既にこの条件に該当してしまうことになりますが、参考までに新興国を含めた主要国の悲惨指数を確認してみます。投資信託などを通じて、日本から投資可能と思われる国を選択しています。尚、直近データを優先しますが、時期が異なることもあり得ることをご承知ください。

 

 

 

【先進国】 インフレ率(前年同月比)+失業率=概算悲惨指数

 

日本:3.2%+2.7%=5.9%

米国:3.7%+3.8%=7.5%

英国:6.7%+4.3%=11.0%

フランス:5.7%+7.1%=12.8%

ドイツ:4.3%+5.7%=10.0%

イタリア:5.3%+7.3%=12.6%

オーストラリア:6.0%+3.7%=9.7%

カナダ:4.0%+5.5%=9.5%

 

欧州、特に英国やフランスの消費者物価指数が高めです。他の地域では、オーストラリアも意外と高水準ですね。また、失業率も欧州は高めで、特にフランス、イタリアの高さが目立ちます。

欧州は、景気もあまり調子が良くなく、インフレも高めで、悲惨指数もやや高い水準になっています。

あくまでも、相対的なものですが、日本の数値の低さがわかります。

 

 

【新興国】 インフレ率(前年同月比)+失業率=概算悲惨指数

 

中国:0.0%+5.0%=5.0%

インド:5.0%+7.7%=12.7%

ブラジル:5.19%+7.8%=12.99%

ロシア:6.0%+3.0%=9.0%

南アフリカ:4.8%+32.6%=37.4%

アルゼンチン:124%+6.2%=130.2%

トルコ:61.5%+9.5%=71.0%

インドネシア:2.28%+5.45%=7.33%

タイ:0.3%+1.1%=1.4%

フィリピン;6.1%+4.4%=10.5%

 

新興国は、各国事情がより異なり、まちまちな数値となりました。若者の失業が深刻化する中国、人手不足が課題のタイ、など労働環境も大きく異なります。

 

 、インフレ率に関しては、かつてインフレで苦しんだブラジルが比較的落ち着いている一方、アルゼンチンやトルコのインフレ率は強烈ですね。前述の通り、悲惨指数は政情不安や治安にも影響を及ぼしますので、これらの数値の高い国への渡航や観光は注意が必要かもしれません。傾向として治安の良くないと言われている国の悲惨指数が高めです。悲惨指数が高いから治安が悪いのか、治安が悪いから悲惨指数が高いのか、何とも言えませんが。

 

深掘りはしませんが、新興国のグループの中で、タイの数値の低さが目立ちます。

 

投資の観点ではどうでしょうか?

 

 悲惨指数は、上記の通り、消費者物価指数と失業率の合算ですから、もちろん、低い方が好ましいと言えます。インフレが高い場合は、通貨安につながることも多く、名目金利(見た目の金利)が高くても、実質金利(名目金利からインフレ率を引いたもの)が低いこともありますし、場合によっては、マイナスのこともあります。

 

債券投資の場合、特にインフレ率の高い国への投資は注意が必要だと思います。

見た目の金利のインカムを確保できても、通貨で負ける可能性が高まります。

また、更なる金利上昇の場合、債券部分でも含み損になる可能性があります。

 

 株式投資の場合でも、悲惨指数が高い国への投資、踏み込んで言えば、悲惨指数が悪化している国は景気低迷や通貨安につながる可能性があるため、注意が必要だと思います。他国との比較よりも、時系列での比較の方が妥当かもしれませんね。ブラジルのインフレは相対的に高く見えても、過去の比較ではかなり、落ち着いている水準です。

 

 

次回は、「今、思い出したい投資格言」の予定です。

 

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