皆さん、あけましておめでとうございます。
幸多き1年になることを祈念します。
さて、昨年末に税制改正大綱が発表されました。
今回は、改正された新NISAについてコメントしたいと思います。
本題に入る前に、
毎年、感じるのですが、政府税調は税収確保に熱心ですが、減税や国民の経済活動活発化には消極的に感じます。新NISAに関しては稀に見る改正だと感じていますが、同時に発表された「生前贈与の相続税加算の期間延長」について触れたいと思います。
ご存じの通り、生前贈与は毎年110万円までの贈与に関して非課税という制度です。贈与者(贈与する人)は複数の人に110万円を継続して贈与しても課税されませんが、受贈者(贈与される人)は、一人からでも複数からでも年間合計110万円超の贈与を受けると贈与税の課税対象となります。贈与を受ける側の人が納税するということですね。
現在は、贈与者が亡くなる3年までに贈与された財産は相続税課税対象に加算され、相続税の対象となる制度でした。(亡くなる前3年間の分は非課税でなく、相続税の対象になってしまうということです)今回の改正でその3年間が7年間に延長されました。「若年層への資産移転を目指すもの」ともっともらしいコメントが出ていたようですが、実質増税です。毎年100万円ご子息に贈与していた場合、従前は相続開始前、過去3年間の300万円が相続税の課税対象に加算されましたが、今後は、過去7年間の700万円が加算されます。仮に税調の言う資産移転を目的とするのであれば、110万円の非課税枠を増額すれば良いだけだと思いますし、増税なのにもっともらしい言い訳でごまかされていることに納税者として不信感を感じます。また、新NISAと同じタイミングで税制改正され、増税に対する批判をかわしているようにも感じます。
さて、新NISAです。2024年開始の予定で、詳細が変更される可能性がありますが、現時点での概要と投資家の投資行動について考えてみたいと思います。
従来のNISA制度ですが、端的に申し上げれば、株式や投資信託等の有価証券の配当金、分配金、値上がり益などの実現益が一定期間、非課税になるというものです。但し、預金や債券は対象外です。債券に投資する投資信託は対象なので、システム的な課題なのかと推測します。NISA制度には、一般NISAとつみたてNISAがあり、前者は年間投資枠が120万円、対象期間が最長5年です。後者は年間投資枠が40万円、投資期間が最長20年、投資対象は、金融庁の基準を満たす一部の投資信託のみというものです。
かつてのマル優制度に類似するものですが、一部の有価証券に限定されている点が異なります。税務上、とても有利な制度ですが、年間投資枠や最長保有期間などに制約があり、改正が望まれていました。仲間内での会話ですが、「期待リターンが2%でも、投資枠が1,000万円ならば、富裕層の人も興味を持つかもしれないけれど、120万円で2%の期待リターンならば、投資金額が半分になっても良いから、3倍以上に値上がり期待できる商品や株式を選択するよね」と議論した記憶があります。以下に概要をまとめてみました。
現行NISA | ||||||
併用不可 | ||||||
一般NISA | 積立NISA | |||||
年間非課税枠 | 120万円 | 40万円 | ||||
生涯非課税枠 | 600万円 | 800万円 | ||||
最長非課税期間 | 5年 | 20年 | ||||
投資対象 | 株式、投資信託等 | 金融庁の基準を満たす投資信託 | ||||
備考 | 保有有価証券を売却すると投資枠は復活しない |
今回の改正です。大きなポイントは3点、①保有期間が無期限とされること、②年間非課税枠がつみたて相当分が40万円から120万円に、一般枠相当分(成長投資枠)が120万円から240万円に拡大したこと、(生涯非課税投資枠が1,800万円、うち成長投資枠が1,200万円)です。③投資した有価証券を売却しても、翌年、投資枠が復活する点です。生涯投資枠は変わりません。
また、つみたてと一般枠の併用が可能になる点等の改善点もあります。こちらも以下に現時点でわかる範囲でまとめてみます。
新NISA | |||||||
併用可 | |||||||
成長投資枠 | つみたて枠 | 合計 | |||||
年間非課税枠 | 240万円 | 120万円 | 360万円 | ||||
生涯非課税枠 | 1,200万円 | 600万円 | 1,800万円 | ||||
最長非課税期間 | 無期限 | ||||||
投資対象 | 一般NISAから高レバレッジ投信等を 除いたもの |
積立NISAと同様 |
※備考:保有有価証券を売却しても、翌年、投資枠が復活する見込み(生涯投資枠には変更なし)
以上を踏まえると、何点か、投資戦略が浮かんできます。
成長投資枠では株式中心、つみたて枠は投資信託で検討してみます。
まず、投資期間の無期限化に関しては、高配当株に投資することにより永続的に非課税で配当金を受け取ることができるようになります。4%の配当利回りの銘柄であれば、NISA外の投資だと、20%課税後(正確には復興税がかかり20.315%ですが、簡潔にするため20%課税とします)、手取りが3.2%だったものが、新NISAを活用することで4%の手取りが恒久的に継続します。(減配がなければ)将来的な年金の減額が議論されている中、投資家にとっても大きなメリットになりますね。配当重視の投資家の方にとって、ありがたい制度です。もっとも、年金の減額を見据えての制度設計のような気もしなくもありませんが。
ということを前提に考えると、2023年後半位から、前倒しで高配当株投資が活発になる可能性が考えられます。また、発行企業サイドでも、株主還元で時価総額が増大するのであれば、増配や自社株買いに注目が集まる可能性も高まります。
尚、米国個別株投資の場合は、現地で10%課税がなされた後に、国内で20%課税となります。従って、現地の10%課税は、新NISAであっても避けることはできません。
また、成長株投資で大きなキャピタルゲインを狙う戦略も有効性が増します。現行NISAでは、投資期間が最長5年と定められていましたし、ロールオーバーの手続きも煩雑でした。投資期間の無期限化により、非課税で大きなキャピタルゲインを狙うことが可能となります。
通常口座の場合、(20%課税とします)100万円で投資した銘柄が倍の200万円に上昇した場合、譲渡益の100万円(200万円-100万円)に対して20%課税がなされ、課税後の180万円が手取りとなります。テンバガーと呼ばれる10倍に値上がりするケースだと、100万円→1,000万円(1,000万円-100万円)、譲渡益の900万円に対して20%課税がされ180万円の税負担で手取り金額は、820万円となりますが、新NISA枠で投資した場合、1,000万円がそのまま手取りとなります。
こちらのケースを好む投資家の方も多いと思われ、2023年後半位から高成長銘柄の物色が高まる可能性があると思います。とは言え、大きな値上がりするような銘柄を発掘することは容易ではありませんけれど。
一般的には、米国やグローバル株式のインデックスファンドと高配当株の組み合わせが身近なアプローチになってくると思います。インデックスファンドで一定の値上がりを狙い、高配当株で配当というインカム収入を確保するスタンスです。資産形成層の方は、インデックスファンドや米国個別株で含み益作りというアプローチもありですが、一定程度、高配当株投資を通じた配当収入確保という戦略も考えられますね。物価上昇や税金、社会保険料負担の増加などを考えると配当収入という副収入確保も視野に入れてみたいところです。2023年1月時点での情報を基にモデルを作ってみました。尚、積立枠は、金融庁の基準を満たす投資信託が該当し、全てのファンドが該当するわけではありません。
【基本プラン】
積立枠相当分:120万円→米国S&P500、グローバル株式などのインデックスファンド
一般枠相当分:240万円→国内高配当株、国内成長株、米国成長株
【リスク志向プラン】
積立枠相当分:120万円→米国NASDAQ、新興国株式などのインデックスファンド
一般枠相当分:240万円→東証グロース市場などの成長株、米国成長個別株
【私の独断プラン】
積立枠相当分:120万円→S&P500と新興国株式のインデックスファンド
一般枠相当分:240万円→国内高配当株50%+米国個別株25%+国内成長株25%%
2023年前半は、米国の利上げ継続が想定され、厳しい投資環境が続く可能性がありますが、年後半からは、国内高配当株や成長株に先回りの資金が入ってくる可能性があると思っています。制度設計自体がよりクリアになれば、それに対応した資金流入を期待できると思います。
次回は、「短期投資(短期トレード)に挑戦してわかってきたこと」の予定です。
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