日本人は、何故、預金が好きか?

 

今回は、日本人の投資嗜好についてコメントしてみます。

 

背景に関しては、諸説あるようです。

かつて、江戸時代には、「宵越しの金は持たない」という風潮もあり、預金という概念は乏しかったようです。その後、明治時代以降に、政府の財政悪化や戦争などを背景に、貯蓄が奨励されたとされています。

 

ここからは、私見になります。

 

米国人が狩猟民族と例えられ、日本人は農耕民族と例えられることがあります。

農耕民族の場合、ある程度、季節で行動が規定され、計画的に作業を行っていく必要があります。そのため、資金繰りに関しても季節性があると思われ、収穫期以外に備えて、資金を確保する必要があったのかな?と思ったりします。

 

また、第二次大戦後の復興の際、日本は銀行中心の間接金融で成長しました。

そのため、銀行は預金で資金調達して、企業に貸し出すという流れが強固になったと感じています。郵便局の定額貯金という存在も大きかったかもしれません。

 

定額貯金は、預入時の金利をベースに半年複利で、最長10年保有できる商品でした。高金利時に預け入れれば、10年間、高い金利が適用されるということで、かなり人気がありました。

1990年頃でも、10年保有すると、元金がおおよそ倍になった金利水準でした。

その郵便局の貯金は、財政投融資という形で国の施策に用いられました。

 

また、マル優制度という非課税制度も預金指向を強めたかもしれません。

今のNISAの預金版です。以前は、有価証券には、非課税制度は無く、預貯金だけが対象でした。一般家庭の優先順位としては、マル優を活用して資産形成をするというアプローチがメインだったようです。

 

それらに加えて、そもそも、かつての日本の金利が高かったというのも大きいと思います。

景気拡大期でインフレの時代でしたからね。

財務省のデータで見ると、昭和40年後半は、1年もの国債利回りは、10%を超えていました。昭和50年代では、10年国債が6%台から10%台だったようです。昭和60年代から平成初期の頃も、4%から7%程度の水準で推移しています。

 

因みに、計算上、7%であれば、複利で10年運用すると大体、元本が倍になります。

 

バブルが崩壊し、信用不安やグローバルの金融危機を経て、現在の金利水準に収斂してきました。

 

確かに、利回りが5%以上あれば、リスクのある運用を選ばなくても十分です。

後述の実質金利の視点は別ですが。

 

過去の高金利の記憶のある高齢者の方々は、やはり金利が低下しても預金神話を持ち続けている傾向があると感じます。年金の受け取りは、ゆうちょ銀行が多いと聞きますね。

 

 但し、以前のブログでも触れましたが、デフレ経済の場合は、現金の価値が高まるため、低金利でも預金の価値は高まります。一方、インフレ時になると、多少、高金利であっても、物価上昇にかなわないので、実質的な価値は減価します。金利が3%だったとしても、物価上昇率が5%であれば、実質▲2%となりますね。(実質金利の考え方です)これが、特にインフレ時には、他の資産での運用が必要と言われる所以です。

 

最後に、資産運用の比較対象である有価証券が魅力的ではなかったこともあるかもしれません。

最近のNISAで人気のあるグローバル株式のインデックスファンドの登場は、平成後期になってからです。昭和の時代や平成初期の時代にも投資信託は存在しましたが、海外に投資できる商品は皆無で、基本的に日本株に投資するものだけだった記憶があります。

 

MMFの前身である中期国債ファンド等はありましたが、一般の方には、証券会社の窓口は敷居が高かったようです。NTTの売り出しで、一気に個人株主が増加しましたが、株価急落やバブル崩壊で、リスク資産は、一般的になりませんでした。

 

企業の株主も持ち合い株式が主体で、現在のような株主還元という考え方は皆無、従って、株式市場があまり、魅力的ではなかったことも否定できませんね。

 

預金は、有価証券と異なり、価格変動はありません。が、上記の通り、実質金利で考えると、インフレ時は、長期にわたって、預金の価値が減価する可能性があることを認識しておきたいところです。

 

 

次回は、「関税とインフレの関係」の予定です。

 

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