日銀の利上げについて思うこと

 

 8月に入り、円高と株安が急速に進行しました。米国の景気後退懸念、中東情勢悪化の他、日米の金融政策決定会合が背景だと感じています。

 

 先日の日本銀行金融政策決定会合では、国債の買い入れ縮小と0.15%(結果0.25%)の利上げが決定され、今後の利上げの方向性も明示されました。一方、米国FRBは、利下げを見送り、9月の利下げをほのめかす展開となりました。

 

 その後、米国では雇用統計の数値が悪化したことで、景気後退懸念が高まり、長期金利が急低下、米国の株価も急落しました。それに加え、米ドル/円の為替が、金利差縮小から急激な円高が進行し、日本でも歴史的な株価暴落を招きました。

 

今回のコメントは、全く、無責任な個人的な放談として捉えてください。

 

 日本銀行の利上げは、金融正常化という意味合いで妥当だと思いますが、タイミングが良くなかったと感じます。実質賃金の伸びの低迷、GDPの状況などから、決して、日本の景況感が良いわけではありません。また、ユーロ圏(ECB)、英国(BOE)などグローバルで金融緩和(金利低下)方向にあるなか、逆行した政策になりました。

 

 仮に日本で利上げをするならば、各国が利上げをしていたタイミングか(もっと早く)、国内景気の堅調さが十分、確認できた段階(もっと後で)で検討すべきだったと思っています。

また、唐突に先々の利上げに言及したことも、市場との十分な対話が無かったことで、刺激が大きすぎたようにも感じます。

 

中央銀行は、一応、独立性が担保されており、政府からの干渉は限定的という建前です。

 

 もちろん、水面下での政策のすり合わせなどの必要性はあると思いますが、今回の利上げに関しては、政府要人の利上げ要請のようなコメントが事前に報道されました。事実は不明ですが、日本銀行が政治に屈服したように見えなくもありません。自民党総裁選挙をにらんで、前倒しで利上げを行ったという見解もあります。日本の株式市場で約70%の売買シェアを占めている海外投資家から失望された可能性も感じます。

 

 他国でも、例えばトルコのエルドアン首相が中央銀行の金融政策に異論を唱えるなどのケースはありますが、一応、G7加盟国では、あまり記憶がありません。

 

 結果的に7月末の日米金融政策決定会合の後に、急激な円高と共に、日本株が急落した訳ですが、売買代金の推移を見ると、海外投資家の大幅売り越しが確認できました。一連の利上げに関するプロセスが悪影響を及ぼした可能性も感じてしまいます。

 

 また、利上げに伴う日本発の金融市場混乱の背景には、円キャリー・トレード(金利の低い円で調達し、他通貨で運用するなど)の巻き戻しが、グローバルの為替市場、株式市場にも波及したとも指摘されています。米国の景気見通しの不透明感などから、やや不安定だった世界の株式市場に追加のダメージとなりました。株式だけでなく、本来、相関の低い仮想通貨やゴールドなども売られました。

このように、リスク資産からの逃避という投資行動が短期的に随所で発生しました。まだ、余震は続いています。金融市場はグローバルでつながっているため、負の連鎖は加速しやすい面もあります。

 

一時、160円を超えるドル円の水準が妥当か、どうかという議論はありました。

輸入物価がインフレを押し上げた面も否定できません。とは言え、為替介入や米国の金融緩和方向のスタンスから、利上げをせずとも、緩やかな円高方向になっていたと思います。

この点でも、利上げのタイミングに対して疑念を感じます。

 

 急激な円高が招く弊害として、企業決算への影響も考えられます。賃上げの議論もありましたが、輸出企業の想定為替レートを見ると、業績への悪影響が否定できなくなってきました。

業績が悪化すると、無邪気に賃上げというわけにはいかなくなります。株価下落にもつながってきます。

 

金融マーケットが激震した8月5日には、一時、141円台まで円高が進行し、短期間で約20円の円高が進行しました。

参考までに主要企業の想定為替レートを紹介します。

 

トヨタ(7203):145円

日産(7201):155円

SUBARU(7270):142円

コマツ(6301):140円

キャノン(7751);153.8円

任天堂(7974):140円

伊藤忠(8001):145円

(各種資料より)

 

 また、利上げによる円高は、本質的な話ではありませんが、新NISA投資家への悪影響も考えられますね。為替が円高になると、その分、外貨建ての資産の円評価が落ちます。為替自体、変動するものですから、自己責任といえば、自己責任なのですが、あまりに急激な変動は、個人消費にも悪影響を及ぼす懸念があると思います。それに加えて、国内株も歴史的な急落を招きました。今後、個人消費や企業の設備投資意欲に悪影響が出てくるかもしれません。

 

わずかな利上げとは言え、金融機関各行は、短期プライムレートの見直しに入り、住宅ローン金利の上昇が想定されます。また、企業の資金調達コストも上昇していくと思われます。

消費や中小企業の体力が万全では無い中の利上げが景気後退につながらないことを期待しますが、0.15%の利上げで、短期間にドル円の為替が7月31日の153円台から8月5日の141円台までの急落、日経225に至っては、39,000円台から31,000円台までの急落と、日本銀行がうまく金融市場との対話ができていたとは思えません。米国の場合は、株式市場における個人投資家の比率が高いこともあり、政府も中央銀行も株式の資産効果に、十分な配慮をして政策決定しているように思います。

 

 最近の日本株は、日中の乱高下も激しく、買って良いのか、売って良いのか判断できないケースばかりですね。今後も米国大統領選挙や米国景気、中東情勢など、リスクはつきません。

次回の米国FOMCが9月ですから、それまでの間、不安定な展開が続くかもしれません。

 

NISAやiDeCoに限らず、積み立ては、淡々と継続し、個別投資は、チャンスをうかがいたいところです。

 

SNSなどでは、金融危機を煽るような投稿も見られますが、株価指数の20%程度の調整は、それほど、珍しいことではありません。今回、急激な変化が生じたことは、事実ですが、冷静に対処したいと思います。

 

 

来週のブログはお休みします。

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