景気の先行指標、遅行指標などの指標が公表されています。
今回は、景気の先行指標についてのコメントをしたいと思います。
経済環境に依存はしますが、一定程度、投資判断の材料になると考えられます。
尚、今回、ご紹介する指標以外も考えられますので、ご承知ください。
また、本来、各チャートと株価指数のグラフをブログに掲載したいところですが、技術的な背景でブログにのせることが出来ないため、文言での表記になることをお詫びします。
日本では、内閣府が景気動向指数として、先行指標(先行系列と表現されています)、一致指標、遅行指標と言った指標を公表し、景気判断を行っています。先行系列は、新規求人数、日経商品指数、東証株価指数、実質機械受注など11系列で構成されています。
株価は、実際の経済に半年程度、先行するとも言われていますから、妥当性がありますね。もちろん、行き過ぎや間違った動きをすることはありますが、修正能力もあると感じています。また、商品指数はインフレの代理変数としての位置づけと考えれば、生産者物価から消費者物価に至る時間差を考慮すると、これも妥当性が高そうです。因みに消費者物価指数は、遅効系列に位置づけられています。
米国にも景気先行指標があり、カンファレンスボード(全米産業審議会)が算出していて、構成項目は、週平均労働時間、実質マネーサプライ、新規住宅着工件数、マネーサプライ、S&P500指数(株価)などの10項目となります。
今回は、これらを尊重しつつも、3つの指標を整理してみたいと思います。
具体的には、「銅価格」、「NYダウ輸送株指数」、「新規住宅着工件数」です。
グローバルな視点、また、経済的な影響力を考慮し、米国を中心に考えます。
複数の指標を見ることで、リスクを増やすタイミングなのか、減らすタイミングなのか、判断材料のひとつとしてチェックしてみたいところです。
■「銅価格」
「銅価格」は景気の先行指標として解釈されることが多くあります。英語では、「Copper」と表記され、景気に影響力があることから「Dr. Copper(ドクター・コッパー)」と呼ばれます。銅はベースメタルとして様々な用途があり、電力関連、家電製品、自動車、PC、スマートフォンなどの部品として活用されており、建物や船にも銅が使われています。
従って、銅価格は、景気が上向くと、製品の需要が高まり、また、建物の建設が活発になることでも需要が高まることから、好景気に向け価格が上昇しやすくなります。逆に、景気減速方向になると製品需要の減少や建設需要の減少により、銅価格も下落しやすくなります。中国は銅地金の最大の消費国(約50%)であり、中国の景気に価格が反映されやすい特徴もあります。
最近の銅先物のチャートを見ると、コロナで下落した後、2022年3月頃には、高値の5.0米ドル(ポンドあたり)程度まで上昇しました。その後は、6月頃より急落し、2022年7月現在、3.4米ドル程度となっています。時系列に見ると、株価との連動性が高い印象ですね。
コロナ蔓延後の上昇は、サプライチェーンの分断のインフレの影響から、銅の供給不足やウクライナ問題による物流の分断の影響によるものと考えられます。現在、そこから約30%程度下落しているのは、今後のグローバル経済の低迷リスクを反映しているものと推測します。
製造業の購買担当者の目線では、原材料の仕入れに関して、販売予測が厳しければ、当然、仕入れを絞りますので、銅の需要(価格)に反映されることとなりますね。
■「NYダウ輸送株指数」
「NYダウ輸送株指数」は、米国の代表的な輸送株の平均株価でトラック、鉄道、物流、航空などの輸送関連株の単純平均で、NY証券取引所に上場している13銘柄とNASDAQ市場に上場している7銘柄の合計20銘柄で構成された指数です。
これらの銘柄は、景気敏感株に分類され、景気に対する感応度がより高いため、景気拡大期には、NYダウ平均よりも先行して上昇し、景気後退期にはNYダウよりも先行して下落しやすい傾向があります。
但し、産業に占める製造業の比率が低下し、グロース株を中心としたサービス業への比率が高まっていることから、先行指標としての信頼性が低下してきているとの指摘もあるようですが、長期のトレンドでは有効性が高いとされています。人流と物流は、ネット社会が定着したことで、多少、減少したとしても、無くなりませんからね。
輸送株指数とNYダウ同士のタイムラグも当然、考えられますが、ダウ輸送指数がNYダウに先んじて、下落トレンドや上昇トレンドに入った場合は、ウオッチしておく指数として捉えておきたいですね。見方を変えれば、景気の底からのリバウンドの第一グループになりやすい傾向があり、個別株投資の候補としても検討の余地があるのかもしれません。
チャートを見ると、2022年3月頃より、反発を交えながら下落トレンドが継続しています。
3月対比で約20%程度の下落しており、2022年7月中旬の段階では、上昇トレンドに転じているようには見えません。
■「新規住宅着工指数」
住宅産業は、自動車産業と同様、裾野が広い産業です。
住宅着工に関しては、事前に売買契約が締結され、その後に工事を含めた建設工事や不動産関連などのセクターに業務が発注されることになります。また、関連産業の雇用の受け皿になるだけでなく、建築資材の発注や買替え需要の見込める家具、家電、自動車などの消費にも影響を及ぼします。
2022年7月現在、米国では、FRBの利上げが継続しており、住宅ローン金利の上昇も続いています。2022年4月までは、新規住宅着工件数は堅調な数値でしたが、5月(2022年6月発表分)は大きな落ち込みとなりました。6月分は、7月19日(火)発表予定です。
金利と新規住宅着工件数との関係で言えば、金利動向が先行するケースが多いように思います。住宅ローン金利が上昇すれば、住宅着工にもブレーキがかかります。但し、金利が変動しなくても、景気悪化で雇用などの条件悪化で、住宅のニーズが減退するケースも考えられます。今回は、今のところ、前者のケースに該当しますね。
現在、米国はインフレと景気悪化の二つの課題に直面していますが、最近では、インフレよりも、景気悪化に金融マーケットはより反応している印象です。7月13日発表の消費者物価指数も前年同月比9.1%上昇となり、利上げによる景況感悪化が懸念されます。
残念ながら、今回、ご紹介した3つの指標を見る限り、当面の明るい材料は見当たりませんでした。インフレ退治と景気悪化阻止、それにコロナの再蔓延、ウクライナの問題の継続など、金融当局としても一筋縄ではいかない難題があることの証左でしょうか?
インフレだけで言えば、7月に入って原油などのコモディティ価格が下落に転じているため、8月(7月実績)、9月(8月実績)は、落ち着きが見られるかもしれません。その一方、景気動向が心配です。これから、日米とも企業の決算発表が予定されていますが、各セクターの今後の見通しに注目してゆきたいと思います。
次回は、「海外の税金事情(アジア編)」の予定です。
当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。
いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。
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