最近の為替と株価の関係

 

 先日の日銀金融政策決定会合で利上げが決まった後、為替は急激に円高に振れ、株価は一時、急落しました。

 

その後、米ドル円の為替は、140円台前半から中盤の水準で推移しています。

 一方、日経225は、31,000円台までの急落後、38,000円台まで戻し、膠着気味な展開になっています。今回は、為替と日本株の値動きに関する私見をお伝えしたいと思います。

 

株価変動要因のひとつとして、為替変動が挙げられます。

もちろん、株価の変動は、企業業績がベースになりますが、為替だけでなく、金利動向や政治情勢、国際情勢、景気動向なども影響を及ぼします。難しいのは、その局面で、重視される要因が変化していくことですね。

 

 現在の日本市場は、材料難ということもあって、為替変動の影響が大きくなってきていると感じます。円安がプラスになる局面、円高がプラスになる局面と一概には言えませんが、現在は、円安で株高、円高で株安という流れのようです。

 

 背景には、日本企業で国際競争力を持っているセクターや企業が、自動車関連や半導体など、輸出に依存する傾向がある点が指摘できます。また、これらのセクターは、海外投資家が好む傾向があり、円高で好業績がほころぶと、資金が引き揚げられやすくなるように思います。

 本来は、為替に関係なく、安定した業績を期待したいところですが、輸出中心の企業の場合、円高が業績に影を落とします。株価指数で言えば、日経225は、株価の高い企業、特にファーストリテイリング(ユニクロ)、ソフトバンクG、東京エレクトロン、アドバンテスト、TDK、信越化学などの寄与度が高い特徴があり、輸出企業の割合が高くなっています。また、TOPIXも時価総額の大きいトヨタ、ソニー、キーエンスなどが上位です。こちらも輸出依存度が高めの企業群ですね。先日のブログでも紹介しましたが、企業の米ドル円、想定為替レートは、140円台半ばが大半です。130円台に突入すると、為替要因で業績の下方修正の可能性も高まりますね。そういう意味では、9月決算の内容が注目されます。

 

海外投資家の視点では、どうでしょうか?

 円高、円安とどちらが好まれるか、何とも言えませんが、円高であれば、為替ヘッジがなければ、投資先の通貨高(円高)で投資収益向上が期待できます。但し、前述の通り、企業業績に影響が出てくる可能性は考慮する必要があります。

円安局面では、輸出企業の業績にはプラスになりますが、為替面にはネガティブな影響が生じます。但し、新規投資の場合は、投資先の通貨安(円安)によって、為替を考慮すれば、同じ銘柄を安い価格で取得できるというメリットも考えられます。

いずれにしても、安定した為替推移が前提になると思います。

 

 また、国内には、円高メリットを受ける内需企業もありますが、時価総額や株価水準などから、指数に対する影響度合いは限定的です。基本的には、原材料を輸入するセクターで、電力や空運、一部小売りなどが思い浮かびます。個別株投資の場合は、円高メリットを受ける企業を選ぶことも、投資戦術のひとつになるかもしれませんね。また、外貨建て資産に投資する場合は、為替ヘッジ付きの商品も選択肢に入るかもしれません。

 

 為替変動が緩やかであれば、株式市場も徐々に織り込んでいく展開になると思いますが、先日のような急激な円高によって、かなりネガティブなインパクトが生じました。短期間に為替が15%以上変動すると、株式市場にも悪影響が出てしまいます。

 

日本銀行が利上げを行い、米国ではFRBの利下げが濃厚となっています。

短期的な為替変動要因のひとつである短期金利差縮小という意味では、将来的に、円高米ドル安のトレンドが意識されます。

 

円高が進行すると、外貨建て資産にも為替要因でマイナスのインパクトが生じます。

 

 新NISAで人気の投資信託、「オルカン」や「S&P500」のインデックスファンドなども例外ではありません。海外の株式に投資するファンドの場合は、株価の騰落率と為替の変動率を加味したものが、トータルリターンになります。超長期的に見れば、為替は一定の範囲で変動することが多いため、影響は限定されるかもしれませんが、短期的には、愉快な投資環境ではありませんね。積立ての場合は、取得単価が平準化されますから、仮に円高になっても、継続さえすれば、取得コスト(為替面)は、徐々に低下します。但し、円安局面で一括投資した海外株式や投資信託の場合は、円高になると、為替面でのマイナスのインパクトが残ります。株価が上昇しても、円換算ではあまり、上昇しないということも考えられます。

 

円高対策 として「為替ヘッジ付き投資信託」もあります。

機会があれば、ブログでも紹介したいと思いますが、ヘッジコスト(2国間の短期金利差)を負担することで、為替変動を回避できる運用スタイルです。やや専門的になりますが、正確には、スポットレートとフォワードレードの差を年率換算して算出します。

ヘッジコスト(結構、高い局面もあります)がかかるので、必ずしも有利な投資とも限らないのが切ないところです。

 

株式投資や投資信託の投資において、従来よりも為替の影響が大きくなってきています。

為替の水準を含めて、投資タイミングを図っていきたいところですね。

 

次回は、「Sell In Mayの続きの話」の予定です。

 

 

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