11月上旬の151円台をピークに12月中旬まで円高が進行しました。
それにあわせて、日本株の値動きも不安定になった印象です。
円高の背景は、米国のFOMC(金融政策決定会合)で、利上げ停止、来年の利下げの可能性が高まったことと指摘されています。日米の金利差縮小と言う見立てです。
一方、12月19日の日本銀行金融政策決定会合で緩和維持決定を受け、やや円安となり、株価は反発し、改めて、為替の影響が大きいことが確認されました。
今回は、最近の為替動向に関する私見をお伝えしたいと思います。
以前も当ブログでコメントしましたが、為替の決定要因は、短期、中期、長期で異なってきます。状況によって、重視されるファクターも流動的で、予測するのが難しい面があります。また、常に基本的な値動きになる訳ではありません。
教科書的にまとめてみると、以下の要因が大きく作用すると言われています。
短期:金利差
中期:ファンダメンタル(貿易収支、経済成長率、財政収支など)
長期:購買力平価(物価水準)
日本では、日銀がイールドカーブコントロール、ゼロ金利解除など、金融政策の正常化を目指す意向のようですが、なかなか緩和解除とは行きません。一方、米国では、インフレの落ち着きなどから、利上げ停止などで、寧ろ、利下げ方向にスタンスを変えつつあります。
中央銀行の金融政策は、景気や、インフレ、雇用の安定などが目的で、為替自体が主目的と言うわけではありません。しかし、基軸通貨国(米国)の金融政策にあわせて、他国は追随する傾向があります。通貨安による輸入物価上昇(インフレ)を避けるために、米国が利上げすれば、追随して利上げし、金利差拡大による通貨安を阻止する金融政策が採用されてきました。
多少のタイミングの違いはあるものの、世界的に利上げの最終局面、場合によっては利下げが見えつつある状況になってきている昨今、様々な事情があるとは言え、個人的には、日本銀行のスタンスは、やや周回遅れのようにも感じます。仮に現時点で緩和修正を行うと、今度は、急激な円高に見舞われるリスクが高くなってきているように思います。
金融政策を為替だけの視点で見ると、
繰り返しになりますが、米国の利上げ停止観測(金利差縮小)で、円高が進行し、結果的に日本銀行の緩和見直しの必要性が後退した印象です。寧ろ、今後、国内で利上げが行われると、更なる円高進行の可能性が高まるように感じています。企業決算で想定為替レートの見直しが続き、最近では、140円台の想定為替レートの企業も出てきていますね。
仮に米ドル円の為替が130円程度まで、円高が進行すると、輸出企業の利益が圧迫され、下方修正の可能性が出てきます。来春の賃上げにも暗雲が漂うこともあるかもしれません。生活者としては、輸入物価が下落することで負担感は多少、減少すると思われますが、収入面や株式市場の面では、マイナス面も考えられます。
投資家目線で、最近の円高を見るとどうでしょう?
円高は、輸出企業の業績にネガティブに働き、輸入企業にはポジティブに働きますが、最近の株式市場を見ると、上値が重く、イライラする展開が続いていました。
また、米国株はNYダウが高値更新していますが、為替が円ベースでのパフォーマンスの足を引っ張っています。投信でも個別株でも、海外株式投資の場合は、株式の上下だけでなく、為替の上下も円ベースのパフォーマンスに影響を及ぼします。
米ドル円の為替が、151円から142円に9円程度、円高に振れると、為替要因で▲6%程度のマイナスになります。株価が5%上昇しても、トータルではマイナスのパフォーマンスという訳です。また、株価が▲5%という厳しい結果の場合、為替要因とあわせて、トータルで▲11%と大きなマイナスになってしまいます。
来年から新NISAが始まり、米国個別株や投信で海外投資を検討される方も多いと思います。株価の変動だけでなく、為替変動も、パフォーマンスに大きな影響を及ぼすことを十分、理解しておきたいところです。
アナリストや経済評論家の皆さんの来年の為替見通しは、125円程度の円高や150円程度の円安と見方が分かれています。米国の利下げが実現すると円高の公算が高まりますが、再度、インフレが進行すると金利上昇(金利差拡大)から円安の可能性も出てきます。
投資家の立場では、決め打ちせずに、柔軟に対応したいところです。
個人的には、新NISAのつみたて枠での海外株投資は、為替水準も平準化され、一括投資よりも、バランスが取れるように感じています。
円安にせよ、円高にせよ、緩やかな値動きがありがたいですね。
次回は、年内最終「弱小投資家、今年を振り返る」の予定です。
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