米国を始めとする各国のインフレや利上げが金融マーケットで注目を集めていますが、国内の物価上昇も次のステージに入ってきました。
今回のブログも暗いお話になります。悪しからず、お付き合いください。
私の性格が悲観的なのかもしれませんが、今回の仮説や推測、理解が間違っていることを期待します。
資源価格上昇、円安などの影響から、日本でも2022年は様々な資本財や消費財の価格が上昇しました。足下では、円安は一服してきていますが、更に来春以降の値上げ報道が毎日のように相次いでいます。
最近の事例を挙げてみます。
・北陸電力:来年4月から平均45%の値上げ申請
・その他電力会社:東北電力平均約33%、中部電力平均約31%値上げ申請
・サッポロビール:輸入ワイン、焼酎を来年4月から3%から37%値上げ
・各製紙会社:トイレットペーパー年明けから15%から20%程度値上げ
・大塚製薬がポカリスエットを5%から15%程度、23年ぶりに値上げ
等などです。
企業活動において、販売価格政策は原材料の仕入れに対し、遅効性があり、
仕入れ→製造→販売という流れの中で、
仕入れ原価が上昇することにより徐々に販売価格に転嫁せざるを得ない状況になっていると私は理解しています。
日本国内に限っては、人件費上昇、言い換えると、賃金上昇が伴わないため、購買力の低下から、個人消費の低迷につながっていくリスクを感じざるを得ません。特に電力価格上昇は、様々な経路を通じて、企業、個人の経済活動に悪影響を与えるため、ネガティブなインパクトが大きくなることが懸念されます。更に増税や社会保障負担の増大も控えています。
一方、米国では、労働需給逼迫もあり人件費の増加、賃金上昇が続いています。
カルフォルニア州のファーストフードの最低賃金が時給22米ドルとの報道がありました。米ドル/円の為替を135円換算すると約3,000円程度です。スターバックスも最低賃金を時給15米ドル(約1,700円)に引き上げたようですね。また、ウォルマートが新人ドライバーを年収1,400万円で雇用するという報道もされました。もっとも、米国でのラーメンの価格は税込みでは20米ドル、約2,700円程度とのことであり、物価上昇と賃金上昇のスパイラルが生じていると推測できます。余談ですが、今週のモーニングサテライトで、ニューヨークの大戸屋のホッケ定食が、5,000円超という話題も出ていましたね。
米国の人手不足は、移民抑制政策やコロナの影響で中高齢者が職場復帰を避けていること、コロナによる失業保険があるため職場復帰しない労働者が多いこと、在宅での業務が可能な仕事が増えたことなどが背景である指摘されています。米国でも仕事や人生設計に対する価値観の変化もうかがえます。
一方、日本の場合、物価上昇の報道は連日のようにされていますが、人手不足による賃金上昇という報道は残念ながら聞こえてきません。政府や労働組合は賃金アップを企業に求めていますが、大手企業はともかく、中小企業が対応できるか、難しい面がありますね。また、企業の労働分配率は、経営者や株主が判断すべき性質のもので、政府が横やりを入れるものではないようにも思います。
原因は、複合的だと思いますが、かねてから指摘されている労働生産性の低さや硬直的な人事制度など課題が、グローバルな経済環境の変化から国内の物価が上昇することで明白になってきたようにも感じます。官民とも構造改革が欠かせませんね。
グローバルな規模での資源価格変動、人手不足、為替変動などが生じている現状、補助金などで痛みをやわらげ、インフレの落ち着きを待つというのが政府のスタンスのように私は感じています。抜本的な対策として、消費税の税率引き下げなどがあれば、相当なインパクトになるでしょうが、その選択肢は難しいでしょうね。
個人ベースでの対応策ですが、これも手詰まり感が強くなってきました。
円安トレンドの場合は、米ドルなどの外貨資産を保有することで、多少でも、インフレに対するヘッジができましたが(米ドル高で外貨建て資産の評価が増価するなど)、円高トレンドに変化すると、それらが含み損に転じかねません。また、最近の企業決算では、想定為替レートを対米ドルで135円から145円程度に修正した企業も少なくありません。現状の135円程度(2022年12月初旬)だと、逆に業績にマイナスに影響するケースも考えられます。前述の賃上げにも影響があるかもしれません。
防衛策としての投資の面からも難しい局面が考えられます。
国内高配当株投資は、企業が想定していた増収増益に基づいた増配が実現できない可能性や円高による業績悪化で株価下落も考えられます。為替の国内株式市場に対する感応度は、円安局面ではそれ程、プラスに感じませんが、円高局面では大きくネガティブに反応しているように感じています。
物価が上昇することで、消費に悪影響がより明確になるのは、来春以降になりそうです。
昨年までと同水準の生活を維持することを前提に考えると、単価が上昇している以上、支出総額増加は避けられません。その分、収入が増えれば良いのですが、それもなかなか難しい昨今です。今後、支出の増加を抑え、家計のバランスを取る傾向がより明確になってきそうですが、経済全体から見れば、合成の誤謬(個々が合理的な対応をすることで全体としてはマイナスになる)が生じかねません。また、過去の事象を見ても、値上げが実施された後、簡単には、元の水準に戻りません。今回の物価上昇は、国内要因よりもグローバルな構造変化が影響していますので、より複雑化しているように感じます。
個人レベルで対処できることは、簡単ではありませんが、自分自身の付加価値を高め、総収入の増加を目指すことに尽きることだと思います。
最近、緩和されつつある副業など、投資を含め、給与以外の副収入の確保も検討の余地があるかもしれませんね。
正直、グローバル経済の大きなうねりの中の事象なので、個人レベルでの好ましい対処方法が思いつきません。有価証券投資という観点では、より慎重に業績を見極め、高配当株やREITなどで凌いでゆく位でしょうか?長期投資による含み益作りは、もちろん大事なのですが、日々のキャシュフローを補うアプローチが欲しいところです。十分な水準ではないものの、3%超の配当が期待できる銘柄は数多くあり、それらを厳選しながら対処したいと個人的に考えています。
いずれにしても、今まで以上に、キャッシュフローの確保が大事になってきますね。
次週はお休みします。
次回は、12月23日(金)で「2022年金融マーケットレビューと個人的失敗事例」の予定です。
当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。
いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。
内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。
尚、HP下部にInstagramのリンクを用意させて頂きました。
基本的に毎日、日米の金融マーケットに関する投稿、不定期で投資やライフプランに関する投稿をしています。是非、ご覧ください。