東証PBR1倍割れ銘柄について

 

2023年3月に東京証券取引所は、東証上場企業に対して、PBR(株式純資産倍率)1倍割れ改善策を要請しました。その後、様々な形で改革が進みつつあります。

今年の日経平均株価指数上昇の要因の一つになっていると思います。

 

今回は、PBR1倍割れ銘柄について考えて見たいと思います。

 

PBRは、株式純資産倍率とされ、1倍を下回ると、企業の解散価値を下回っていると解釈されます。式は以下の通りです。

 

PBR(株式純資産倍率)=株価/1株当たりの純資産

 

言い換えると

 

株式時価総額/純資産総額という形にもなりますね。

 

 企業価値は、保有している資産(有形資産だけでなく、無形資産も)を活用して、付加価値を生むことによって生じます。

そもそも、企業には付加価値がある前提なので、純資産に何らかのプレミアムが加味されないと、存在価値に疑問が生じることになりますね。

 

かなり、強引に例えると

 

 100万円の純資産の企業があり、(全ての資産を売却し、借り入れを返済しても100万円残るというイメージ)、仮に上場していた場合、時価総額が80万円という事例です。

 

現実的ではありませんが、解散価値を下回っているので、全ての株式を買付け、全ての資産を売却するだけで、利益が生じる可能性があります。実際、M&Aの視点では、純資産価値を下回る時価総額の企業は投資対象にされやすい傾向があると思います。

 

東証の改善策は、これを是正して純資産を上回る企業価値を求めるものです。

因みに、どの位の銘柄数かというと、2023年4月の時点で東証プライム市場上場銘柄数が約1,800社、そのうち約48%の900社弱がPBR1倍割れに該当したようです。

 

最近では、企業の改善の取り組みに注目したETF(上場投信)や公募投信も登場してきています。

 

財務会計的な視点ではどうでしょうか?

投資家目線とも言えますね。

 

前述の通り、PBRは以下の式で表現できます。

 

PBR=株価/1株当たりの純資産

 

つまり、PBRを改善(1倍以上)にするためには、以下が考えられます。

 

PBR↑=株価↑/1株当たりの純資産↓

 

◆株価を上昇させる

◆一株当たりの純資産を下げる

◆ないしは、その両方

 

各項目を考えて見ます。

 

 

◆株価を上昇させる

 

 株価を上昇させるためには、色々なアプローチが考えられますが、基本的には企業の利益成長が前提となります。非効率な資産を有効な資産に組替え、各資産のROA(資産利益率)を向上させることで利益を伸ばすことなどが考えられます。また、増配や自社株買いなどの株主還元策の充実も株価上昇につながります。IR活動の充実も長期的にはプラスに働くと考えられます。端的に言えば、株価上昇によって、PBRが改善するので、投資家的には、改善意欲のある低PBR銘柄が魅力的に映ることとなりますね。但し、やる気を感じさせない企業も少なからずあるので、注意が必要な気がします。

 

 

◆一株当たりの純資産を下げる

 

これは、簡単なようで結構、難易度が高いように感じます。

 

例えば、自社株買いの場合、自己資本を減らすことはできますし、ROE(自己資本利益率)を向上させることはできるのですが、発行済み株式数も減少するので、財務会計的に、PBR改善に関しては、ケースバイケースとなります。

やや専門的ですが、自社株買いをして償却しなくても、会計上は、自己資本が減少したことになるようです。

 

 該当する企業の財務の健全性が前提ですが、配当を増やすことで自己資本を減少させることは可能です。但し、自己資本が乏しい場合、自己資本比率が低下し、逆効果(財務的な信用が損なわれる)になる可能性もあり得ます。配当性向(利益の配当に回る割合)が100%を超えれば、理論上、自己資本は減少します。

 

 

◆その両方

 

 利益を伸ばしての株価上昇につながるのが好ましいのですが、財務の健全性を担保した上での自社株買いや増配が選択肢になりそうです。財務的な効果というよりも、投資家へのアピールを通じて、株価上昇期待の戦略です。

 

私的な印象ですが、東証の改善策の後、改革に対して積極的に取り組んでいる企業、あまり熱心さを感じない企業と様々なケースがあるように感じます。潮流としては、特にプライム市場でPBRが1倍を割り込んでいる企業は、「まずい!改善しなければ!」という認識が増加していると感じます。

 

 

前述の通り、PBRの低い企業に投資するETFや投信が登場してきています。

 

 自社がそれらに組み込まれている場合、危機感を感じる経営者の方も出てくるかもしれません。そういった企業は、何らかの形でPBRの改善に取り組んでくる可能性があり、投資家にとっては、企業価値の増大につながりますから、歓迎すべきステージになってきたように思います。

 

 また、自社の株価に対する姿勢も変化が生じていると感じます。以前は、経営者の方でも、自社の株価に関心が薄い方も少なくありませんでした。その後、受動的なM&A(企業買収される)のリスクやストックオプション、株式交換での能動的な企業買収(買収をする)など、自社の株価が高い、言い換えると時価総額が大きい方が好ましいという認識が高まってきました。

 

PBRの件も、株価に対する認識の高まりにつながることを期待します。

 

 尚、以前、紹介したとおり、日経225は、高株価の企業の影響を受けやすく、一方、TOPIXは、金融株など時価総額が大きい企業の影響を受けやすい特徴があります。従って、低PBR銘柄の値動きは、日経225よりは、TOPIXの方が相対的に反映されやすいと思います。

また、低PBR銘柄は、一般的に割安株、バリュー株とされることも多いですね。高配当の銘柄も少なからず、あります。

 

日本株式の上昇には、成長株の更なる成長も欠かせませんが、上述の通り、低PBR企業の改革も不可欠なように思います。今後の進展に期待したいところです。

 

 

次回は、「私のお気に入りの国内ETF」の予定です。

 

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