今回は、株価と株式時価総額の関係についてコメントします。
以前のブログでも紹介しましたが、株価指数についても触れたいと思います。
そもそも、株式時価総額は、以下の式で表されます。
株式時価総額=株価×発行済み株式数
端的に申し上げれば、株価が上昇すれば、時価総額が大きくなることになります。
増資などで発行済み株式数が増加して、株価が維持できれば、時価総額は大きくなります。
但し、一般的に増資は、株式の需給が悪化するため、株価にマイナスに働くことがあります。
現在、企業価値を計る指標として株式時価総額が用いられることが一般的です。
会計上の純資産や売上げ規模などで、企業の大きさを測ることもできますが、普遍性やグローバルな比較という点で、株式時価総額が用いられることが多いように思います。
最近、米国半導体大手のエヌビディアがアップル、マイクロソフトの時価総額を超え、世界一になったと報道がありました。因みに、2024年6月19日現在の時価総額は、3兆3,350億米ドル(約526兆円)です。日本の名目GDPが4兆2,000億米ドル程度ですから、その凄まじさがわかりますね。
最近でこそ、株式時価総額は注目されるようになりましたが、少なくとも、日本ではそれ程でも無かったように思います。後述の通り、株式持ち合いなどで、安定株主がいたために、特殊株主を特に意識しなくても良かったケースや企業のM&A(買収)も稀だったことなどが背景のように感じています。
余談ですが、1990年代以前の株主総会は、社員株主が主体となって運営されていましたね。
物言う株主が排除されていたという構図です。
株式時価総額は、各国の企業を比較することができるというメリットがあります。
因みに、1990年の世界の株式時価総額ランキングは、以下の通りです。
1位、NTT
2位、日本興業銀行(現みずほFG)
3位、住友銀行(現SMBC)
4位、富士銀行(現みずほFG)
5位、第一勧業銀行(現みずほFG)
6位、IBM(米)
7位、三菱銀行(現三菱UFJFG)
8位、エクソン(米)
9位、東京電力
10位、ロイヤルダッチシェル(英)
ベストテンに日本企業が7社入っていますね。特に銀行が多く占めていることがわかります。
2024年では、どうでしょうか?
同様の時価総額ランキングを列挙します。(2024年2月時点)
1位、マイクロソフト(米)
2位、アップル(米)
3位、サウジアラムコ(サウジ)
4位、エヌビディア(米)
5位、アルファベット(米)
6位、アマゾン(米)
7位、メタ(米)
8位、バークシャーハザウエイ(米)
9位、イーライリリー(米)
10位、テスラ(米)
因みに同時期、上位100社にランクインした日本企業は、トヨタの24位のみとのことです。
失われた30年と言われますが、このランキングを見ると、残念な気分になります。
また、2024年にランクインしている企業は、比較的、若くグローバルに展開している企業で、1990年当時の重厚長大企業とは趣を異にします。
日本の企業経営者の方々が、株式時価総額を重視されだしたのは、比較的最近のこであると記憶しています。以前も自社の株価に関しては、意識されていたと思いますが、やはり、M&Aやストックオプション、買収されるリスクなどが高まったことで時価総額に対する認識が高まったと感じています。
例えば、企業買収(M&A)の場合、株式時価総額が小さいと買収されるリスクが高まります。株式交換などの手法では、株式時価総額の大きな企業が有利になります。また、物言う株主(アクティビスト)も、企業の純資産に対して時価総額が小さいケースなどは、ターゲットになりやすいとされています。発行済み株式数の一定割合を保有すれば、帳簿閲覧権や取締役選任などにも影響を及ぼすことができます。株価が低く、時価総額も小さければ、そのようなリスクが高くなります。
東京証券取引所が上場企業にPBR(株価純資産倍率)の改善要請をしたのも、グローバル化の進展によるものと感じています。PBR改善には、株価を上げるか、純資産を下げるしかありません。株価を上昇させるには、利益を増やし、企業のガバナンスを向上させたり、資本の効率性を高めたりする必要があります。また、純資産を減じるには、不要な資産を処分し、配当などを通じて株主還元を行うことなどが考えられます。
以前、金融機関で法人ビジネスをしていた時、ライバル企業の株価と自社の株価を意識されている経営陣の方がいらっしゃいました。発行済みの株式数も異なりますし、かつては、株式に額面があって、50円額面の企業と500円額面の企業を単純に比較することは、ナンセンスでした。
仮に、株式の額面が異なっていても、株式時価総額という概念であれば、比較は可能ですね。
ここからは、投資家目線の話題です。
日経平均(日経225)やNYダウ、TOPIX、S&P500というような株式指数があります。
TOPIXとS&P500は、時価総額加重のインデックスです。言い方を変えると、時価総額に応じた影響度合いになります。最近の話題では、S&P500の単純平均(500社の平均)は、上昇していないにも関わらず、指数は最高値を更新しています。これは、時価総額の大きなエヌビティアなどの株価上昇によるものです。
一方、日経平均やNYダウは、基本的に株価の平均値です。従って、高い株価の銘柄の影響を受けやすくなります。日本では、対象225銘柄の中で、ファーストリテイリング(ユニクロ)、ソフトバンクG、東京エレクトロン、アドバンテストなどの株価変動の影響を受けやすいという特徴があります。先物主導で株価指数が動く際には、特にこれらの銘柄が活発に売買される傾向がありますね。
2024年春、日本株式は活況を呈していました。が、日経平均は大きく上昇し、最高値を更新しましたが、TOPIXは最高値を更新していません。実際、日経平均が上昇していても、持ち株が上がらないという声が多かったようです。全体の株価変動を把握するには、日経平均よりもTOPIXの方が適していると言えます。これは、NYダウとS&P500の関係でも同様です。
基本的に、個別株保有の一般投資家の方がチェックする指数は、日経平均よりもTOPIX、NYダウよりもS&P500の方が好ましいと思います。
感覚的に、日本株の指標を見る際、日経平均の上昇率がTOPIXよりも高ければ、株価の高い半導体銘柄などが買われたと推測できますし、逆にTOPIX優位の場合は、銀行などの金融株や鉄鋼、商社などバリュー株が買われたと推測できます。
日経平均は高株価の銘柄の影響大、TOPIXは時価総額の大きい銘柄の影響大ということです。
次回は、「2024年前半の株式市場を振り返る」の予定です。
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