前回のブログでトータルリターンに絡めて、配当についてお伝えしましたが、やはり、キャシュフローの面からも配当は魅力的です。今回は、オーソドックスなアプローチに対して、やや特殊なアプローチをご紹介したいと思います。あくまでもご参考まで。
尚、配当をしている企業でも、本決算だけ配当して、中間期は配当を実施していないケースもありますので、ご留意ください。
東京証券取引所1部上場企業の平均配当利回りは、2.15%とされており、2022年1月31日現在、日本の株式市場に上場している企業で予想配当利回りが3%を超えているものが916銘柄、4%超が366銘柄、5%超が100銘柄、6%超が29銘柄あるようです。増配や減配があるので、実際の数値は異なってきますが、気になるところではあります。
但し、前回、ご紹介した通り、配当が高ければ、高いほど、トータルリターンが高くなるかと言えば、そうでもない印象です。やはり、利益成長率や配当性向もあわせて、確認したいところです。
《今回のテーマ》
◆高配当株を売買することで資金効率を上げる
◆年金受給月と配当金受け取り月のバランスを考える
◆高配当株の売買で資金効率を上げる
まずは、売買によって資金効率を上げるアプローチをご紹介します。もちろん、うまくゆくケースばかりではありません。尚、税金は考慮しないものとします。
まず、会社四季報や各社HP、また、色々な情報ソースで各企業の予想配当金や配当利回り、決算月をチェックすることから始めます。
仮に100万円、投資可能な資金があった場合、予想配当利回り3%(年間配当金ベース)に投資した場合、
年間配当予想は、
100万円×1.5%(半期ごと同額とします)×2回=3万円
となります。
上記の場合、半期ごとに15,000円(税金は考慮しません)、年間30,000円の配当収入が期待されます。(業績修正で増配や減配があり得ます)もちろん、長期保有しても良いのですが、視点を変えて、決算月を考慮することで、資金効率を上げる可能性が見えてきます。
売却して異なる決算月の企業の株式を購入するのです。
例えば、3月決算銘柄に投資し、権利を確保した上で、値上がり益または、トータルリターンがプラスになった段階で(マイナスの状況でも可能ですが)、6月決算銘柄の配当の権利付き期間内(6月後半までに)に買替えるアプローチです。売りたい銘柄が下がったり、買いたい銘柄が上がったりという事象はよく起きますが、うまく、乗り換えができた場合、
3月決算銘柄(3月末保有→6月配当支払、9月末保有→12月配当支払) 配当利回り3%
6月決算銘柄(6月末保有→9月配当支払、12月末保有→3月配当支払) 配当利回り3%
100万円×1.5%(半期ごと同額とします)×2回×2銘柄=6万円
ということが可能になるかもしれません。このケースがうまく行った場合は、資金効率が2倍になり、配当利回りが6%になります。売買損益は考慮しません。
但し、株価は常に変動しますので、大きな値上がり益を逃したり、不測の損失を被ったりする可能性もあることは十分、ご留意ください。
また、あくまでも、理屈の上での仮定ですが、
1月決算銘柄買い→1月配当権利確保後売り→2月決算銘柄買い→2月配当権利確保後売り→3月決算銘柄買い・・・・・・・
という無限ループが達成できれば、
100万円×1.5%(半期ごと同額とします)×2回×6銘柄=18万円
理論上は、上記の配当受け取りが可能になることになります。
実際にこのような投資をすれば、配当以上のキャピタルロスが生じる可能性もあり、常にお勧めできるものではありませんが、タイミング的にチャンスがあれば、資金効率が上昇するのは事実です。
決算月の異なる銘柄で、ご自身の趣向にあったものを複数、チェックしておくのも、手かもしれませんね。1月、2月、4月、5月の各決算銘柄は対象が少なめなのが、ややネックです。
基本的には、ご自身で一番、魅力があると感じる銘柄をコアにして、サテライトの銘柄を加えてゆくイメージが良いと思います。
◆年金受給月と配当金受け取り月のバランス
年金受給されている方、または今後受給予定の方で高配当株等を保有されているまたは、検討されている方の場合の戦略はどうでしょうか?
既に保有されている方は、ご自身の相場観に基づいた銘柄をお持ちだと思います。
違う視点から、年金受給と配当支払のタイミングをマッチングする手法をご紹介します。
年金は、偶数月の15日に支払われます。株式配当は決算月の約3ヶ月後に支払われます。それらを組み合わせることで、年金の受給の無い月に配当を受け取れるようにすることでキャッシュフローが安定するかもしれません。
12月/6月決算企業に投資し、配当の権利を確保した場合、受け取り月は、3月/9月となります。それに、4月/10月決算企業、2月/8月決算企業を保有することで、毎月、年金または配当の収入を確保できることになります。もちろん、投資に値する企業があるかどうかという大事な視点も欠かせませんけどね。
前回もお伝えしましたが、配当については、減配リスクや株価下落リスクが避けられません。そのためには、利益成長(特に営業利益)や配当性向の水準が妥当か(高すぎると好ましくないと思います)などのチェックをお忘れ無く。
また、連続増配銘柄が注目されることもあります。増配を意識した経営という面では、投資家から見ても魅力的であるのですが、配当利回り水準だけを見ると決して、高配当ではないケースが多いように思います。
《以下、事例》
1月 10月決算の配当金
2月 年金(追加で5月/11月決算の配当金)
3月 12月決算の配当金
4月 年金(追加で1月/7月決算の配当金)
5月 2月決算の配当金
6月 年金(追加で3月/9月決算の配当金)
7月 4月決算の配当金
8月 年金(追加で5月/11月決算の配当金)
9月 6月決算の配当金
10月 年金(追加で1月/7月決算の配当金)
11月 8月決算の配当金
12月 年金(追加で3月/9月決算の配当金)
余談ですが、投資信託でかつて、非常に人気のあった商品に「グローバル・ソブリン・オープン」という債券型分配タイプのファンドがありました。(今もありますが、)高金利の先進国ソブリンに投資をして、インカム中心に分配をするというコンセプトなのですが、このファンド、当初は毎月決算では無く、隔月決算で年金支払いの無い奇数月に分配を出すというコンセプトだった記憶があります。年金受給されている方の分配金受け取りニーズをくみ取った商品という立て付けでした。
配当金受け取りに関しては、不要な方もいらっしゃるかもしれませんし、全ての月で受け取る必要も無いかもしれませんが、年金受給月との組み合わせを行うことで一定の安心感を確保できるかもしれませんね。
今回、ご紹介したように、配当金を受け取るに当たり、受け取るタイミングを考慮することで、資金効率の向上やキャッシュフローが安定する効果が考えられます。
最後に米国株の配当について、触れておきます。
四半期ごとに配当がある銘柄も多く、ETFの一部は毎月、配当があるものもあります。ということで、とても魅力的なのですが、二重課税(現地10%課税後、国内課税20.315%)の対象となります。また、米ドル建ての入金であり、円で受け取るためには、随時、円転する必要があります。その場合、為替のコストが生じることをご承知ください。
次回は、「ETF(上場投資信託)投資の留意点」の予定です。
当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。
いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。
内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。