相場格言に関する私見 《前編》

日本でも古くから相場格言があります。人間の心理を突いたものが多く、今でも、日本株投資だけでなく、外国株投資でも参考になるものが多くあります。今回は、格言をピックアップした上で、私見を述べさせて頂きたいと思います。良く見ると、逆のことを言っているケースもありますが、マーケットは生き物のように変化しますから、そのあたりは、許容しないといけないように感じています。ボリュームが思ったよりもあるので、前編、後編にてお伝えしたいと思います。

 

《閑話休題》

株主優待銘柄について、追加でお伝えしたいと思います。

年金基金や投資信託等の機関投資家は、株主優待銘柄を基本的に好みません。背景としては、FD(フュデューシャリデューティ:受託者責任)により、受益者に対して忠実に業務を行う責任が存在します。そのため、優待を受けても現金化して受益者に還元する必要があり、手間やコストを考えると、むしろ、それらの銘柄を避ける傾向があります。従って、個人投資家の動向による株価形成が行われており、場合によっては、価格形成が効率的ではないこともあると思います。

 

 

もうはまだなり、まだはもうなり

 

相場ももう天井近くだと思って売ると、もう一段階高があり、逆にもう底だと思って買うと、下げ止まらないことがあります。
目先の動きに惑わされず、大局をつかむことが大切という格言です。

 

→順張りの大切さを伝える格言だと思います。売却も買付けも、一度に全力で行くのではなく、何回かに分けて対処すると大怪我を防げると思います。目処をつけた水準で、買付けや売却を部分的に行うイメージでしょうか。

 

 

天井3日、底100日

 

株価の典型的な動きを示した格言で,ゆっくりと上昇を続けてきた株価が天井付近に到達した後、その水準を維持するのは、わずかな時間であり、その後は下落して低迷するという動きを表現した格言です。

 

→昨年のコロナショックの際も、「3年間積立をして、含み益だったのが、5日で含み損になった」というコメントを拝見した記憶があります。基本的に株式市場の上昇は、ゆっくりで、下落は、急激に激しくなる傾向があります。積立中心の投資家の皆さんは動揺することなく継続し、短中期の投資家の皆さんは、リスク管理を慎重にされることが大事だと思います。下落が急激だと、適切な売却も難しくなる一方、買付けにはチャンスとなる場合も多くあります。投資可能な現金保有の重要性も感じる格言です。

 

 

登り100日、下げ10日

 

株式相場が下降局面に変化した際の、下げ足の早さを伝えています。上昇相場は物色の買付けと利益確定の売却の繰り返しで、上昇に時間がかかります。一方、高値近辺になると利益確定の売却が潜在的に多くなるので、不測の悪材料で急激な下落のケースがあるという格言です。

 

→この格言も普遍的なもので、先の格言と類似します。下げ局面では、余裕資金の確保や保有銘柄の含み損益の把握等が重要になります。多くの場合は、急激な下落があっても、一定期間で回復してゆきますが、回復の度合いは、銘柄や市場、国によって異なります。リバランスをする機会とも言えると思います。

 

 

休むも相場

株式投資に売りと買いのどちらかしかないと思うのは誤りで、休むことも大切です・

 

→強く、同意します。確信度が高いポジション構築と勢いや思いつきのポジションでは、当然、勝率は異なりますし、自分自身のシナリオの信頼度も異なります。うまく行っていたポジションがマーケットの流れと異なってくることはよくあることで、そういった場合は、休んで自分の相場観を冷静に見直した方が良いという教えであると思っています。特に近年は、AI関係のアルゴリズムの取引も少なくなく、株価の値動きが理解しにくいケースもあります。一旦、落ち着くことも大事であると、私自身、反省することしきりです。

 

 

相場は明日もある

 

株価は常に変動しているため、値動きが良い銘柄を見ると今すぐ買いたいという心理が働きます。しかし、それが投資機会だったとしても最後のチャンスという訳ではありません。

慌てて行動を起こすと失敗する可能性が高くなるので、慌てずに自分の戦略通りに行動した方が良いという教えです。

 

→上記の格言と類似します。特に短中期の投資家の皆さんは思い当たるケースがあると思います。自分の相場観と実際の金融マーケットがマッチしていれば良いのですが、ずれてゆくケースも少なくありません。無理にポジションを取るのではなく、少し、休んで自分の相場観を微調整した方が良いという教えと捉えています。また、相場環境が良い時もあれば、悪い時もあります。どちらも、ずっと続くことはありませんし、悪い時に無理して動いても良い結果につながることは難しくなります。

 

 

麦わら帽子は冬に買え

 

「人が注目する前に買え」と同様のニュアンスです。

他人が注目していない時にポジション構築をし た方が良いという教えです。

 

→注目度が低いセクターや銘柄を仕込むという考え方は、一定程度、妥当だと思いますが、将来的に注目が集まるかどうかということは別の話です。長期に渡って、注目を集めずに低迷乃至は、横ばいになる可能性も考慮する必要があると思います。環境が良く、循環物色がなされるようなケースでは、うまく行くケースもありますが、物色が一定のセクターに集中するケース等では、忍耐の時間が長くなることを覚悟する必要があるかもしれません。

 

 

次回は、「相場格言に関する私見(後編)」を取り上げたいと思います。

 

当ブログは、毎週金曜日に更新予定です。

いつもながら、投資に際しましては、自己責任でお願いします。

内容、ご相談に関しましては、株式会社 Noble principleまでお問い合わせください。