今回は、不動産の空き家問題についてコメントしたいと思います。
ご存じの通り、我が国は少子高齢化が進展しています。
一方、空き家は増加中です。
国土交通省の2019年のデータでは、この20年で空き家の総数は、1.8倍(448万戸→846万戸)になったようです。空き家率は、13.6%です。
また、総世帯数、4,885万世帯に対して、総住宅戸数は5,759万戸と、結構、超過している上に新規の供給は続いています。
空き家増加によって悪影響を受けそうなケースを列挙してみます。
■賃貸不動産のビジネスをしている方(特に地方物件)
■相続などで地方の不動産の売却を検討している方
■地域金融機関の不良債権問題発生の懸念
■不動産市況全体への悪影響
個人的に空き家問題に関して感じることは、
人口減少に伴い、総世帯数は減少することが確実な状況で、住宅供給が継続し、供給過多が生じていることに対する懸念です。
首都圏など住宅需要が高い地域では、住宅供給も問題にならないかもしれませんが、人口減少が厳しい地方都市では、かなり深刻な問題に発展していく気がしています。
実際、不動産関連業務の知人の話ですが、地方都市では、新築の賃貸物件(アパートやマンション)でも満室にならないケースも珍しくないようです。新築の住居(賃貸でも分譲でも)に転居する方々は、従前の住居がある訳ですから、新築物件の供給の分、少なくとも空き家は発生しますね。いわば、ババ抜き状態です。
商店街の空き店舗などを、アパートや賃貸マンションに転用するケースも目にします。
多くの場合、金融機関からの融資を受け、賃貸物件を所有することになると思いますが、自己資金の割合は別として、仮に空室率が30%を超えてくるとかなりシビアな賃貸経営になりそうに感じます。場合によっては、金融機関の不良債権問題に進展する可能性も懸念されます。
人口の自然減だけでなく、人口が流出している地域などでは、更に厳しさが増しますね。
それらに対して、地方行政はあまり、危機感を感じていないように感じます。
また、首都圏在住の方でも、相続などで地方の実家を売却をする際、住宅需要が減少しているケースが多いため、売却に苦労している知人も少なくありません。既に価格の問題ではなく、需要自体が消滅しているため、売却希望価格を下げても反応はないようです。
従来の民法では、マンションの建替えの要件が厳しく、なかなか進展が見られません。
欧州の古い町並みの住居などは数十年以上経っているものも多く、日本でも合掌造りや田舎の古民家などでは、現在の法定耐用年数を超過していても利用できるものも少なくないように思います。「既存の古くても価値のある住宅を行政の制度面のサポートで再生できないものか?」と思案します。
私が不勉強で知らないだけなのかもしれませんが、築年数の経った住宅を再生することで固定資産税を軽減することや地域全体の都市計画で建物の建て替えを進めるなどの方策があるように思います。
また、空き家問題を他人事に感じている方々も、不動産を保有している場合は、関係ない話ではありません。
供給過多によって賃貸不動産の賃料が下落すると、収益還元法(賃料を現在価値に割り引く評価方法)で不動産価格は下落します。下落した不動産価格で売買取引が発生すると、取引事例としてその価格が基準になってしまいます。賃貸派の方にとって、賃料下落は、ウエルカムな話ですが。
国策で住宅産業の振興を図る意味合いは理解できますが、私は、現在の供給過多を改善する必要性があるように感じています。スクラップビルドではありませんが、一定程度の空き家を解消した後に新規の供給を行うようなプロセスを考えたいところです。空き家の解消と新築物件供給のバランスを取る方策です。
TSMC(台湾の半導体企業)が進出する九州の熊本地区のようなケースは特殊だと思いますが、他地域でも半導体企業の誘致に成功しているケースも出てきており、新たな産業の育成や海外の高度人材の確保などが解決策のひとつになると考えます。やみくもに移民を受け入れることは、様々な問題も内在するため、難しい面があるとは思いますが。
暗い話になりました。
急速な人口減少と過疎化が進展している現在、住宅事情についても、需要と供給を考慮し、従来と異なるアプローチが必要になってきていると思っています。後先を考えずに、住宅を供給し続けると、郊外の地域などのゴーストタウン化の進行が懸念されます。
一市民、一納税者が案じたとしても、何ともならない面はありますが、問題意識は持っていたいと思います。
来週は、「マグニフィセント7(米国主要株式)について」の予定です。
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